Edubuntuで子供たちに教えられること

 Edubuntuは、教育過程にある子供たちを対象とした、Ubuntuのカスタマイズ版だ。ホームページには“子供や若年者のためのLinux”と記されているが、3人の子供がいる私もEdubuntuを活用している。私は自宅で彼らの勉強を見ており、2台のコンピュータでEdubuntuが稼働している。息子たちは子供向けに作られたオペレーティングシステムを気に入っており、私自身は各種のアプリケーションで学習のプロセス全体をカバーするという方針を高く評価している。

 EdubuntuはUbuntu Linuxをベースにして、読むことを覚え始めたばかりの幼児から大学進学を控えた高校生までの幅広い年齢の子供たち向けにカスタマイズされている。KDE Edutainment Suiteのほか、数学、読書、美術、コンピュータサイエンス、国語など、ほぼすべての教科の学習に役立つ数十種類ものアプリケーションおよびツールが付属している。デフォルトのインタフェースはGNOMEになっているが、KDEも利用できる。世界中の教室で広く使われているEdubuntuだが、家庭用のノートPCおよびデスクトップPCにも簡単にインストールできる。

 Edubuntuに収録されている教育用ソフトウェアは文句の付けようがない。関数プロットツールKmPlotや作図ツールKigのように、7歳、9歳、10歳という私の息子たちには少し難しいものもあるが、分数を扱うKBurchはよく利用しており、元素の周期表について学ぶKalziumも使い始めたところだ。圧倒的によく使うのはKStarsで、どのような星々が上空に見えるか、また夜中にどんな天体が現われるかを確かめるために毎日のように使っている。

 子供たちが成長するにつれて多様なメディアを扱える能力が重要になってくることは確実なので、すでに私は彼らがそうしたものに順応できるように対策を講じている。3人が揃ってよく使っているのは、絵を描くためのGIMPだ。真ん中の息子は、毎週Kinoで映画を作っている(将来は映画監督か)。一番上の息子は、音楽の授業でSerpentineを使ってオーディオCDを作成している。このネイティブのサウンドレコーダは、最近学んだことを子供たちが話し合っている様子を記録した自家製ポッドキャストの制作にも利用している。そうしたポッドキャストはCDに焼いて、学習記録として残している。

 Edubuntuは、プログラミングを子供たちに教えるという点でもかなり役に立っている。最初は教育用のプログラミング環境KTurtleになかなか手が出せなかった。というのも、私のプログラミングスキルは1980年代半ばからずっと眠ったままだったからだ。だが、使ってみると非常にとっつきやすいアプリケーションであることがわかった。今では子供たちが、彼らにもわかりやすいこの環境の視覚的な方法を通じて、コードを変更すると実行結果がどのように変わるかを学び始めている。

 もちろん、Edubuntuには一般的に想定される標準アプリケーションも数多く用意されている。我が家でよく使うのはOpenOffice.orgのWriterであり、学年末の大がかりな理科の実習課題ではImpressの出番となる。子供たちがCalcを使うことはあまりないが、私のほうでは成績やテストの点はもちろん、過去および今後の課題の管理に重宝している。ときおり子供たちが自分で書いた本にすてきな表紙をつけたり、学校から持ち帰った作品を綴じておくバインダーに飾りを付けたりする際には、デスクトップパブリッシングのScribusも役に立っている。

 このディストリビューションを利用していてありがたいのは、オープンソースソフトウェアに関する議論を机上のものに終わらせることなく、家庭で利用できるその他のオペレーティングシステムやアプリケーションにオープンソースソフトウェアがどの程度対抗できるものなのかを実際に確認できることだ。

楽しみながらの学習

 ゲーム好きな息子たちは、特にEdubuntuに収録されているゲームが気に入っている。今も、この記事を書いている私の隣で、一番上の息子がノートPCの1台を使ってKHangManの自己最高得点を更新しようと奮闘している。自分では遊んでいるつもりだろうが、そうしている間に彼の読解、単語の綴り、論理的判断の能力は伸びている。Tux Mathというゲームも子供たちは楽しんでいる。上から落ちてくる算数の問題の答えをTuxが見つけられるように助けてあげるというすばらしいゲームだ。正しい答えを入力すると問題の数式ははじけて消えるが、間違うと数式が落ちてきて街が破壊されてしまう。

 家族でよく利用しているのは、教育用のゲームを集めたGcomprisというソフトウェアだ。子供たちの学年からすると少し下のレベルのものもあるが、その他いくつかはうまく活用している。たとえば、美術の授業のあとには著名な絵画のパズル、水の性質について学んだあとには水路を開閉するゲーム、地理の学力向上には地図モジュールといった具合だ。そのほか、チェスや数独のやり方を覚えたり、一番下の息子に時計の読み方を教えたりするモジュールも利用している。

 Gcompris以外にも、Edubuntuには15種類を超えるゲームが用意されており、楽しくてためになる変化に富んだラインナップになっている。AisleRiot SolitareやPotato Guyのようにあまり学習的でないゲームもあるが、全体的には妥当なものが集められており、子供たちもかなり気に入っている。

指導者向けのツール

 先ほど述べたCalcのほかにも、Edubuntuには私が子供たちの成長の管理および記録によく使っているツールがいくつか存在する。

 我が家では、子供たちひとりひとりの作業領域を個別に確保するように各コンピュータを設定している。そうすれば、兄や弟の懸命に取り組んでいる作業の経過が失われるのではないかと心配することなく、ユーザの切り換えができる。また、各自にEvolutionのアカウント設定を行っている。私は子供たちの学業に積極的に関与しているが、彼らは課題やその日の学習内容を伝える私からの電子メールが届くのを嫌がってはいない。それぞれの受信箱は、私たちの取り組みのすばらしい記録になっている。それに、Webベースのメールサービスを利用しているので、家にいなくても自分の出した課題をチェックすることができる。

 彼らの年齢で学ぶことには記憶に頼るものが多いため(九九の表、大陸の名前、単語の綴りなど)、私はKEducaを使ってフラッシュカードやクイズ形式の問題を作成している。市販のフラッシュカードとは違って、ひとりひとりのニーズや学習レベルに合わせて作ることができる。付属の画像スキャナソフトは手持ちのLexmark製品では正常に動作しなかったが、そのうちに作文の課題をスキャンしてディスクに焼いて保管できるようにしたいと思っている。また、息子たちがあまり得意でない分野についてはおばあちゃんからご褒美と励ましの言葉をもらえるように、筆記体の手書き練習の結果をスキャンして母にメールで送ることも考えている。

 また、その日の宿題を済ませた子供たちには、好ましくないサイトを閲覧できないように拡張機能のGlubbleを有効にしたFirefoxでしばしの間、ネットサーフィンをさせている。彼らはいつも楽曲プレーヤーのRhythmboxで音楽を聴きながらネットサーフィンを楽しんでいる。

 学校の勉強のほとんどは実際に手を動かしたり話し合ったりして行うものなので、子供たちが1日にコンピュータを使う時間はそれほど長くない。しかし、テクノロジは私たちの生活の大きな部分を占めており、彼らが私の年齢になる頃にはあらゆる人の生活にテクノロジが大きく関わっていることだろう。Edubuntuは、子供たちが重要な学科の基本事項を習得する部分と、オープンソースソフトウェアを使ってすばらしいことを成し遂げる方法を彼らに教える部分とのバランスがうまく取れたディストリビューションといえる。

Linux.com 原文