知名度の低いGNOMEのパネルアプレット群でデスクトップ環境を改善する

 GNOMEデスクトップ環境には、デフォルトで一連のパネルアプレットが付属している。使っているディストリビューションのリポジトリやインターネットで少し検索すれば、正式にはGNOMEに採用されていない追加のアプレットがいくつか見つかるはずだ。もしかすると正式なものに劣らず便利なものがあるかもしれない。ここではそうしたアプレットのいくつかを簡単に紹介する。

Gnome Blog

 Gnome Blogパネルアプレットを使えば、ブログに新しいエントリを手っとり早く投稿できる。新規エントリのコンテンツに少しずつ取り組むことができ、作業を終えると変更内容が保存される。また、ブログサイトがGnome Blogに対応していれば、画像をドラッグアンドドロップでGnome Blogに取り込んで新規エントリに追加できる。編集終了後、「Post Entry(エントリを投稿)」をクリックすれば、新規エントリがブログサイトにアップロードされる。Gnome Blogに対応したブログサイトは、blogger.comadvogato.orglivejournal.com、またMovabletypeWordPress、pybloxsomの各プラットフォームで構築されたもの、そしてbloggerAPIまたはMetaWeblogの各APIを使用したすべてのブログサイトとなっている。

Zeroconf Service Discovery

 この興味深い小さなアプレットにより、ローカルネットワークでZeroconfサービスが使えるようになる。Zeroconfは、AppleのBonjourまたはRendezvousとしても知られている。Zeroconfを使えば、自分のコンピュータ上のサービスを公開して、ネットワーク上のほかのコンピュータで使えるようになる。よく知られている例として、iTunesの楽曲共有機能がある。Linuxでは、RhythmboxやBansheeなどのメディアプレーヤーで同じことができる。こうしたメディアプレーヤーのどれかをネットワーク上で動作させて楽曲を共有する設定にしておけば、同じネットワーク上でZeroconfに対応したメディアプレーヤーを使っている別のユーザからも共有された楽曲の参照と聴取が可能になるわけだ。

 Zeroconfで公開できるサービスは、楽曲共有だけではない。一般的な職場のネットワークのLinuxマシンでZeroconf Service Discoveryアプレットを有効にすれば(当然、そのためのパーミッションが必要となる)、ほかのサービスがすぐ見つかるだろう。デフォルトではほんの数種類のサービスしか検索されないが、Zeroconf Service Discoveryアプレットの設定画面を開いて探したいサービスにチェックを入れることで、その数を増やすことができる。公開サービスとして見つけられるものとしては、各種プリンタのWebインタフェースのようなWebサイト、iTunesの共有ライブラリ、Apple Fileによる共有フォルダ、公開FTPサイト、Asteriskによるテレフォニー交換の対象、Webの共有ブックマーク、LDAPディレクトリ、GnuPG鍵サーバ、Apple iChatのユーザ、RealPlayerの共有お気に入り、共有されたRSSフィード、Skypeユーザ、WindowsおよびWebDAVファイル共有などがある。

 見つかったサービスをクリックしても、対応するプラグインがないというメッセージが表示されることがある。このアプレットのデフォルトの状態では、十分な数のサービスを利用できるだけのプラグインが用意されていないためだ。少なくともUbuntu Gutsy用のパッケージで、最初からサポートされているサービスとしては、EkigaによるH23およびSIP VoIPプロトコル、gnome-terminalによるSSHおよびSFTP-SSH、xvncviewerによるVNC接続、そしてNautilusで処理されるFTP、セキュアFTP(FTPS)、HTTP、セキュアHTTP(HTTPS)、WebDAV、セキュアWebDAV(WebDAVS)が挙げられる。ただ残念ながら、NautilusはもはやHTTPまたはHTTPSページのオープンをサポートしていないため、HTTPサービスをクリックしてもエラーが発生する。この問題はHTTPを処理するプラグイン「/usr/share/service-discovery-applet/plugins/nautilus.py」を編集することで解決できるが、ここでは詳しく説明しない。興味がある人は、このプラグインと同じ方針でPythonのプラグインを書き、「/usr/share/service-discovery-applet/plugins/」フォルダに加えることにより、対応可能なサービスの種類を増やすこともできる。

