企業に迫り来るIT専門家不足はFOSSには無縁

 調査会社Gartner(コネティカット州スタンフォード)は、今年初めに発表した調査報告書で、専門家の人材不足のため企業は適格な人材を求めて虚しい争奪戦を繰り広げることになるだろうと警告している。一方、オープンソースの世界では、必要なスキルを身につけた人材の供給は十分だという。

 Red HatのLinuxカーネル・エンジニアで、リアルタイム・カーネル・チームに参加したりEnterprise Linuxディストリビューション上のサードパーティー・ドライバーのサポートを支援したりもしているJon Masters氏は「(人材の獲得については、)人材がいればさしたる困難はない。いかにして適切な人材を探し出すかという問題だ」とし、Linuxやオープンソース・ソフトウェアでは有能な技術者の供給は足りていると言う。

 同調査報告書はITおよびビジネスにおいて来るべき専門家不足はビジネスの成長にとって阻害要因になりつつあるとし、ITモデルとビジネス・モデルの一体化が求めるのはハイブリッド・プロフェッショナル、つまり技術とビジネスという異分野のスキルを併せ持つ人材だが、そうした人材が少ないことを問題視する。

 一方、Masters氏は、Linuxやオープンソース・ソフトウェアの世界では同様の状況にはなく、「そのようなハイブリッド・プロフェッショナルは大勢いる」と言う。Masters氏によると、ハイブリッド・プロフェッショナルというのはITとビジネスが融合するにつれて変化していく状況に適応できるだけの広範なスキルを持った融通無碍の人材だという。

 そして、業界が自主学習を強調すればプロプライエタリー・ソフトウェアの世界では思いも付かないような方法で物事を考えるよう開発者に促すことができるだろうと言う。「Linuxに参加するためにコンピューター科学者になる必要はない。しかし、問題を解決する能力があり、他人と協力して仕事ができ、複数のことを同時に処理できなければならない」

 Open Technology Group(ノースカロライナ州モリスビル)は10年あまり前からオープン性と相互運用性を促進するITソリューションを活用できるような人材の啓発・研修を行ってきた。同社社長のChander Ganesan氏は、同社でPostgreSQL、MySQL、PHP、Python、シェル・プログラミングなどに関する研修を受講した人々を念頭に置いて、この業界にはハイブリッド・プロフェッショナルとは何かを凝縮したような実務経験を持つ人材はかなりいると言う。

 「(受講者の)大部分は特定領域の知識をすでに持っている人たちで、スキルを広げて仕事に多面的に対応できるようにしたいと考えている。しかも、従業員は、管理者などの従来型意思決定者とは異なり、研修について問い合わせた上で、その必要性を上層部に訴える人が多い。思うに、これは根本的な違いだ。傾向として従業員は自らハイブリッド・プロフェッショナルになるべく動いている。管理職とは対照的だ」

 Red Hatの人事担当シニアバイスプレジデントDeLisa Alexander氏は、同社の認定プログラムはハイブリッド・プロフェッショナルの育成に役立っていると言う。「当社はビジネスが求める人材の研修に貢献しており、当社が求めるのもそうしたハイブリッド・プロフェッショナルだ」

Ian Palmer フリーランス・ライター。カナダ・トロント近郊に在住し、テクノロジーとビジネスの問題を中心に活動。

Linux.com 原文