OpenSolarisに法的問題?
SunのChief Open Source OfficerであるSimon Phipps氏は、そのような見方は「単なる憶測にすぎない」と述べている。その一方で、Sunは法的に大きな問題を抱えていると指摘する声もある。だが、アナリストや弁護士、オープンソース関係者らの見解として一致しているのは、NovellがSunを相手にひと悶着を巻き起こす可能性は低いということだ。UNIXの知的所有権問題について奮闘を続けてきた当のNovellは、この件については特にコメントしていない。
知的所有権を専門に扱うボストンの法律事務所Bromberg & Sunsteinで商行為に関するグループを率いているThomas Carey氏は、本件の経緯を次のように説明する。「Sunからすると、SCOとの契約によって、SVRX(System V Release X UNIX)のコードに関する秘密保持義務はなくなったという認識だった。だが、SCOとNovellの間の契約では、そのような手続きにはNovellの許可が必要と定められていた。SCOはNovellに対してその申請を行っておらず、許可も受けていない。この件については、Sunは当事者ではなく、SCOとNovellの間だけの話だ。両者の訴訟で裁判所は、秘密情報が公開されて元に戻せない状態になったと判断した。契約違反や秘密保持義務違反についてSCOに賠償支払いを命じる判決が下り、その額は250万ドルと認定された」。
この判決はSunにどんな影響を及ぼすのだろうか。Carey氏はこう話す。「理屈の上では、NovellがSunを相手取って訴訟を起こすことも可能だが、勝てる見込みは薄い。しかもNovellは、SVRXの支配や開発には興味がない。オープンソース・コミュニティでの評判の方がずっと大事だ。SCOとの訴訟は政略的なもので、Novellは正義の味方となった。今ここで、OpenSolarisに関してSunに戦いを挑んだら、今度は悪党になってしまう。そのような動きに出る可能性は低い」。
The 451 Groupのオープンソース・アナリスト、Jay Lyman氏も、NovellがSunを相手に訴訟沙汰を起こすとは思えないという。「NovellがSunに対して公然と法的闘争を仕掛ける可能性は低い。水面下で今回の判決を生かそうとする可能性はあるかもしれないが、UNIX、Linux、オープンソース、Sunといったものを敵に回して争いやいざこざを起こしても、Novellにメリットがあるかどうかは疑問だ。SCOに似た行動に出るよりは、Sunとの協力も含めて、Linux事業やオープンソース事業を成長させるための活動に専念する方が、Novellが得る利はよっぽど大きいはずだ」。
同様の意見は他にも聞かれる。オープンソース活動に携わるBruce Perens氏はこう話す。「OpenSolarisに危機が迫っているとは思えない。Novellが自らSunへの圧力を強めたり、あるいは他社への権利譲渡によってSunへの圧力が強まったりしたら、またもNovellは長期にわたって訴訟にかかわる羽目になる。それよりは、SunとNovellが粛々と協定を結ぶことになるのではなかろうか」。
さらに同氏はこう指摘する。「圧力が強まったら、SunがNovellを買収することだって不可能ではない。何の問題もないし、Novellからすれば願ったりかなったりのはずだ」。
話をまとめよう。NovellがSunを相手取って法的闘争を巻き起こすことも可能だが、Novellが目指す方向にそぐわないため、そのような手に出るとは思えない。少なくとも当面は、OpenSolarisに関してSunが法的な問題に巻き込まれる心配はなさそうだ。
Steven J. Vaughan-Nicholsは、PC用オペレーティングシステムとしてCP/M-80が選択され、2BSD Unixを使うことがクールとされた時代から、テクノロジおよびそのビジネス利用についての執筆活動を続けている。