基盤の重要性を再認識させるディストリビューション、Fedora 10
Fedora 10のFeature Listには、一見してこれはと思わせるような要素は何もない。実際、そのほとんどは、要するに、インフラストラクチャーの改善、既知の問題の改修、パフォーマンスの改善であり、さもなければ将来に向けた整備だ。しかし、基盤部分の良否はコンピューターを使用するあらゆる場面に現れるものであり、Fedora 10は使い込むほどに、もちろん1つや2つの小さな問題はあるが、Fedora最強のリリース、将来を伺わせるリリースだという思いが強くなる。
Fedora 10は3種類の形で提供されている。GNOMEデスクトップを搭載した1枚組のDVD、やはりGNOMEデスクトップを搭載した6枚組のCD、GNOMEまたはKDEのいずれかを搭載した1枚組のライブCDだ。いずれも、BitTorrentやJigdoを介して、あるいは直接ダウンロードすることができる。筆者はオンラインですぐにアップグレードしたかったので、効率的なGNOME版ライブCDを利用した。
インストール
FedoraライブCDのインストールは昨今の普通のライブCDの場合とあまり変わらず、キーボードのロケールやタイムゾーンなど最小限の情報を入力するだけだ。ソフトウェアは最小限のみで、変更はできない。通常と異なるところといえば、コンピューターのホスト名の設定やブートローダーにパスワード保護などのオプションがある点ぐらいだ。
従来のインストーラーと比べると、唯一、パーティションダイアログだけが変更されている。以前は論理ボリューム管理の使用がデフォルトになっていたが、通常のパーティション分割とRAIDボリュームも選べるようになった。また、テキストボックスをクリックするところにパーティションを暗号化するオプションがある。
初回のブート時に動くウィザードは従来のものとほとんど変わっていない。初めにフリーソフトウェアライセンスの説明があり、通常使用するアカウントの作成、時刻の設定と続き、最後にハードウェア情報をFedoraプロジェクトに送ってほしいという依頼がある。
デスクトップとソフトウェア
2回目のブートではウィザードは動かないため、従来のリリースより起動がかなり速くなっていることがわかるだろう。これは、新しいグラフィカルブートローダーPlymouthの賜だ。筆者のテストシステムではFedora 9が45秒かかっていたのに対し、Fedora 10は28秒足らずで立ち上がった。ブートローダーやシステムのメッセージを表示しなくなったこともこの高速化に寄与している。
ログインすると、Fedora 10の新しいSolarテーマが表示される。画面の右側にフレアを激しく吹き出し多数の黒点を持つ青い太陽があり、そのほかは暗青色の星の世界が広がっている。SolarはFedoraのデフォルトテーマの中でも美的センスのよいものだが、今回のリリースはただ美しいばかりではない。Fedora 10は我がノートパソコンのウェブカメラもテストマシンのサウンドカードも出荷状態のままで検出したのだ。これまでこれらを検出できたGNU/Linuxディストリビューションはなかった。サウンドカードとウェブカメラのサポート改善は今回のリリースにおける最優先課題だったのだが、少なくとも筆者に関する限り、Fedora 10は期待に応えてくれた。
また、搭載されているソフトウェアも、カーネルは2.6.27、OpenOffice.orgは3.0.0.9、Firefoxは3.02、GIMPは2.6、Empathは2.24と、いずれも最新版だ。デスクトップはGNOME 2.24.1だが、KDE 4.1.2やXfce 4.4.3などのさまざまなウィンドウマネージャーをインストールすることもできる。さらにFedora 10では、One Laptop Per Child計画のためのデスクトップSugarが新たに加わった。画像、計算機、ターミナル、ワードプロセッサーもすべてついている。
ソフトウェアのインストール
PackageKitはFedora 9で初めて導入されて以来さまざまに改善されてきたが、同時には1つのパッケージしか扱えなかった。しかし、その制限は過去のものとなり、インタフェースも一新された。左ペインの上部にAll、Package Collections、Newest Packagesという3つのビューが追加され、Viewメニューのオプションを選択すればカテゴリーグループを検索することもできる。こうした変更によって、ソフトウェアを探しインストールするのが容易になった。
