LinuxのGIMPでPhotoshopプラグインを実行する

グラフィックアート分野の人々が、Adobe Photoshopに頼らざるを得ないためにWindows環境から抜け出せずにいる、という話はLinux支持者ならご存知だろう。PhotoshopにはGIMPにない機能が備わっているからだ。また、重要ながらもまったく異質の問題として、インストール済みの(有償の場合が多い)サードパーティ製Photoshopプラグインの存在がある。しかし、この問題は意外に簡単に解決できるかもしれない。

解決の鍵になるのは、GIMPハッカーのTor Lillqvist氏が開発したpspi(PhotoShop Plugin Interfaceの略)というソフトウェアだ。これはGIMPのプラグインで、GIMPとPhotoshopプラグイン間のブリッジとして作用する。つまり、Photoshopプラグインには、GIMPの動作が、完全にPhotoshopと同じものが実行されているように見えるのだ。pspiは、Photoshopプラグインが想定しているPhotoshopのメニューおよび関数のフックを提供し、GIMPのメニューシステムおよび拡張機能との連携を行っている。

このソフトウェアブリッジが実現できたのは、AdobeがPhotoshop Software Development Kitをサードパーティの開発者に提供してプラグインの開発を奨励しており、これらのプラグインの多くは必要な機能をすべて内部に持っているからだ。特に、ほとんどのプラグインは、WindowsやMacのネイティブのツールキットを呼び出す代わりに自らユーザインタフェース(UI)の描画を行っている。このため、Photoshopプラグインは、クロスプラットフォームに仕上がっており、Mac中心のグラフィック分野において、重要なコスト削減の役割を担っている

一方、欠点は(予想はつくかもしれないが)、こうした自家開発のUIの多くが、一般に認められたユーザビリティの基準に反した、華美にして奇抜、目障りなものになっていることだ。しかし、最新のPhotoshopプラグインを利用したければ、この欠点には目をつぶるしかない。

Windows版pspiとライセンスの問題

2001年にLillqvist氏が最初に開発したpspiは、GIMPのWin32移植版のためのものだった。2004年12月には、Win32固有のフックに代わるWINEと呼ばれる、Linux環境で実行可能なpspiのハッキング版の可能性がgimpwin-usersメーリングリストで取り沙汰された。WINEを使った方法は、Webブラウザやメディアプレイヤーではうまく機能していた。Photoshopプラグインもまた、ブラウザのプラグインやマルチメディアコーデックと同様、DLLとして実装されている。あとはこの難題への取り組みに興味を持つプログラマの登場を待つばかりだったが、なかなかそうした人物は現れなかったようだ。

2カ月前、Lillqvist氏が、この取り組みにMukund Sivaraman氏が名乗りを上げたことをブログに書き込むと、再びpspiが話題になった。そして、彼はLinux向けにpspiのコンパイルを試し、成功させた。

こうして技術的な課題は克服されたが、まだ1つ問題が残っている。pspiをコンパイルするには、AdobeのPhotoshop SDKを所有していなければならないのだ。Photoshop 6以前のバージョンでは、AdobeはこのSDKをWebとパッケージの両方で提供していたのだが、 Photoshop 7のリリースから、事前にAdobeの承認を得なければSDKを入手できなくなった。しかもこの承認は個別の審査を通して行われる。Photoshop 6のSDKはまだ利用できるが、そのライセンス条項では再配布のためのコピーは認められていない。そのため、pspiをコンパイルしたければ、合法的に購入したPhotoshop 6以前の製品からSDKを入手する必要がある。

Linux版pspiを試す

しかし、この障害の影響を受けるのはpspiをコンパイルしたい人だけである。コンパイル済みのpspi自体は自由に再配布できる。先月、Lillqvist氏はブログを更新して、Windows、SUSE Linux 10、Ubuntu 5.10、Fedora Cora 5の各バイナリをダウンロードできるリンクを用意した。

Linuxユーザは、pspiをダウンロードし、インストールして、ことの次第を自ら確かめることができる。WebにはPhotoshopプラグインを無償または安価で提供しているサイトがいくつか存在する。Lillqvist氏が述べているように、市販のプラグインの多くはデモの形で利用でき、それらの収録CDを付録にしたグラフィックアートの雑誌もたくさんある。

WindowsからLinuxへの乗り換えに抵抗する理由として、サードパーティ製Photoshopプラグインが使えないことを挙げる人の割合はきわめて低い。しかし、プロのアーティストは流行の先端を行く存在なので、彼らのLinuxへの乗り換えは、その他の主流派の意識を劇的に転換させるきっかけになる可能性がある。いずれにせよ、その転換の障害になっているものがまた1つ消えたのはすばらしいことだ。

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