大幅な改善が見られるSTUX 2.0

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 先月リリースされた STUX 2.0は、私が数年前にレビュー翻訳記事)したバージョン0.9.2から著しく改善されている。Slackwareをベースとした同ディストリビューションのルック&フィール(外観と操作性)にはほとんど変わりがないが、システムを使えないものにしていた前回の大きな技術的問題は解決されている。

 STUXは、CDイメージDVDイメージでダウンロードできる。私は後者を選んだ。サイズは4.1GBで、明らかに多くのソフトウェアが同梱されている。ディスクに焼くと、インストールオプションを含むライブDVDとなる。STUX起動時にまず目にするものの1つは、その背景の美しいアートワークである。アートワークは数分毎に変化し、心惹かれる新しい背景が次々に表示される。

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STUX 2.0のデスクトップ

 インストールはステップに分かれており、コンピュータの基本を理解している人なら誰にでもできるほど簡単である。ただし、rootのパスワードを設定する箇所がない点は、特筆すべきだろう。おそらくインストールしたシステムに、デフォルトのrootパスワードが設定されているのだろうと私は推測した。これはあまりよいとはいえないが、後からパスワードを変更するのもそれほど時間がかかるわけではない。

 DVDを外してシステムを再起動し、ハードドライブからSTUXをロードした。ここまではすべてうまく動作しているように思われた。しかしここで、デフォルトのKDEデスクトップにユーザー「stux」としてログインしようとしたとき、一瞬うまく行ったかのように見えたが、エラーメッセージを表示することもなく静かにログインに失敗し、ログイン画面に戻ってしまった。次にrootでログインし、新しいユーザーを追加したが、新しいユーザーでもログインできなかった。あれこれ調べた結果、原因を発見することができた。私の10GBのrootパーティションがほとんどいっぱいで、数メガバイトしか空き容量がなかったのである。/optディレクトリのプログラムを一部削除したところで、root以外のユーザーもログインできるようになった。インストール中には「ディスクがいっぱいです」というエラーメッセージは表示されなかったため、運命のいたずらとでもいうべき偶然によって私のパーティションは最初のインストール分のみを収容したところでいっぱいになったと思われる。インストーラも、ディスクがいっぱいだという警告メッセージを表示することなく静かに失敗する可能性があるのではないかと疑ってしまうが、今回のところは疑わしきは罰せずということにしておく。

 私はこれまでずっとrootとしてログインする際には「root」というパスワードを使用していた。しかし偶然タイプミスをしたときに、rootユーザーには実際にはパスワードはなく、パスワードとして何を入力してもログインできることに気がついた。rootパスワードがないという状態は、セキュリティ的には御法度だが、簡単に解決することができる。インストール時にシステムのパスワードを設定することぐらいは、大した負担ではないだろう。

 ユーザー「stux」でログインすると、ライブCDで選択したキーボード配置(Dvorak)がKDEにおいて正しく選択されていた。これは多くの人々にとってどうでもよい小さな機能の1つかもしれないが、何年もの間手動でこれを設定してきた私にとっては、うれしい発見だった。少しのコードでこの機能を実装することができるのだが、一部の開発者には大した関心事でもないらしい。

 Kickerメニューをざっと見たところ、必要なものはほとんどすべてDVDに含まれており、ハードドライブにインストールされていた。STUXのウェブサイトには、1200余りのパッケージの全種類がリストアップされている。ウェブブラウザとしては「Firefox」、BitTorrentには「Azureus」、インスタントメッセージングには「Kopete」と「Pidgin」、電子メールには「Thunderbird」と「Seamonkey」、IRCには「XChat」、FTPには「gFTP」、音楽には「Amarok」「Audacious」「JuK」、ビデオには「Xine」「MPlayer」「VLC」、グラフィックス編集には「GIMP」と「Krita」、オフィススイートとしては「OpenOffice.org」と「KOffice」があり、ありとあらゆるボードゲームも提供されている。DVDに含まれていないパッケージは、STUXが使用するSlackwareのパッケージマネージャであるswaretによってインストールすることができる。

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STUX 2.0のコントロールパネル

 MPlayerによって何とか手持ちのDVDの何枚かを再生することができたが、他の動画プレーヤーはいずれも、それらをデコードすることができなかった。他のLinuxディストリビューションではMPlayerで再生できるのに、まったく再生できないDVDもあった。私は音楽用にはAudaciousを使用することが多いのだが、他にも多数のオーディオプレーヤーが用意されており、どれも同じようにうまく動作した。少なくとも、今回使用した動画のほとんどのコーデックはインストールされているようだった。どうも欠けているらしいのはFirefox用のFlashプラグインだったが、これを解決するのは簡単だった。Nvidiaビデオドライバは含まれており、デフォルトでインストールされていたが、STUXのコントロールパネルにおいて、Compizを有効にする必要があった。コントロールパネルは、ユーザーがさまざまなシステム設定オプションを変更するためのもので、(動画や音楽の再生など)一部のタスク向けの簡単なウィザードも含まれている。とはいえ全体的には、特に新たに設定することなくうまく動作した。

 STUX 2.0は、前回のレビュー時の、バグだらけで使えなかったシステムからかなり進化した。これなら新しいディストリビューションを試してみたいと思っている人にもお薦めしたいと思う。ただしインストール直後にrootパスワードを設定することだけは、心から忠告させていただく。そのままでも優れたディストリビューションに、独特のアートワークがさらに美しさを添え、ますます増加するすばらしいディストリビューションの中でも際立った存在にしているといえる。

Preston St. Pierreは情報システムを専攻する学生。カナダのブリティッシュコロンビアにあるUniversity of the Fraser Valleyに在学中。

Linux.com 原文(2008年10月22日)