GIMPはそろそろ分割が必要?
最近、Ubuntu Art Talkのフォーラムにおいて、GIMPと、Adobe Photoshopに似たインターフェイスを持つライトウェイトなアプリケーションPixelの賛否について議論が行われている。Pixelは、オープンソースではないが、処理速度と操作性に優れ、機能もGIMPより豊富で、主要なすべてのプラットフォームで利用可能なシェアウェアだ。
興味深いことに、こうした議論の多くでGIMPのGUIが取り上げられている。どうやらユーザは、GIMPの機能不足よりもインターフェイスそのものに苛立ちを感じているようだ。
これまで開発者たちはGIMPの外観を改善しようとしてきた。そうした取り組みの1つだったGimpshopイニシアチブは、メニューのレイアウトを変更しただけで、GIMPのインターフェイスのほかの部分には手を加えなかった。もっと面白い取り組みとして、OpenUsabilityのWebサイトにはインターフェイス再設計のプロジェクトが存在した。GIMPの次期リリース版に採用できるアイデアをコミュニティから募集するというものだった。
このOpenUsabilityのイニシアチブは幸先良く立ち上がった。議論の場には、世界中の設計者から途方もない数の意見が寄せられた。しかし残念なことに、設計者と開発者が根本的な部分で合意できなかったため、この共同作業は途中で終わってしまった。設計者がGIMPの抜本的な見直しを求めたのに対し、開発者はインターフェイスのわずかな変更にしか関心を示さなかったのだ。その結果、非常に独創的なアイデアが、真剣に検討されることもなく捨てられてしまった。設計者と開発者を隔てるこうした深い溝のためにこのプロジェクトは失敗し、設計者たちのコミュニティからも見放された。フォーラムはまだ存続しているものの、有意義な活動は何ヶ月もの間ずっと行われていない。
GIMPの再設計イニシアチブが期待はずれの結果に終わったことで、GIMPプロジェクトは、ユーザのニーズをほとんど聞くことなく、閉ざされた独自の道を歩み続けることになった。
オープンソースコミュニティは、Web開発とデスクトップパブリッシングに対して別々のプログラムを求めている。これらの分野では要求されるツールや機能が異なるため、プログラムはそれぞれの基準に不足なく対応する必要がある。
AdobeがWebの設計者向けにImageReadyを、デスクトップパブリッシングの利用者向けにPhotoshopを開発したのは数年前のことだ。GIMPプロジェクトを再び活性化する方法の1つは、このAdobeの方針にならって、今後GIMPが目指す先を分岐させることではないだろうか。つまり、GIMPのプログラムを2つに分割して、1つはWeb開発を、もう1つはオフセット印刷を扱うということだ。
前者に相当するWeb指向のエディタでは、Webベースのファイルフォーマットだけをサポートして、ロールオーバーエフェクト、メニュー、アニメーションボタン、フォトアルバムの作成とバッチ処理ができればよい。このWebエディタの開発にはNvuを利用することができる。そうすると、Nvuが生成するコードは、このWebエディタ上で扱えるようになる。このWebエディタとNvuは、FireworksとDreamweaverのように密接に連携して動作するのが理想的だ。
オフセット印刷を扱う後者のプログラムは、CMYK、LAB、Duotoneといったカラーモードをサポートする複雑な画像編集向けに最適化する必要がある。これらの機能が組み込まれることで、開発者はこのプログラムをScribusと連携させることができる。Scribusは、ページレイアウトとデスクトップパブリッシングを行うためのオープンソースのプログラムであり、これまでずっとビットマップエディタを求めてきたという経緯がある。
現在の状況は、こうしたGIMPの分割に取り組むのにふさわしいといえる。その理由の1つが、Pixelのような新興のアプリケーションがLinuxプラットフォームをターゲットにしつつあることだ。もう1つの理由は、使い勝手のよいオープンソースの画像エディタを世の中の設計者たちが必要としているからだ。
こうした現状にもかかわらず、GIMPはユーザの期待には応えないという設計思想のために不利益を被っている。もしGIMPの開発者たちがこの状況を打開できなければ、GIMPはPixelのような新興アプリケーションによってその存在価値を奪われてしまうだろう。
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