さらに重要な改善点は、特定のオーディオ形式がサポートされていない場合、必要なパッケージを自動的に示してくれる点だ。これまでは(ほとんどのディストリビューションでも同じだが)ソフトウェアインストールツールを起動し必要なパッケージを自分で探す必要があった。しかし、多くのパッケージは名が体を表していないため、必要なパッケージを探し出すのは厄介だ。だが、これからはPackageKitが必要なパッケージを提示してくれるので、ただインストールに同意するだけでよい。
Fedora LeaderのPaul Frields氏によると、この機能はテスト中のため今はオーディオコーデック限定だそうだ。しかし、順調にいけば適用範囲は大きく広がるだろう。ファイルの閲覧や編集に必要なプログラムをインストールしたり、文書を正しく表示するために必要なフォントをインストールしたり。該当するパッケージが複数あるときはその中から選べるようにできるだろうし、おそらくは、それぞれの人気度を示すことも可能だろう。結果論だが、こうした機能は外部ドライブの自動マウントと同じくらい当然のことだ。
管理とセキュリティー
Fedora 10は、特に、管理とセキュリティー面で多くの改善が施されているようだ。ネットワークとプリンターの構成ツールは構成一覧がポップアップメニューに変わって従来よりグラフィカルになり、取っつきやすくなった。ワイヤレス接続のネットワーク構成にはマシンを即席のルーターとして使う機能が加わり、プリンターの構成ではサポートしているプリンターを自動検出し、オーディオコーデックと同様に、必要なドライバーをインストールすることもできるようになった。
管理用のツールでは、新たにシステム診断ツールFirstAidKitが加わった。これは基本的にコマンドラインプログラムであるFirstAidKitにGUIをかぶせたものだ。パスワード、RAIDアレイ、Xサーバの問題を扱うためのプラグインが用意されており、そうしたシステムに関する問題解決に役立つ。今回の試用ではGUIは動かなかったが、Fedoraの主要追加機能として十分なものを持っている。敢えて注文をつければ、フラッシュドライブなどのライブシステム上で動くようにし、ハードドライブを使わずに利用できるようになればグッと便利になるだろう。
もう1つの管理ツールSecurity Audit Toolも注目に値する。セキュリティーを自分の手で設定したくない人向けのツールだ。FirstAidKit同様、コマンドラインインタフェースとGUIを備えている。ブートローダーやcronからパーミッションやSELinuxに至るまで、あらゆることを調べる30種のテストから構成され、それぞれNaive、Desktop、Network、Server、Paranoidという5つのレベルで実行することができる。ほとんどのテストは5分もあれば完了し、各テスト項目にPassed、Error、Warningのいずれかが表示される。ただし、5つのレベルが持つシステム構成上の意味も、発見された問題の修正方法も示されない(パーミッションのミスなどについては、ほとんどの利用者がわかるだろうが)。
まとめ
Fedora 10には、コーデックアドバイザーを除いて、まったく新しいものはほとんどない。だが、それはこのリリースで得られるものは何もないということではない。基盤部分の改善は見えにくいだろうが、サブシステムの改修と合理化、将来に向けた整備の意味はすぐに了解されるはずだ。新しい機能が1つ増えてもそれを使わなければ見えない。しかし、基本部分の改善はいつもそこにある。Fedora 10には、そうしたいつも感じられる改善点がいくつもあるのだ。
Fedora 10は、長い経歴の中で初めてアップグレードを実感したリリースだ。検出可能なハードウェアが増え、パフォーマンスが向上し、インタフェースが改善されているFedora 10はこれまでになく強力なリリースだ。今後の改善が待たれる。
Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト。 Linux.comに多く執筆している。