gOS 3 Gadgets(ベータ版)はLinux初心者とGoogle Gadgets愛好者向け

 gPC(Wal-Martの$199ドルパソコン)に搭載されたことで知られるgOSの第3版、gOS 3.0 “Gadgets”ベータ版が先週リリースされた。Webに的を絞ったデスクトップとしてよい出来だが、熟練者や現Ubuntuユーザにはあまり乗り換えるメリットがない。

 筆者はgOS 3.0のISOイメージをダウンロードし、CDに焼いてから、テストシステムにインストールしてみた。これは1.7GHz AMD Duronプロセッサに512MB RAMという低スペックマシンだ。ここでgOSがどう動くかを見てみたかった。

 gOSはUbuntuをベースにしたOSであり、Ubuntuと同じくライブCDが使えるし、インストール手順も同じである。過去にUbuntuをインストールした経験がある人には、プロンプトも同じであることがわかる。インストールの所要時間も同じようなもので、古いマシンでも20分とかからない。筆者のシステムでは、すべてのハードウェアが正確に認識され、インストールは何の問題もなく進んだ。すぐにインストールには踏み切れないという人は、ライブCDで試してみるとよい。きわめて機能的にできている。ドキュメントは、Google Docsでオンライン保存ができるから、PC自体のディスク容量がごくわずかでも生産的な仕事ができる。ほとんどの場合は、オンライン接続に何の設定もいらない。

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gOS 3.0

 gOS 3.0にログインして、まず目につくのは緑色である。テーマとアイコンのほぼすべてに緑色が含まれていて、辺り一面緑色といった感じのディストリビューションになっている。ルック&フィールは統一されて、目に快い。ほとんどの機能は画面上端のパネルに集中している。いま実行中のアプリケーションがここに表示されるほか、デスクトップページャ、アプリケーションメニュー、時計などもここにある。画面の下端は、よく使われるオンラインサービスへのリンクを収めたドックになっていて、たとえば、Gmail、Google Calendar、OpenOffice.org、Google Docsへのリンクがある。画面の右縁にはニュースリーダや天気予報アプレットなど、いくつかのGoogle Gadgetsが初めから配置されている。アプリケーションメニューも単純化されている。通常はウィンドウ上端の右側に置かれことの多い「閉じる」「最大化」「最小化」の機能が、このディストリビューションでは左側にあるので、最初はとまどうユーザがいるかもしれない。

 gOS 3.0は、外見だけでなく中身も少し変わっている。まず、ベースがUbuntu 8.04.1 LTSになった。デビュー当時のgOSでは、デフォルトのデスクトップがEnlightenment 17 Window Managerだったが、新リリースではこれがGNOME 2.22.2だ。基本的なアプリケーションはUbuntuとほぼ同じで、WebブラウザにはFirefox 3.0、オフィス事務にはOpenOffice.org 2.4.1、インスタントメッセージングにはPidgin 2.4.1が用意されている。だが、音楽プレイリスト管理のRhythmboxがなくなり、これに代わるアプリケーションもない。

 パッケージアプリケーションの面からUbuntuとの違いを見ると、大きなところではSkypeとGoogle Gadgetsが含まれていることだろう。Google Gadgetsはさまざまな機能(たとえば、天気予報やGoogle News)を「ガジェット」としてデスクトップに追加するもので、gOS 3.0の目玉とも言える存在だ。最初から多くのガジェットが含まれているが、ほかに必要なものがあればGoogle Gadgetsインタフェースから追加できる。

 今回のリリースには、Wine(Windowsアプリケーションを実行するためのLinuxツール)がデフォルトで含まれている。すべてのWindowsアプリケーションをサポートするわけではないが、Windowsからの移行を少しでもスムーズに、という初心者への配慮が感じられる。

辛口コメントも少し

 gOSは、たまにインターネットを覗くだけというユーザにはぴったりのデスクトップだと思う。インターネットカフェなどに最適だ。だが、現Ubuntuユーザに乗り換えを勧めるほどのメリットは見当たらない。gOSの外見やインストール済みアプリケーションが欲しければ、現在のUbuntuシステムで簡単に再現できる(gOSに使われているリポジトリ自体がUbuntuと同じものだ)。もともとプロのLinuxユーザによる使用を想定しておらず、Web 2.0の諸サービスに簡単にアクセスできるところが売りのディストリビューションであり、初心者にはその点がありがたいはずだ。画面下端のドックはよくできているが、どうすれば項目を追加し、カスタマイズできるかが筆者にはわからなかった。また、筆者のテストでは、YouTubeへのリンクが働かなかった。

 gOS 3.0のパフォーマンスは、標準的なUbuntu 8.04と同程度だろう。筆者のシステムでは滑らかに動作したが、もっと古いシステムだと動作が鈍くなることも考えられる。かつてのgOSは、低スペックのマシンでもよく動くことをうたい文句にしていたが、最新版ではGNOMEデスクトップが採用されているから、パワー不足のノートブックPCや安売りPCでどの程度動くものか、筆者には一抹の不安がある。

 初心者レベルのGNU/Linuxディストリビューションを探している人、インターネットサービスが使用できればいいというユーザには、ぴったりのOSだろう。だが、所詮はブランドとテーマを変えただけのUbuntu 8.04であり、そこにGoogle Gadgetsといくつかのサービスを放り込んだだけのものだから、現在のシステムから積極的に乗り換えようと思わせる魅力には欠ける。それでも、Google Gadgetsをデフォルトで備えている単純素朴なWebデスクトップとして、一見の価値があるかもしれない。

 レビューを読んで興味を覚えた方は、Robin MillerのgOS Gadgets 3.0ベータ版ビデオツアーへどうぞ。

Jeremy LaCroixはIT技術者。暇なときに原稿も書く。

Linux.com 原文