Fedoraを最新版にアップグレードする4つの方法
Fedora 10のリリースが予定されている本日(11/25)、どうやってアップグレードしようかと考えている人も多いだろう。本格的なアップグレードはせいぜい半年に一度なので、細かい手順は忘れてしまいがちだ。また、新しいリポジトリの参照を中心としたFedoraのアップグレード手順は、新たなリリースが出てもリポジトリ自体は変わらずにその中身だけが変わるDebianの手順などに比べると複雑である。だが、こうした変動性にはもっともな理由がある。Fedoraのアップグレードは少なくとも4つの方法で可能であり、それぞれに一長一短があるからだ。
どの方法でアップグレードするにせよ、事前にYum Upgrade FAQの手順1と2に目を通しておいたほうがよいだろう。これらの手順には、アップグレードの準備について重要なアドバイスが記されている。リリースノートに記載された問題点の理解、現在の環境のバックアップ、システムが最新の状態になっていることの確認、設定ファイルの更新に伴い作成される.rpmnewおよび.rpmsaveファイルのチェックなどである。
また、上記FAQに記されているように、不要なプログラムや設定ファイルの整理および削除も行う必要があるだろう。システム上に無駄なものが少ないほど、問題が起こる可能性も低くなる。こうした不要なファイルを手っとり早く片付けるには、yum-utilsパッケージをインストールして「package-cleanup --leaves
」コマンドを実行すればよい。
慎重を期すなら、使用中のプロプライエタリなドライバ(特にビデオカード関連)は事前に削除したほうがよいだろう。そうしたドライバについては、おそらくメインシステムのアップグレード後に別途アップグレードが必要になるからだ。アップグレード中は、3Dグラフィックが必要になることはまずないため、フリーのドライバで代用できる。
最後に、SELinuxを有効にしている場合は、これをpermissiveモードにして、設定ファイルの変更に伴う警告表示を抑制する。
以上の準備ができたら、具体的にどの方法でアップグレードするか考えてみよう。
CDまたはDVDによるアップグレード
最も一般的なのは、CDまたはDVDを利用したアップグレードだろう。Fedora 9 Install Guideには、その概要が次のように説明されている。
インストーラは、既存のシステムがあれば自動的に検出します。既存のシステムソフトウェアは新しいバージョンにアップグレードされますが、ユーザのホームディレクトリからデータが削除されることはありません。ハードディスク上の既存のパーティション構成も変更されません。システムの設定はパッケージのアップグレードに必要な場合にのみ変更されます。
しかし、この方法に慣れている人は、アップグレードを実施するうえで不利だともいえる。というのも、非常に多くの人がこの方法をとると考えられるため、DVDイメージはもちろんCDイメージでもリリース後数日間はダウンロードに膨大な時間がかかる可能性があるからだ。ただし、どうにかDVDイメージをダウンロードできれば、あとはオンラインリポジトリへのアクセスについて心配する必要もなく、滞りなくアップグレードを完了できるだろう。
手作業によるアップデート
ディスクイメージ全体をダウンロードする代わりに、システムの認識するリポジトリを変更するという方法もある。残念ながら、GUIの「System」→「Administration」→「Software Sources」では既存リポジトリの有効化/無効化が行えるだけで、リポジトリの追加はできない。そのため、この方法ではテキストエディタかコマンドラインを利用する必要がある。
「/etc/yum.repos.d」にある既存リポジトリの定義を参考にしながら、新たに定義を作成することができる。このディレクトリの定義は複雑に見えるが、変更が必要なのはリポジトリの名前、ベースURL、GPGキーだけで、いずれの情報も追加対象のリポジトリをWebブラウザで見ながら丸写しすればよい。作業を簡単に済ませるには、gpgcheckフィールドを0
に設定してGPGキーを使わないようにすればよいのだが、セキュリティを考えるとこのやり方は避けた方がよいだろう。新しいリポジトリを追加して再起動すれば、アップグレードの準備が完了する。
もっと簡単にリポジトリを追加するには「rpm -Uhv ftp://download.fedora.redhat.com/pub/fedora/linux/releases/ReleaseNumber
」コマンドを実行すればよい。(「ReleaseNumber」にはリリース番号を指定)。これで、利用するリポジトリの更新が開始され、その状況を伝える情報が表示される。
いずれかの方法でリポジトリの準備が済んだら、コマンドラインから「yum upgrade
