KOffice 2.0ベータ版パート2:グラフィックスおよびチャート作成プログラム

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 昨日はKOffice 2.0の第1ベータ版の主要なアプリケーションを紹介した翻訳記事)。今回は残りのアプリケーションである、プロジェクトマネージャー「KPlato」、「KChart」、ベクターグラフィックスエディタ「Karbon」、ラスターグラフィックスエディタ「Krita」を紹介する。

 グラフィックスやチャートを作成するためのこれら4つのプログラムは、KOfficeのプログラムの中でも以前から評価の高かったものである。4つとも、従来型のオフィスアプリケーションであるKWord、KSpread、KPresenterよりもずっと早く、高い完成度を達成した。

 完成度の高さは、KPlatoとKChartに関しては、機能が比較的限られたアプリケーションであるためである。一方グラフィックスエディタであるKarbonとKritaについては、オフィスアプリケーションよりもデザインに関心が高いユーザーの支持を得た結果である。

 バージョン2.0において、KOfficeのこれら4つのグラフィックスおよびチャート作成用プログラムはいずれも、他の従来型のオフィスアプリケーションほど大きくは変更されていない。変更する必要もなかったというのがその理由である。

 ところどころに見られる追加機能はさておき、バージョン2.0ベータ版における主な変更点は、Dockerと呼ばれるフロート型のパレット群を持つ、新しい共通インターフェースである。Dockerはグラフィックスプログラムとの相性が極めて良く、KarbonとKritaには以前からフロート型パレットが使用されていたため、おそらくここから派生したと思われる。

プロジェクトマネージャー「KPlato」

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現行のKPlato 1.6.3
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新しいKPlato 2.0ベータ

 KPlatoのこれまでのバージョンはいずれも、空のグラフが生成されて、そこにユーザーが内容を埋めていかなければならず、いささか不親切なものであった。今回の新バージョンは、プロジェクトのさまざまな要素(タスク、リソース、依存関係など)や、異なるビュー(ガントチャートやパフォーマンスステータスなど)を編集するためのオプションが、ウィンドウの左側のDockerとして提示され、よりユーザーフレンドリーなものとなっている。グラフを作成するためのツールが目の前に表示されるため、KPlatoを初めて使用するユーザーにもかなり敷居の低いものになった。

 欠点は、これらの情報を表示するために、グラフ自体の表示領域が小さくなってしまっている点である。幸い、左側のDockerを編集ウィンドウの外側へとドラッグしたり、上端にドッキングしたりすることによって、グラフ領域を広げることが可能である。

「KChart」

 KChartは独立したプログラムとして動作させることもできるが、KSpreadなど他のアプリケーションから呼び出すサブシステムとして使用するのがより適切な使用方法である。かなり限定された機能しか持たないため、数バージョン前から完成した状態にある。したがって当然ながらバージョン2.0ベータ版のKChartは、ほとんど変更されていない。少なくとも「Format」メニューの中の多くの項目にまだ実装の余地が残っていることに気づくユーザーでなければ、変更点に気がつかないだろう。

 今回のベータ版における最大の変更点は、デフォルトでDockerが表示されている点である。デフォルトのDockerの多くは、これほど機能が少ないプログラムに表示するのは大げさであるように感じられ、また、利点よりも欠点の方が大きいのではないかと思われるものもある。「Styles」のDockerは、数回マウスをクリックするだけでグラフの背景を変更することができるので便利だが、「Shape」や「Shadows」用のDockerは、情報表示の専門家であるEdward Tufte氏が「chart junk」と呼ぶところの、グラフに付加価値を与えることなくかえって目を引き邪魔になる余分な情報を、ユーザーに安易に付加させてしまいかねない。これでは、新しい統一されたインターフェースを採用することによって、ユーザーに悪い習慣を奨励することになってしまう。

グラフィックスエディタ「Karbon14」と「Krita」

 KarbonとKritaは、おそらくKOfficeの中で最も成熟したアプリケーションであるため、当然ながら今回のベータ版では最も変更点が少ない。両者ともに他のプログラムには不要なレイヤー用のDockerがあるが、ベータ版におけるそれ以外の外観上の主な違いといえば、Dockerが2つではなく1つのペインに並んでいる点である。

 KarbonとKritaの最新版において、それ以外の大きな変更点を見つけるのは難しいだろう。最大の変更点はおそらく、両者にいくつかの基本的なコマンドのメニューが追加されるとともに、Karbonにはパス(定義済みの構造を持たない任意の形状)が、Kritaにはマスク(特定の操作において保護または不可視状態になる領域)が導入されたことである。どちらもこれまで欠落していた主要な機能であるため、目立たないものの重要な変更点である。新しい機能の追加により、Karbonは機能的にInkscapeにほぼ匹敵するものとなり、Kritaは使用可能なフィルター数を除き、GIMPに近いものとなる。

まとめ

 ベータ版から正式版を正確に評価することはできない。しかしKOffice 2.0には明らかにかなりの労力が費やされているものの、その結果には不満を感じるユーザーもいるのではないかと私は思う。

確かにKarbonとKritaに欠落していたいくつかの機能が追加されたのは喜ばしいことである。しかし何か月かに及ぶ開発を終えた今、KDE 4.1のようにKOfficeも、他のアプリケーションへの追走はそろそろ終了し、何か革新的な開発に着手してくれることを望んでいたユーザーもいるだろう。ツールのデザインには、革新性を感じさせる部分もあるが、全体的にはそのような部分はほとんどなく、取るに足りない。

 KOfficeは大掛かりなプロジェクトである。最近1、2回のリリースで、ネイティブフォーマットとしてOpenDocument Formatを使用するための移行を完了し、WindowsおよびMac OS X向けのクロスプラットフォーム開発を開始した。長期的には、普及すればその労力は報われるのかもしれないが、基盤の改造に力を入れる代わりに、最も基本的なアプリケーションの機能がおろそかになっているように感じられる。

 正式版で評価が一変する可能性もあるものの、現時点ではKOffice 2.0は、ある分野では特出しているが、ある基本的な分野ではまだ競合プログラムに遅れをとっているような、不揃いなアプリケーションの集まりになりそうである。そしてその場合、KOfficeが理想的な状態になるまでにあと2~4年も待たなければならないということになれば、一層悲しい事態であるといえる。

Bruce Byfieldは、Linux.comに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文(2008年10月10日)