漫画家やイラストレータのためのFOSS

 昨今、伝統的な出版社もデジタル画像を受け付ける傾向があり、そのような状況を受けて漫画家やイラストレータも作品の作成にFOSS(free and open source software)系のツールを利用する人が増えている。

線描

 ベクトル方式とビットマップ方式のどちらの描画プログラムでも線を描くことができる。一般的に言って、ベクトル方式の線は再利用や修正が容易で、ビットマップ方式の線は技巧的な傾向が強い。

 どんなツールを使う場合も描画作業に入る前に最終的なレイヤ数を決めておくとよい。簡単なビットマップ図形(たとえば、背景と人物と自動車で構成されるようなもの)ならレイヤ数は3か4で十分だろう。ベクトル図形はレイヤ数がもっと増えるかもしれない。図形内のたった1つの要素が複数のレイヤで構成されることだってあるからだ。レイヤを用いると図形の修正や再利用が容易になる。

 ビットマップ方式のプログラムで線を描くときはペンタブレットが必要だ。たとえば、Wacom製のタブレットを使うとよい。Nathan Willisの記事「Getting started with Wacom tablets in Linux」(LinuxでWacomタブレットを使おう)が参考になるだろう。オープンソースアプリケーションのGIMP(Windows、Linux、Unix、Macの各版がある)やPaint.NET(Windows版のみ)には鉛筆、ペイントブラシ、エアブラシといった線描画ツールが用意されている。ブラシの線幅、塗りつぶしスタイル、アンチエイリアシング・モード、合成モードなどの設定を調整し、お気に入りのブラシとして保存しておけば、後でいつでも使うことができる。

 ベクトル方式の線のメリットは容易に修正できる点にある。ベクトル方式のグラフィックスに対応したFOSS系のツールとしては、Inkscape(Windows、Linux、Mac)、Xara Xtreme for LinuxSkencil(Linux、Unix)がある。

 ベクトル図形のレイヤ数が増えすぎた場合、完成した複数のレイヤを1つのグループとして結合して図形の状態を単純化することもできる。たとえば、Inkscapeでレイヤをグループ化するにはObject→Groupを選択すればよい。グループを再び編集したければ、グループをダブルクリックするか、Object→Ungroupを選択する。

 Inkscapeのトレース・ビットマップ・ツール(Shift-Alt-B)を使うと、ビットマップ図形をベクトル図形に変換することもできる。この技法は手の込んだ肖像画を作るとき役に立つ。たとえば、写真を読み込んでベクトルの線に変換すれば、風刺画に出てくるような似顔絵を作ることもできるだろう。結節点編集ツール(F2)でベクトルの線を変形して、あごを大きくしたり、ほお骨を高くしたり、唇を厚くしたりするわけだ。

色塗り

 ベクトル画像やビットマップ画像に色を付けるのは比較的簡単だ。ビットマップ方式のプログラムでベクトル画像に色を付ける場合は、最初に画像をビットマップとしてエクスポートする。Paint.NETのPaint BucketやGIMPのBucket Fillといったツールには、ビットマップの色塗りのための何十ものパターンが用意されている。また、線描画ツールで色付きのパターンを描くこともできる。

 GIMPで色を塗るとき使うレイヤは同じでも別でもよい。別のレイヤを使うと処理に時間はかかるが、後で色と線を別々に修正することができる。

 ベクトル方式のプログラムで特殊効果のためにビットマップ画像に色を付けることもできる(たとえば、Paint.NETで描いた線にXara Xtreme for Linuxで色を付ける場合など)。しかし、この作業は色付けの対象となるベクトル図形を最初にたくさん描いておく必要があるので、やや面倒である。

小道具と背景

 Google SketchUpには小道具や背景を手早く描く機能がある。線、矩形、円、弧の各ツールを使い、3次元座標中でカーソルをドラッグしてオブジェクトや背景を描くことができる。煉瓦、木、石、タイル、植物、カーペット、水など、100種類以上の素材が用意されている。また、Sketchy Effectsで手書き風の効果を得ることもできる。SketchUpのスタイルがまさに求めていたものであるなら、これで作成した画像をそのままビットマップファイルとしてエクスポートし、描画プログラムのレイヤに読み込むか、別の描画プログラムで修正するとよいだろう。

FOSS系のツールの中にも小道具の作成を支援するものがある。たとえば、Paint.NETのエンボスツールを使うと、場面に浮き彫りのアートワークを作り出すことができる。単純に矩形を作り、色やパターンで塗りつぶして背景にしてもよい。

描画図形の画質アップ、ポリッシュ、エクスポート

 他の種類のグラフィックファイルよりも比較的サイズが小さくなるため、通常、編集者はJPGファイルを受け付ける。作成した図形をJPGファイルとしてエクスポートする前に、圧縮された画像がどのように見えるか確認することが大切だ。場合によっては一部のレイヤを修正する必要がある。たとえば、背景レイヤが明るすぎる場合は暗くするかブラーをかけるとよい。Paint.NETやGIMPでアーティスティック効果を作ることもできる。たとえば、Paint.NETのEffects→Pencilを選択すると、作品が鉛筆で描いたようになる。

 画像をJPGファイルとしてエクスポートするときは、必要な画質や解像度を考慮して圧縮率を設定すること。JPGの圧縮率は85から95%にするとよい。解像度は雑誌などでは最低でも300dpiは必要だ。これは雑誌の4×3インチのイラストで最低1,200×900ピクセルのデジタル画像が必要なことを意味する。

結論

 FOSS系の描画プログラムの強力な機能は、デジタル・アートワークの作成に役立つのはもちろんだが、これで作画の技能に磨きをかければ、アートの世界で顔を売ることができるに違いない。

Chen Nan Yangは、以前、中国のTeenage Magazine、Guangzhou Daily、Beijing News、Global Timesで漫画やイラストを描いていた。

Linux.com 原文