」を実行することでアップグレードを開始できる。特定のパッケージグループをアップグレードするには、コマンドにもう少し情報を追加してやればよい。たとえば、Baseグループのパッケージがすべてインストールされるようにするには、「yum update Base
」とする。なお、パッケージグループの一覧は、「yum grouplist
」コマンドで確認できる。
こうした手作業による準備が気にならないユーザもいれば、それを嫌がるユーザもいる。熟練ユーザなら途中経過が明確にわかるという理由でこうした方法を好むだろうが、初心者は設定ファイルの編集やコマンドラインでの作業に不安を感じるだろう。
fedora-releaseによるアップグレード
3番目の方法は、ユーザによるシステムのアップデートを支援するためにFedoraが進めてきたやり方に従うというものだ。リリースの前後数週間は、アップデートされたfedora-releaseパッケージが新しいリリースのアルファ版やベータ版、リリース候補版のリポジトリのほか、前のバージョンのリポジトリからも入手できる。この期間を過ぎると、「yum localinstall fedora-release
」コマンドで、新しいリリースのリポジトリから該当するバージョンのfedora-releaseがダウンロードできるようになる。このパッケージのインストールを終えて再起動すると、パネルの通知トレイにあるアップデートアプレット、または「yum update
」コマンドにより、システムのアップグレードが可能になる。
この方法では、時間をかけて事前にISOイメージをダウンロードせずに済むが、アクセスの多い時期に最新のリポジトリを使ってアップグレードを行うか、あるいは十分に時期を遅らせる場合は前述のひと手間をかけて最新のfedora-releaseを取得する必要がある。ただし、時期を遅らせてアップグレードを実施する頃には、この方法の主な利点はすでに失われてしまっているだろう。
PreUpgradeによるアップグレード
今年の春から、FedoraのPreUpgradeパッケージをインストールするという4番目の方法が加わった。
新しいリリースが利用可能になると、rootで「preupgrade
」と入力すればいつでもPreUpgradeを実行できる(Fedora 10以降では、デフォルトのソフトウェアインストーラPackageKitから直接実行できるようになる)。PreUpgradeは、アップグレードに必要な手順をウィザード形式で進めてくれる。このウィザードに対する入力は、どのリリースにアップグレードするかの選択と、先に進むための「Apply」および「Forward」ボタンのクリックだけだ。アップグレードに必要なパッケージはPreUpgradeがダウンロードしてくれる。それに、再起動によって手順を完了するまでは、システム上で作業を続けることができる。
PreUpgradeの利用はおそらく最も簡単なアップグレード方法であり、Fedoraユーザ向けのメーリングリストへの投稿内容を見ると、多くの人がFedora 10で利用したいと考えているようだ。ただし熟練ユーザは、グラフィカルインタフェースによるアップグレードへの移行に抵抗を感じるかもしれない。また、PreUpgradeではまだ暗号化と署名の検証が行われていないと指摘しているユーザが少なくとも1人いた。セキュリティにうるさい人ならそれだけでPreUpgradeの利用をためらうだろう。
最後の手順
どの方法を利用しても、必要最低限のアップグレードしか行われない。アップグレード後の動作に問題がないことを確認したら、RPM Fusionのような代替リポジトリを参照してアップグレードすべきパッケージがないかチェックする必要がある。場合によっては、メーカーのサイトから新しいドライバを探すことになるかもしれない。そうした作業は面倒に思える。これがフリーソフトウェアのみを使うというFedoraの基本方針に従わないことの代償だ。
最後に、システム上の新しい.rpmnewおよび.rpmsaveファイルを確認しておこう。その多くは、日常的なシステムの利用にはほとんど影響しないが、ただちに対処すべきセキュリティ向上に関するものや、カスタマイズした内容を復活できるものもある。いずれにせよ、何をすべきかを判断するためには1つずつ丹念にチェックする必要があるだろう。無条件にすべての変更を受け入れる人もいれば、反対にそれらを拒否する人もいる。
アップグレードのすぐあとに.rpmnewおよび.rpmsaveファイルを整理しておけば、半年後に次のバージョンにアップグレードする際には必要な操作をわざわざ思い出さなくてもパネルアプレットからアップグレードが可能になる。
Bruce Byfieldは、Linux.comに定期的に寄稿しているコンピュータ分野のジャーナリスト。