Linuxの水準を引き上げたUbuntu Intrepid Ibex
新たなUbuntuがリリースされるたびに、ほかのLinuxディストリビューションを見る目が厳しくなる。最新のUbuntu 8.10(コードネームIntrepid Ibex)が注力しているのは、モビリティと3Gネットワークのサポートだ。高速で安定したリリースというのがIntrepidに対する私の印象だが、小さな問題がいくつか見受けられ、まだ完全とはいえない。
ここでは、64ビット版のIntrepidをデスクトップとノート(Gateway製M-7315u、Pentium Dual Core T3200 2GHzプロセッサと4GBのDDR2 RAMを搭載)の両方のマシンにインストールした。インストール時のオプションは以前とほぼ同じだが項目が1つ追加されている。ライブCDのインストーラは変わっていないようだ。よりシンプルなテキストモードのインストーラを使いたい人のために、別のCDも用意されている。新たに追加されたのは「create a USB startup disk」(起動用USBメモリを作成)というオプションで、インストール環境の「System」→「Administration」メニューの下にある。このオプションを使えば、USBメモリにUbuntuをインストールできる。USBメモリへのインストールは以前から可能だったが、そのためのユーティリティが導入されたことで作業がずいぶん楽になった。インストールにかかった時間は、ノートPCで10分ほど、USBメモリで15分だった。
この最新版のUbuntuでは、デスクトップマネージャも進化している。今回、UbuntuにはGNOME 2.24が、KubuntuにはKDE 4.12、XubuntuにはXfce 4.4.2がそれぞれ採用されている。Xorg 7.4とLinuxカーネル2.6.27はすべてに共通だ。アプリケーション群も更新されており、Firefox 3.03、Pidgin 2.5.2、Rhythmbox 0.11.6などが収録されている。
デスクトップテーマは、Ubuntu 8.04で追加されたHuman Murrineがデフォルトになっている。8.04のデフォルトテーマからの大きな変化はないが、ウィジェットやボタンがすっきりして色鮮やかになった。今回のリリースで予定されていたデスクトップテーマの刷新は、実現されなかったことになる。Humanテーマも悪くはないのだが、そこから脱却しきれていないのは残念だ。ありがたいことにUbuntuコミュニティがこの最新リリース用にいくつかの代替テーマ(Dust、Kin、New Wave)を作成してくれているが、いずれもデフォルトの環境には含まれておらず、標準のリポジトリからcommunity-themesというパッケージを入手しないと利用できない。ルック&フィールについては、KubuntuがIntrepidファミリのなかで最もカスタマイズ性が低い。色合いが少し変わっているほかはvanillaフレーバーのKDE 4.1ライブCDとほとんど同じで、ログイン画面のカスタマイズさえ行われていない。
モビリティに関するUbuntuの新機能は、私のノートPCでは期待どおりの働きを見せてくれた。内蔵の無線ネットワークアダプタに始まり、オーディオ、ボリュームキー、ビデオカードに至るまでの全デバイスが正しく検出され、初回のブートから問題なく動作した。ハイバネーションやサスペンドも正常に機能した。パフォーマンス面についても、ノートとデスクトップの双方で軽快に動作し、前のバージョンと同等かそれ以上の処理速度だった。
Network Manager 0.7にも進歩が見られる。この最新版では、ログインを行わなくても(ゲストセッションで)インターネットに接続できるほか、3G(GSM/CDMA)、PPP、PPPoEをはじめとする接続がサポートされている。
さらに、Dynamic Kernel Module Support(DKMS)が導入されている。Dellによるこのフレームワークは、新しいカーネルのリリースに伴うカーネルドライバの再構築を自動化することができる。これにより、対応する制限付きドライバのパッケージがリリースされる前に更新されたカーネルをインストールして問題が発生する、といった状況は回避されるはずだ。
Kubuntuでは、今回のIntrepidになってKDE 3.5.xのサポートが打ち切られている。個人的にはKDE 4.1のほうが好みだが、KDE 3のシンプルさと実績のある安定性を重視するユーザは取り残されてしまうことになる。KDE 3を使いたい人にはユーザの手によるリポジトリがあるが、正式なサポートではないため、いつまで使えるかわからない。KDE 4もインストールしておくに越したことはないだろう。Intrepidでは、KDE 4.1が安定した動作を見せていることも心強い。
問題点
Intrepidのベータ版には、ゲームパッドやジョイスティックが正しく動作しないという不具合があった。そういったデバイスがマウスとして認識され、方向ボタンを押してもマウスカーソルが動いていたのだ。今回の32ビット版ではこのバグが修正されているが、64ビット版のほうは、この記事の執筆時点ではまだ修正が済んでいない。ゲーム好きの64ビット版ユーザにとっては大きな問題だ。とはいえ、UbuntuのLaunchpadからパッチ適用済みパッケージを入手することで、私のマシンではこの問題が解決されている。
ハードウェアに関する問題はほかにもあった。Nvidia製ビデオカードが2枚刺さっている私のデスクトップマシンでは、xorg.confファイルを編集して、手動でテキストモードから抜け出してXサーバを起動できるようにする必要があった。またノートPCでは、液晶画面の輝度調整がまったく行えなかった。さらに、UbuntuからLexmark製プリンタが使えなくなり、わざわざWindowsを立ち上げて文書を印刷しなければならなくなった。
今度はUSBメモリにUbuntuをインストールするために、再びISOイメージをダウンロードした。インストール済みのシステムコンポーネントを利用する形にすれば、USBメモリへのインストールはもっと簡単になるだろう。作成したUSBメモリ環境からブートを行うと、かなりの時間がかかる。だが幸いなことに、いったん起動してしまえば、基本的なコンポーネントの動作はハードディスクにインストールした場合とそれほど変わらない。なお、USBメモリの環境はライブCD版の完全なコピーであり、ハードディスク上のインストール環境と同じように自前でユーザアカウントの追加や設定のカスタマイズを行う必要がある。
まとめ
Hardyの後釜という重荷を背負っていたIntrepidだったが、最終的な仕上がりは上々だ。まずはライブCDを試し、すべてのハードウェアが正しく認識されることを確認したうえで、フルインストールを行うとよいだろう。総合的に見て、Intrepidの動作は軽快で安定しており、モビリティへの注力も十分に評価できる。
Jeremy LaCroixはIT技術者として活動する傍ら執筆も手がけている。