Sun Presenter Console - 便利だが、マニュアルが欲しい

 Sun Presenter Console(SPC)はSun Microsystemsの最新のOpenOffice.org/StarOffice向け拡張プラグインである(現在はベータ版の最終段階)。Sun PDF Import Extension翻訳記事)、Sun Presentation MinimizerSun Weblog Publisherなど、昨年Sunから提供されたプラグインの中には一部に設計上の不備やバグらしきものがあるものも時折見られたが、いずれも非常に有用なものばかりなので、なぜ新機能として組み込まずにプラグインとして提供するのか訝しく思った方もおられるのではないだろうか。SPCも例外でない。この拡張プラグインには、プレゼンテーションのときスライドを別のモニタで確認できるようにする機能と、話を整理して手際よく発表するためのツールが用意されているが、セットアップの方法や使い方を説明するドキュメントは含まれていない。

 SPCは、OpenOffice.org 3.0と次期StarOffice 9.0向けに設計されており、これより前のバージョンでは動作しない。それだけでなく、オペレーティングシステムに依存する数少ないプラグインの1つであるため、ダウンロードするファイルを間違わないよう気をつける必要がある。いずれのダウンロードファイルも同じsun-presenter-screen.oxtという名前で、対象となるプラットフォームの識別がないからだ。また、Tools → Extension Managerから他のプラグインと同じようにインストールするわけだが、構成を決めるオプションはないので、Extension ManagerのOptionsボタンがグレイアウトしているからといって心配することはない。

 SPCを使うには最低2台のディスプレイ(2台のモニタ、あるいは1台のモニタとプロジェクタ)でシステムを構成する必要がある。また、この2台をミラーの関係に設定することはできない。GNOME 2.24でXRandRの拡張サポートを使用していれば比較的容易に作業を進められるだろう。とはいえ、2台のディスプレイを有効にするために手持ちの機器とビデオドライバに関する情報をインターネットで調べる羽目になることもある。

 SPCのインストールが完了してもExtension Manager以外にそれとわかる痕跡は現れない。SPCを使うには、OOo Impressでスライドショーを開始し、Slide Show → Slide Show Settingsとメニューを辿る。ここでPresentation monitorからディスプレイを選ぶと、それが観客にスライドを表示するディスプレイとなる。この設定を終えると、SPCがもう一方のディスプレイで自動的に開始されるが、観客のディスプレイはまだ表示されない。

 SPCは全画面で表示される(背景色は実用本位のグレー)。デフォルトの画面では、画面の約4分の1が現在のスライドの表示に充てられ、さらに次のスライドが現在のスライドの約2分の1の大きさで表示される。その下のツールバーには、前後のスライドへ移動する矢印ボタン(Previous/Next)、SPCの画面を切り替える各アイコン、現在の時刻とスライドショーの経過時間を示すパネル、そして最後にHelpボタンがある。これらのコントロールは、どれも利便性重視で大きめにデザインされている。目を細めて画面を覗き込んでばかりいると、プレゼンテーション中に観客と視線を合わせることが少なくなるからだ。

 デフォルトの画面のほか、SPCにはノート(Notes)画面がある。ここでのノートは、観客に提供される資料というよりもプレゼンテーションを行う本人が利用するものという意味合いが強い。ノート画面にはズームボタンがあるが、変更にやや時間がかかるので、たぶんズームに頼るよりもノートを書くときに大きなフォントを使うようにした方がよい。実際、使いやすいノートを作るためには、色や文字の太さを変化させるなど、書式上のさまざまな効果を利用することになるだろう。

 SPCのスライド(Slides)画面はImpressのSlide Sorter画面に相当するものだ。Slide Sorterと同じく、スライド画面にはプレゼンテーションのすべてのスライドが、まるで現実の写真スライドをライトボックスに並べたかのように縦横に整列して表示される。デフォルトの画面があることを考えると、この画面はいささか余分と思われるが、マウスで操作するコントロールを使うことを躊躇しないのであれば、現在のスライドを含む前後3つのスライドだけでなくスライドショーの任意のスライドにジャンプできるので便利かもしれない。

 ヘルプ(Help)画面にはキーボードショートカットがまとめられている。たとえば、Homeキーを押すとプレゼンテーションの最初のスライドへジャンプし、番号を入力してEnterキーを押すと特定のスライドへジャンプする。通常、これらはスライド画面やSPCのPrevious/Nextボタンよりも手早く操作できる。

 ヘルプ画面には、このほかにも特別なショートカットが示されている。たとえば、Alt-Page UpまたはAlt-Page Downを押すと、それぞれ前または次のスライドへ移動するが、その際にスライドの特殊効果やアニメーションがカットされる。私の経験では最後の討論のときによく起こるのだが、スライドショーの途中でどうしても特定のスライドへ戻らなければならなくなった場合、一度見たアニメーションをもう一度見せられるのは、プレゼンテーションを行っている本人だけでなく観客にとっても迷惑なことだろう。

 いずれもちょっとした機能だが、プレゼンテーションをよく行う人にとっては、たちまち手放せないものとなるだろう。SPCの背景をもう少し派手にして欲しいと考える向きもあるかもしれないが、それよりも問題は、OpenOffice.orgの拡張プラグインサイトで少しばかり説明されているのと同程度の、設定に関する簡単なヘルプしかないことだ。最終リリースにSunの開発者が基本的な情報を盛り込んでくれることを期待したいところだ。そうでないと、この便利で小さなプラグインは、思ったほど利用されないかもしれない。

Bruce Byfieldは、コンピュータ専門誌記者としてLinux.comに定期的に寄稿している。

Linux.com 原文(2008年11月10日)