Giplet

 Gipletアプレットは、自分が使っているコンピュータのIPアドレスをGNOMEパネルに表示するだけのものだ。設定によって(無線、有線を問わず)EthernetネットワークインタフェースのIPアドレスを表示したり、外部Webサイトから自分のIPアドレスを取得することもできる。こうした機能は、自らの接続情報が頻繁に変わるようなネットワーク環境(出張中に空港ラウンジでノートPCを無線LANに接続する場合など)で自分のIPアドレスを知りたい場合に役立つ。

Music Applet

 多くのLinux用楽曲プレーヤーはすでにパネル通知エリア内のアイコン表示に対応しているが、なかにはそうでないものもあり、大抵はそのせいで不格好なインタフェースになってしまう。Music Appletを使うと、簡単ですばやくアクセスできるボタン群によって、パネルから楽曲プレーヤーを制御できるようになり、右クリックで動作を選択する必要がなくなる。このアプレットには「Previous(戻る)」、「Play(再生)」、「Next(進む)」のボタンがあり、トラックの再生時間および評価を表示するような設定も可能だ。また、再生トラックが変わるときには次の曲の詳細情報がポップアップ表示される。Music Applet 2.3.0に対応した楽曲プレーヤーとしては、Rhythmbox、Muine、Banshee、Exaile、MPD、Quad Libet、XMMS、XMMS 2、Amarok、Audacious、VLCがある。

Byzanz

 Byzanzアプレットを使えば、デスクトップでの操作を記録してGIFファイルとして保存できる。デスクトップ全体を記録することもできれば、記録範囲を特定の領域または選択したウィンドウだけに限定することも可能だ。また、デフォルトではマウスカーソルの動きも記録されるが、これを記録しないようにするオプションもある。残念なことに、Compizのデスクトップ効果を有効にしている場合はByzanzがうまく動作しない(デスクトップ効果を無効にすれば良好な結果が得られる)。また、デスクトップ上に高解像度の画像があると記録結果にざらつきが出やすくなるが、これは256色のカラーパレットにしか対応していないGIFフォーマットの制約によるものである。

Workrave

 Workraveアプレットは、コンピュータで何時間もタイピングを行う人が反復運動損傷(RSI:Repetitive Strain Injury)になるのを防ぐために作られた。このアプレットでは、タイピングを何分続けたら休憩を取るのかを設定できる。デフォルトでは、小休止として5分ごとに30秒の休憩、普通の休み時間として45分ごとに10分の休憩を取るように設定されている。また、1日の上限作業時間のデフォルト値は4時間になっている。休憩時には、一連のストレッチと眼球運動を行うための画面表示に切り替わる。休憩中は入力作業ができないため、ユーザはこうした運動をせざるを得なくなる。ただし、必要に応じて休憩を後ろにずらしたり、取らずに済ませたりすることも可能だ。ネットワーク上ではWorkraveを分散モードで実行させることができる。その場合は分散モードでWorkraveを実行中の2台のコンピュータ間を行き来していても、同じタイミングで休憩を取ることができる。またWorkraveは、休憩時間、1日の作業時間、マウスおよびキーボードの使用状況に関する統計情報も記録している。RSIを予防できるすばらしいツールであり、キーボードの使いすぎに日頃から注意する習慣をつけるのに役立つだろう。

Camera Monitor

 Camera Monitorアプレットはバックグラウンドタスクとして実行され、Webカメラが何らかのアプリケーションによって使用されると通知メッセージを出すと共にパネルにアイコンを表示する。VoIPによるEkigaビデオフォンで誰かと会話する場合など、Webカメラが使用中かどうかをチェックしたい場合に便利なツールだ。

Cryptkeeper

 Cryptkeeperアプレットを使うと、EncFSで暗号化されたフォルダの管理がコンピュータ上で簡単に行える。Cryptkeeperを動作させるには、EncFSをインストールし、カーネルモジュールFuseをロードして、Fuseグループにユーザ名を追加する必要がある(以下を参照)。

 sudo aptitude install encfs
sudo echo "fuse" >> /etc/modules
sudo modprobe fuse
sudo addgroup [your username] fuse

