マウスジェスチャを設定するEasyStrokeとGestikk

 どういうわけかマウスジェスチャーはデスクトップユーザーに今一つ受け入れられていない。マウスの動きでコマンドを開始したりキーの組み合わせをシミュレートしたりするという操作法は、マウスとキーボードの間でしょっちゅう手を動かしたくない人や、身体的な理由でタイピングに不自由を感ずる人に向いている。だがマウスジェスチャーのことを知らないユーザーはいまだ多く、需要はほとんどないように見える。KDE 4のリリースが開始されて9ヶ月経つのに、KDEは初期のバージョンのデスクトップにおいてマウスジェスチャー機能を使えるようにしたところのソフトウェアや設定をまだ何も実装していない。一方、GNOMEはどうかと言えば、Mouse Preferences → Accessibilityタブで限られたジェスチャ機能を利用できるに過ぎず、それ以上のものはまだ何も用意されていない。こうした事情から、最近リリースされた EasystrokeGestikk はデスクトップの付加機能として大いに期待が持てる。操作と作りはどちらも似ており、マウスジェスチャーをセットアップして管理するツールとして、そこそこ使える水準に達している。

 Easystroke(最新版はバージョン0.2.2.1)はUbuntuのHardyとIntrepid向けに.debパッケージとして提供されており、作者のホームページから入手できる。Gestikk(現在、バージョン0.6)もUbuntu向けのパッケージとして提供されているが、依存関係の解決に不備があるため、実行する前に自分でpython-virtkey、python-kiwi、python-notify、python-pyparsingをインストールする必要がある。EasystrokeとGestikkは共にソースコードも入手できる。Easystrokeについては依存関係が静的にリンクされたtarファイルもダウンロードできる。とりあえずの試験ということで、簡単にこれらのUbuntuパッケージを使ってみた。

 マウスジェスチャーを常用するつもりなら、起動時に実行されるようにデスクトップを設定するのがよいだろう。たとえば、GNOMEではEasystrokeまたはGestikkをSystem → Preferences → Session → Startup Programsに追加できる。KDEではSystem Settings → Advanced → Autostartに追加するとよい。どちらもいくつかのウィンドウマネージャで動作するので、他のデスクトップでもサポートされるかもしれない。

マウスジェスチャーのセットアップと使用

 EasystrokeとGestikkはオプションや機能がどちらも似ている。操作パネルのシステム通知トレイにアイコンが表示され、それをクリックしてプログラムを設定または実行する。

 EasystrokeではActions(アクション)タブのAdd Action(アクション追加)ボタンをクリックしてマウスジェスチャーをセットアップする。まず、マウスジェスチャーのアクションに名前を付け、次にその種類を定義する。ほとんどの場合、コマンド開始操作か一連のキーをシミュレートする操作を定義することになるが、スクロールやボタンのクリックをシミュレートするオプションもある。コマンドまたは一連のキーを指定する場合は引数欄に入力し、後はRecord Stroke(筆致記録)ボタンをクリックしてマウスジェスチャーを定義すればよい。

 ポップアップダイアログの指示に従い、画面の任意の場所でマウスボタンを押下しながらマウスを動かしてEasystrokeにおけるジェスチャーを定義する(押下している間がジェスチャー操作中とみなされる)。定義が完了すると、Actions(アクション)タブの表の左側のStroke(筆致)欄にジェスチャーが表示される。

 同様にGestikkでは、Configuration(設定)ウィンドウのGestures(ジェスチャー)タブでジェスチャーを入力する。Add(追加)ボタンをクリックすると小さなウィンドウが開き、そこでマウスジェスチャー操作を2回行う必要がある。マウスの動きが速すぎるか遅すぎると、あるいは2回の操作で同じジェスチャーを行わないと、(ぎこちない英文で)ミスが指摘される。入力したジェスチャーがGestikkに受け付けられると別のダイアログが開き、そこでコマンドかキー押下("keypress")を選択し、さらに次のダイアログでその詳細を入力する。ジェスチャーを受け入れる前にテストすることもできる。筆者のPCでは、Gestikkの2番目のダイアログが間欠的に2つ開き、その一方だけが正常に動作したが、両アプリケーションの操作上の主な違いはGestikkの方が構成的により整理されていることだ。

 Easystrokeではジェスチャーに関するその他の情報と共に同じタブにジェスチャーの小さなイラストが表示されるのに対し、Gestikkでは表示を得るためにView gesture(ジェスチャー表示)ボタンをクリックする必要がある。この点はEasystrokeに分があるが、Gestikkはジェスチャーの始点がはっきりわかるようになっているので、ジェスチャーを再現するのが楽である。

 どちらのプログラムを使うにしても、ジェスチャーの定義にはかなり時間がかかる。ジェスチャーをセットアップしたら、後はデスクトップ上でなぞるだけだが、ジェスチャーを完全に覚えるまでは設定ウィンドウをカンニングペーパーとして開いたままにしておくのがよいだろう。

オプション

 EasystrokeとGestikkは用意されているオプションが似ている。どちらのプログラムでも、ジェスチャーをアクティブにするマウスボタンと、プログラムをアクティブにするマウス動作の最小長を設定でき、さらに作成中のマウスジェスチャーを画面に表示できる。このオプションはセットアップしたジェスチャーをなかなか再現できないときかなり役立つ。

 どちらのプログラムもスクリプトをサポートしている。Gestikkにはクイックスタートガイド(Quick Start)があり、個々のジェスチャーの動作をスクリプトで変更するサンプルが掲載されている。たとえば、特定のワークスペースでだけ(あるいは特定のウィンドウが開いているときだけ)マウスジェスチャーが有効となるように設定できる。Gestikkにはエラーメッセージや通知を画面上か、バルーンヘルプとして表示するオプションもある。Easystrokeでは、個々のジェスチャーの使用統計(使うにしても利用範囲はかなり限られていると思われる)が表示される。

使うに値するツール

 GestikkとEasystrokeはどちらもまだ最初のメジャーリリースに達していない。両方のプログラムを使ってみて、インタフェース操作の遅延やマウスジェスチャー作成中のクラッシュを何度か経験した。

 それでも将来性は高い。どちらも単純ながら実効性のあるプログラムだ。個人的にはGestikkがやや好みだが、Easystrokeもそれほど水をあけられているわけではない。安定してくれば、デスクトップの付加機能として共に歓迎されるに違いない。

Bruce Byfieldは、コンピュータ専門誌記者としてLinux.comに定期的に寄稿している。

Linux.com 原文(2008年10月17日)