スリムになる次世代Windowsカーネル――Microsoft技術者が軽量OSをアピール
「distinguished engineer」という肩書きを持つMicrosoftのエリック・トラウト氏は20日、計算機科学分野の学会であるACM(Association for Computing Machinery)が主催するコンファレンスで、同氏の専門分野である仮想化への取り組みを中心におよそ1時間にわたり講演し、その中でMinWinを取り上げた。
「Windowsのことを肥大化したOSだと考えている人は多く、それが正当な見方だということも認めざるをえない。そこでわれわれは、MinWinと呼ばれるものを作った。わたしはまだこの大きさ(サイズ)に満足してはいないが、OSの上に乗っているすべてのレイヤをそぎ落とし、まっさらなアーキテクチャ・レイヤにしようと努力した結果の1つがMinWinだ」(トラウト氏)
トラウト氏は聴講者の前でMinWinを実際に動かし、そのマイクロカーネルが現行のWindowsコアと比べていかにスリム化されているかという点を強調した。同氏によると、Windows Vistaのコアは4GBに及び5,000のファイルが使われているが、MinWinのファイル数は100しかなく、サイズも25MBだという。
MinWinはサイズが非常に小さく、グラフィカル・サブシステムを持たない。トラウト氏がMinWinをブートすると、旗をかたどった標準的なWindowsのロゴが起動画面に表示されたが、その図柄はASCII文字で書かれたものだった。この手法は数十年前に廃れてしまったもので、スパミング以外ではほとんど使われていない。
MinWinはMicrosoft社内のみで使われており、将来的に製品化されることもないと、トラウト氏は言う。
しかしMinWinは、「Windows 7」と呼ばれている次世代バージョンをはじめ、今後開発されるあらゆるバージョンのWindowsで基盤として採用される見通しだ。なお、Windows 7については、2010年に最終出荷版が投入されるということ以外、現時点で情報はほとんどない。
トラウト氏は、「MinWinは今後、あらゆるWindows製品のベースとなる予定だ。この部屋にある数多くのノートPCで稼働しているOSだけではなく、メディア・センターやサーバ、小型組み込みデバイスなどで使われるOSもMinWinベースになるだろう」と語った。
調査会社ディレクションズ・オン・マイクロソフトのアナリスト、マイケル・チェリー氏は、MinWinのようなMicrosoftの取り組みには正当な理由があると指摘する。
「わたしには、Microsoftが新しい仮想化ハイパーバイザのことを話しているように思える。近い将来、軽量ハイパーバイザ・レイヤをいくつか稼働させ、その上でOSを動かすようになるのではないか。そうだとしたら、最初のレイヤ(マイクロカーネル)を可能な限り小さくするため同社があらゆる努力を傾注するというのはよいことだ」(チェリー氏)
仮想化マネジャーとも呼ばれるハイパーバイザは、複数のOSで1つのハードウェア・プロセッサを共有できるようにするためのソフトだ。ソフト・ベースのハイパーバイザとしては、Microsoftの「Virtual PC」やVMwareの「VMware Workstation」などがある。Microsoftは、数年前からハイパーバイザについて言及し、この技術をWindowsに統合しようとしてきた。
チェリー氏は、軽量カーネルに関するMicrosoftの課題として、カーネルに組み込む機能と、安定性を高めるためにカーネルから外す機能とのバランスをとることを挙げる。「(はたしてMicrosoftは)自制心を働かせ、新しいカーネルに組み込む機能を絞り込むことができるのか。彼らにとっては難しいことのように思える」(同氏)
(グレッグ・カイザー/Computerworld オンライン米国版)
米国Microsoft
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