AltSearch――見た目の悪さを裏切るポテンシャルを秘めたOOo Writer用検索機能拡張

  Alternative Find and Replace for Writer (AltSearch)は、OpenOffice.orgに実装されている標準的な検索機能を置き換えることを目標とした、非常に野心的な作りの機能拡張である。もっともそのインタフェースはかなり分かりにくい構成となっているため、ユーザに与える第一印象は最悪なものとなっているかもしれないが、そこでめげずに辛抱強く使い続けていくと、AltSearchはその謳い文句に掲げられた目標を実際に達成するだけの可能性を秘めていることを確認することになるはずだ。

 AltSearchを使用するには、まずOpenOffice.org ExtensionsのサイトからAltSearch.oxtというファイルをダウンロードし、次に各自のOpenOffice.org(OOo)にてTools(ツール)→Extension Manager(拡張機能マネージャー)を介した機能拡張の追加を行う。その後OpenOffice.orgを再起動すると、グリーンの双眼鏡アイコンがツールバーに、同様のメニューアイテムがTools(ツール)→Add-Onsに追加されているはずだ。なおダウンロードページに掲載されている説明からすると、AltSearchのインストール後にオリジナルの検索/置換ダイアログは使用不可能となっていそうなものだが、こちらもEdit(編集)メニューからアクセス可能な状態で残されている。

 新旧2種類の検索/置換ダイアログを比較してみると、AltSearchのインタフェースはオリジナルの構成をまったく踏襲していないことに気づくはずだ。オリジナルの検索/置換ダイアログの場合、細かなオプション類はMore Optionsボタンを押さない限り表示されない仕様になっているのに対して、AltSearchの場合はそうしたオプション群はドロップダウン形式にて直接アクセスできるようになっているのだが、問題はこれらの項目がまったく乱雑な順番にて表示されている点である。例えばAltSearchはスタイル検索機能をサポートしてはいるのだが、機能別の整理がされていないため、ユーザはかなり時間をかけて全オプションを調べ尽くしてみないとその存在に気づくことはないのではなかろうか?

 同様にオリジナルの検索/置換ダイアログにあるAttributesボタンを介した属性検索についても、AltSearchのPropertyドロップダウンリストの方がオプション数が少ないという事実に直ぐには気づけないだろう。また文字列の曖昧一致検索をするSimilarity searchオプションはAltSearch側には装備されていないが、実のところ正規検索を使えば同様の検索は実行可能なのである。

 その他にもAltSearchの検索文字列と置換文字列の指定フィールドでは使用可能なオプションが一致していない点も、第一印象を悪くする方向に寄与しているはずだ。このうち置換文字列フィールド側に正規表現(Regular)リストが用意されていないのは使い道が限られているせいだとしても、置換用オプションとしてList Styleが用意されているのに、検索用オプションには用意されていないのは少し納得しがたい仕様と言えるのではなかろうか。

 その他にも、クエスチョンマーク(?)だけで示された目立たないヘルプボタンを始め、一見しただけでは意味不明なコードを文字列フィールドに入力するPropertiesリストや、ユーザの指定した検索/置換条件を実行することなく保存しておくBatch機能など、操作性に関してはさまざまな問題点が山積しているのである。現行バージョンにはこうした不備が多数残されているため、ユーザ側の心理としては、AltSearchを使うにしても、より改善された数バージョン先まで待つべきだという考えに傾いていくのではなかろうか?

 しかしながら、AltSearchに装備された有用な機能そのものに着目すると、こうしたインタフェース面での不備や残留する各種のバグなどは些末的な問題と見なせなくもないのだ。例えば、検索条件に一致する部分が文章中に何カ所存在するかを数え上げてくれるCount機能などは、使用する表現の重複を避けたい文筆家などが特に重宝するはずである。

 その他にAltSearchがオリジナルの検索/置換ダイアログより優れているのは、正規表現のメタ文字をRegularコンボボックスから選択入力できるようになっている点で、これを活用すると、暗号めいた正規表現を記憶しつつ手作業にて検索文字列の指定フィールドに入力するという負担が大幅に軽減されるのである。確かにこうした正規表現および、改行しないスペースやカスタムハイフンといった制御系記号の検索などはオリジナルの検索/置換ダイアログでも対応している機能ではあるのだが、AltSearchではこれらの機能をより前面に押し出している分だけ、実際に作業する上でも利用しやすくなっているのだ。

 またExtendedコンボボックスを使用すると、WriterのNavigatorに移動しなくても表や図をオブジェクト名で検索できるようになっている。同じくPropertiesコンボボックスには、ドキュメント上で現在選択中の文字列と同一ないし類似したフォーマットを選択するモードも用意されているのだが、後者の“類似”モードについてはヘルプを見ても詳細が説明されていないので、どのような選択基準となっているかはユーザ各自で類推するしかない。

 AltSearchにおいて最も特筆すべき機能は、単なる検索/置換ツールとしてだけではなく、特殊な処理を実行する一種のマクロ起動用ランチャとして使用可能となっている点であろう。例えば、開始点と終了点を指定することで連続した段落内の検索をしたり、クリップボード中のテキストを置換用の文字列として直接渡すこともできるのだ。AltSearchがより便利なのは、ページ改行や強制改行などの制御系記号を検索するだけでなく、これらの挿入や削除にも対応している点である。しかもAltSearchに装備された機能を組み合わせると、文章上で検索文字列にヒットした位置にて、Replaceフィールドに入力しておいた文字列を脚注や文末脚注として自動挿入させることも可能なのだ。確かにAltSearchを初めて扱う際には操作性の悪さが強く印象に残るかもしれないが、この種の便利な使用法ができることを知れば、そうした第一印象も忘却の彼方に追いやることができるのではなかろうか。

 AltSearchの現行リリースはバージョン1.1.2とされてはいるが、このバージョン番号は過大な数値と見なすべきであり、実際の完成度はオフィシャルリリース以前のベータ版的な不具合が多数残された段階に止まっている。こうした不具合には深刻な部類に属するものも一部存在するが、本文中でも述べたようにAltSearchに実装された機能そのものは非常に大きな可能性を秘めており、今後の発展に注目し続けるだけの価値を有しているはずだ。もう1つか2つのバージョンアップを経れば、その機能に見合う操作性面での向上を果たしていても不思議ではないし、将来的にはOpenOffice.orgのコードベースにおいて現行の検索/置換ツールとの置き換えが検討されるということも、あながち荒唐無稽な話ではないだろう。

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Bruce Byfieldは、コンピュータジャーナリストとして活躍しており、Linux.comに定期的に寄稿している。

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