 こうしてEncFSの環境が整ったら、Cryptkeeperのインストールに進む。リポジトリに見つからない場合は、CryptkeeperのWebサイトからDebianおよびUbuntu用のバイナリパッケージが入手できる。インストールが終わると、「Applications」→「System Tools」メニューにCryptkeeperが表示されるはずだ。これをクリックすると、システムトレイにアイコンが追加される。このアイコンからはCryptkeeperの設定や暗号化するフォルダの設定が行えるほか、既存の暗号化フォルダを開くこともできる。暗号化フォルダの参照時には、対応するパスワードを入力することでCryptkeeperで設定されたファイルマネージャ(デフォルトはNautilus)でフォルダが開く。そこから先は普通のフォルダと同じようにファイルの操作が行える。また、暗号化フォルダのマウント解除を一定時間後に自動で行うかCryptkeeperアイコンから手動で行うかの設定や、マウント解除時にフォルダを暗号化し直すような設定も可能だ。

Quick Lounge

 Quick Loungeの動作は、Windowsのクイック起動バーに似ている。このアプレットは頻繁に使用するアプリケーションランチャ(ローンチャ)のリストを保持しており、そうしたランチャをパネル上に表示する。なお、設定されている領域に収らないランチャについては、ドロップダウンリストにして表示してくれる。ランチャは手動で追加できるほか、メニュー内の既存ランチャから選択することもできる。パネルに直接ランチャを配置する場合との違いは、パネルに表示するランチャ数とドロップダウンリストに含めるランチャ数を自分で設定できる点にある。もう1つの利点は、すべてのランチャが1つにまとまっているので、パネルのサイズを変更しても表示が崩れることなく各ランチャがアプレット内にきっちりと並ぶことだ。

Timer Applet

 Timer Appletはきわめて単純なアプレットで、時間をカウントダウンしていき、終了時にポップアップ通知を表示するだけのものだ。必要であれば終了時に音を鳴らすように設定できる。また、アプレットのドロップダウンメニューからすばやく選択できるプリセットタイマーを用意しておくこともできる。短時間で仕上げなければならない作業をするときや、一定の時間が経過したことを知らせてほしいときに役立つ。

gToDo

 もっと強力なリマインダ機能が必要なら、gToDoアプレットを試すとよい。gTodoのタスクリストマネージャの管理は、パネルから行うことができる。gToDoを使用するには、個々のタスクを作成して簡単なタスクリストにまとめておく。タスクに期限を指定すると、指定時刻の15分前にリマインダがポップアップ表示される。カテゴリを自分で作成してタスクを分類したり、Webブラウザで表示できるようにタスクリストをHTML形式で、またはあとでインポートできるようにXMLファイルにエクスポートしたりすることも可能だ。gTodoは本格的な予定表アプリケーションの置き換えにはならないが、多くの人のニーズを満たすだけの機能は備えている。

Menu File Browser

 Menu File Browserアプレットでは、ファイルマネージャを開くことなくパネルからディレクトリを閲覧してファイルを開くことができる。参照するフォルダは複数指定することができ、パネルにはそれぞれが新規アイテムとして表示される。また、取得するファイルのリストに隠しファイルを含めるかどうかも指定できる。よく使うフォルダのファイルをすばやく開きたい場合には、間違いなく時間の節約になる。

まとめ

 ここで紹介したパネルアプレット以外にも使えるものはたくさんある。もっとほかのアプレットを探したければ、Linuxディストリビューションのソフトウェアリポジトリかインターネットで検索してみてほしい。手始めにgnomefiles.orgを当たるとよいだろう。機能的でよくできたパネルアプレットを使えばデスクトップの生産性が向上するので、自分の要求に合ったものを探してみるだけの価値はあるはずだ。

Peter Enseleitはオーストラリア出身のソフトウェア開発者。Linuxの使用暦は8年以上に及ぶ。

Linux.com 原文