1,000円を切る低価格で登場、「さくらのVPS」をチェック――徹底ベンチマーク編 3ページ

さくらのVPS 徹底ベンチマーク

 最後に、総合ベンチマークツールである「Phoronix Test Suite 2.6.1」を用いたベンチマークテスト結果を紹介しておこう。Phoronix Test SuiteはPhoronix Mediaが開発するオープンソースのベンチマークツールで、100種類以上のさまざまなベンチマークを自動的にインストール・実行できるのが特徴だ。今回はこの中からVPSの性能を比較するのに向いていると思われる、表4のベンチマークを選んで実行した。

表4 実行したベンチマークテスト
テストコマンド テスト名 バージョン 説明
compress-gzip gzip Compression gzipで2GBのファイルを圧縮するのにかかった時間を測定するテスト
compress-pbzip2 Parallel BZIP2 Compression 1.0.5 bzip2で256MBのファイルを圧縮するのにかかった時間を測定するテスト
tscp TSCP 1.81 コンピュータチェスプログラム「TSCP」を用いたベンチマーク。1秒あたりに読める「手」の数を測定する
himeno Himeno Benchmark 3.0 姫野ベンチマークテスト。ポアソン方程式解法をヤコビの反復法で解く処理速度を計るテストで、CPUの処理速度が結果に影響する
fs-mark FS-Mark 3.3 システムに一定サイズの大量のファイルを配置し、そのアクセス速度を測定するベンチマークテスト
tiobench Threaded I/O Tester 0.3.3 複数スレッドから同時にストレージにアクセスし、そのスループットを測定するベンチマークテスト
ramspeed RAMspeed 2.6.0 メモリアクセス性能を測定するベンチマークテスト
apache Apache Benchmark 2.2.11 Apach Bench(ab)によるベンチマークテスト。一般的な設定のApacheに対し静的なファイルをリクエストし、毎秒あたりに処理できる限界リクエスト数を測定
blogbench BlogBench 1.0 ブログアプリケーションが行うページ作成やページのレンダリング、コメント書き込みといった処理を模したベンチマークテスト
phpbench PHPBench 0.8.1 PHPの処理速度を計測するベンチマークテスト
pgbench PostgreSQL pgbench 8.4.0 PostgreSQLのpgbenchツールを用いたベンチマークテスト。データベースのベンチマーク方式であるTPC-Bに似たアクセスを行い、毎秒あたりに処理できるトランザクション数を測定する
sqlite SQLite 3.6.19 SQLiteを用いたシンプルなベンチマークテスト。データベースに一定の量のデータをinsertするのにかかった時間を測定する

 なお、比較対象として仮想化を用いずに直接OSを稼働させているPCサーバーと、海外A社によるXenベースのVPS環境で同じベンチマークテストを実行した結果についても併記している。PCサーバーについては2GBのメモリを搭載しているが、一部のテストでは利用できるメモリ容量によって結果に差が出るため、メモリ利用量を512MBに制限した環境でもテストを行っている。

表5 ベンチマーク対象のスペック
構成要素 さくらのVPS PCサーバー 海外A社のVPS
CPU Core 2 Duo E6550(2.33GHz)
メモリ 512MB 2GB 512MB
ストレージ 20GB SEAGATE ST3250310AS(250GB)×1 12GB
ネットワーク 100Mbps 100Mbps 100Mbs
データ転送量 無制限 80GB/月
OS CentOS 5.5 CentOS 5.5 Debian GNU/Linux 5.0.5
価格 980円/月 $12/月

CPU性能関連ベンチマーク

 まずはCPU性能を測定するベンチマークテストの結果を見てみよう。選択したベンチマークテストはgzipで2GBのファイルを圧縮するのに必要な時間を計測する「gzip Compression」と、並列化版bzip2(pbzip2)で256MBのファイルを圧縮するのに必要な時間を計測する「Parallel BZIP2 Compression」、コンピュータチェスエンジンが1秒間に読める「手」の数を計測する「TSCP」、「姫野ベンチマーク」と呼ばれる数値演算系ベンチマークの4つだ(図7)。

図7 CPU性能を測定するベンチマークテストの実行結果
図7 CPU性能を測定するベンチマークテストの実行結果

 ベンチマーク結果では、gzip/pbzip2での圧縮についてはPCサーバーとさくらのVPSがほぼ同程度、TSCPおよび姫野ベンチマークについてはさくらのVPSが最速、という結果となった。この結果を見る限り、さくらのVPSのCPU性能についてはPCサーバーと同程度のレベルで、仮想化のオーバーヘッドはほとんど無視できるレベルと言えるだろう。

