ブレーンストーミングでGIMPの新インタフェースを考える
Sikking氏は、ベルリンに拠点を置くMan Machine Interface Worksの指導的立場にある。彼はこの組織でオープンソースプロジェクトの作業計画を立案している。指揮下の少人数から成るインタラクション・デザイナのチームは、次期GIMPのインタフェースを計画、実装する作業を担当する。チームは2006年、コアGIMP開発者の求めに応じてGIMP Developer’s Conferenceに参加した際に結成された。この会議で、チームはGIMPの主な利用シナリオの明確化に力を貸し、それぞれのシナリオにおける使い勝手をラボでテストするタスクを引き受けた。このタスクの結果はGIMP GUIウィキを通じて一般に公開され、ユーザインタラクションの問題を扱う人々、特にグラフィックスアプリケーションに携わる人々から高い関心を集めた。
このようなテストのほかにも、同チームはコアGIMP開発者に委託されて特定のインタフェースに関わるタスクを引き受けてきた。GIMP 2.4の選択ツールと切り抜きツールの見直しもその1つである。
2.6への助走
もちろん、その時点で2.4の開発は数年目に入っていた。次の新しい開発サイクルの開始が迫っている今は、チャンスも大きいが課題も大きい。この段階から開発サイクルに関わることで、UIチームはコア開発者との協力のもとに、使い勝手のテストで明らかとなったすべての問題点に解決策を見出すことができる。
Sikking氏によると、このプロセスは分析に始まり、次いで戦術の方向性が設定され、最終的には厳密な解決策として実を結ぶ。チームの能力を信じて疑わない姿勢は見せつつも、Sikking氏は最近になって、一般からの意見に対してデザインプロセスの門戸を開く、異例の措置に踏み切った。
すべてはこの8月、Esteban Barahona氏がUI変更案のモックアップを投稿してもよいだろうかと、gimp-developerメーリングリストで問いかけたことに始まる。これがSikking氏を動かし、氏はGIMP UI Brainstormブログを開設することで要望に応じた。
誰でも自分のアイデアをモデレータのアドレスに電子メールで送信すれば、ブログに公開できる。Sikking氏のチームが決めた条件はシンプルだ。受け付けるのはイメージのみ(必要な説明はイメージ自体に含めること)、他人の案を批判する送信物は受け付けない、すべての送信物にはCreative Commons Attribution ShareAlike 3.0ライセンスが適用される。
他人の案を批判しないことは重要だ。ブログの手引きに簡潔に書かれているとおり、「議論はブレーンストーミングを台無しにする」。そのため、このブレーンストーミングに関するディスカッションフォーラムは存在しない。ブログのコメント機能もオフになっている。
ただし、以前の案を土台とする新しい案の提出は許されている。Sikking氏がUIのブレーンストーミングを始めた理由の1つに、アイデアがたくさん集まることによって創造性が刺激され、さらに別のアイデアが生み出されるという期待がある。「来るものは拒まず。ブレーンストーミングのルールにさえ従っていればね。どんなものでも、別のアイデアのきっかけになりえます」
9月9日のブログ開設から、寄せられたモックアップの数は100件に迫る。Sikking氏によれば、これまでにルール違反のため却下された案は20件ほど。却下の理由で最も多いのは、イメージではなくテキストを送ってきたものと、他のアプリケーションのスクリーンショットをそのまま送ってきたものだ。
基本ルールに反しないが不適切にイメージを借用した案(以前の案より自分の案が優れているとして両者を並べたようなもの)については、Sikking氏は訂正を求める。だが、基本ルールを満たさない案は断りなく却下される。
プロセス公開の利点
これまでに投稿された案をざっと見てみると、多くの同じテーマが繰り返し現れていることがわかる。本当に独創的なアイデアは多くない。実際、プログラムとの対話に新しい方法を導入するよりは、単に見栄えにこだわっただけのものが多い。
それでも、これは非常に魅惑的な試みである。また、統制されたラボでの実験やアンケート調査では生み出されないがブレーンストーミング・プロセスでは見つかる宝石がある。提案は完全に自由意志によるものであり、その発想は実際に現場でアプリケーションを利用する本物のユーザから寄せられる。それに、UIデザインのプロセスほどオープンソースの精神と調和するものが他にあるだろうか。
Linux.com 原文