ストレージ性能関連ベンチマーク

 続いて、ストレージ性能を測定するベンチマークテストの結果を見てみよう。ストレージの性能を測定するベンチマークテストにはいくつかがあるが、今回は大量のファイルに対し毎秒あたりに操作できる限界を測定する「FS-Mark」と、複数スレッドで同時にストレージにアクセスしてそのスループットを測定する「Threaded I/O Tester」の2つを実行した。Threaded I/O Testerについては、各スレッドがアクセスするファイルサイズは32MB、同時実行するスレッド数を32に設定し、シーケンシャルリード/ライトおよびランダムリード/ライトの4種類のテストを行っている(図8)。

図8 ストレージ性能を測定するベンチマークテストの実行結果
図8 ストレージ性能を測定するベンチマークテストの実行結果

 実行結果ではPCサーバー(メモリ2GB)の書き込み性能が異常に高いが、これはメモリキャッシュ影響であると思われる(アクセスするファイルの総容量が32MB×32=1024MBと搭載メモリ容量以下なので、すべてのアクセスがキャッシュに入るため)。それ以外のベンチマークについては全体的にVPSのほうが高パフォーマンスという結果となった。単純なストレージI/O性能の差が結果に反映されていると見て良いだろう。

メモリ性能関連ベンチマーク

 メモリアクセス性能については、メモリアクセス速度を評価する「RAMspeed」ベンチマークテストで比較した(図9)。こちらについても、さくらのVPSがもっとも高性能という結果となっている。

図9 メモリアクセスの速度を測定する「RAMspeed」ベンチマークテスト実行結果
図9 メモリアクセスの速度を測定する「RAMspeed」ベンチマークテスト実行結果

Webサーバーとしての性能を測定する

 さくらのVPSはさまざまな利用方法が考えられるが、やはり最も多いと思われるのはWebサーバーとしての利用だろう。そこで、Apacheに対して静的なWebページをリクエストし、1秒間に処理できるリクエスト数を測定する「Apache BenchMark(ab)」と、ブログアプリケーションの動作をシミュレートしてそのパフォーマンスを測定する「BlogBench」でWebサーバーとしての性能を測定した(図10)。

図10 Webサーバー関連のベンチマークテスト実行結果
図10 Webサーバー関連のベンチマークテスト実行結果

 結果としては、Apache BenchmarkについてはPCサーバーには若干劣るものの、BlogBenchについてはPCサーバー(メモリ512MB)よりも高性能という結果であった。なお、BlogBenchでPCサーバー(メモリ2GB)がほかと比べて大幅に高パフォーマンスなのは、Threaded I/O Testerのベンチマーク結果と同様ディスクキャッシュの影響だと思われる。

データベース/PHPの性能を測定する

 コンテンツ管理システムなどのWebアプリケーションでは、データベースに多くのデータを格納するため、データベースのパフォーマンスがWebアプリケーションのパフォーマンスに大きく影響する。また、言語処理系のパフォーマンスも気になるところだ。そこで最後に、PHPの処理能力を測定する「PHPBench」と、PostgreSQLの処理能力を測定する「pgbench」、そしてSQLiteでデータベースに大量のデータを挿入するのに必要な時間を測定する「SQLite」ベンチマークでこれらの性能を測定した(図11)。

図11 データベース/PHP関連のベンチマークテスト実行結果
図11 データベース/PHP関連のベンチマークテスト実行結果

 PHPBenchについては、さくらのVPSとPCサーバーでほぼ同程度のスコアとなった。また、pgbenchではさくらのVPSが最も高いパフォーマンスを見せている。

VPSながら単体のPCサーバー以上の性能を見せたさくらのVPS

 以上、ひと通りのベンチマークテストを実行してみたが、仮想化によるオーバーヘッドはほとんど見られず、素のサーバーの性能がそのまま表れているようなベンチマーク結果という印象を受けた。VPSというと「自由度が高く安価だがパフォーマンスはあまり良くない」というイメージを持つ方も多いと思われるが、さくらのVPSについては下手なPCサーバーよりも高性能であり、コストパフォーマンスは高い。利用規約についてもかなり制限が緩いものとなっており、共有レンタルサーバーサービスや他社VPSからの乗り換えだけでなく、自宅サーバーからの乗り換えにもお勧めできるサービスといえる。

 ただし、WordPressなど動的にコンテンツを生成するCMSやWebアプリケーションを稼働させる場合、512MBというメモリ容量では若干不足が感じられるかもしれない。よりメモリ容量やストレージ容量が増やされた上位プランの提供も期待したいところだ。

 さくらのVPSはオンラインでの申し込みが可能で、オンラインサインアップの完了後すぐに2週間のお試し利用が可能となる。興味を持たれた方は、実際に使ってみてそのパフォーマンスを試してみてはいかがだろうか。

 さて、さくらのVPSは初期状態では最低限のソフトウェアしかインストールされていないため、目的に応じて必要なソフトウェアをインストールし、またセキュリティ対策なども自分で行わなければならない。そこで次回は「サーバー構築編」として、各種サーバーの構築や各種ブログシステムのインストール、ファイアウォールや自動アップデートの設定など、実際に運用するに当たって必要な手順やポイントを紹介していく。