OpenOffice.org Impress対Microsoft PowerPoint Office対決 第2戦

 スライド・プレゼンテーションを作る機能を比べた場合、OpenOffice.org(OOo)ImpressとMicrosoft Office PowerPointではどちらが優れているのだろうか。筆者が2年前に比較したときの結論は、どちらにも他方にはない機能があるというものだった。それでは、現在の最新バージョンではどうだろうか。それを見るために、Microsoft Office 2007とOpenOffice.org 2.3をインストールしてスライドショーを作ってみた。驚いたことに、差は前回よりも開いていた。圧勝と言うほどではないが、その差は明らかである。

 Office 2007のPowerPointでは、プレゼンテーションを作り始めるときの方法が旧版とはいくつかの点で異なっている。その一つは、Microsoft Wordにある「要約の作成」機能がデフォルトのインタフェースから外れたことだ。お陰で、文書のアウトラインに含まれる見出しからスライドショーを簡単に作成することができなくなった。Microsoft TechNetでは、「要約の作成」機能が削除されたのは「あまり使われない」ためと説明されている。だが、私としては、OOo Writerにある要約機能がバージョン2.3にも引き継がれたことに感謝したい。

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OOo Impress

 もう一つの違いは、冒頭のウィザードがなくなったことだ。今では誰でもスライドショーの作り方を知っているのだから、この削除は妥当だろう。一方のImpress 2.3では、利用者が初心者であろうと熟練者であろうと、スライドショーの基本デザインを簡単に設定できるオープニング・ウィザードで始まる。もっとも、不要なら「完了」ボタンをクリックすれば打ち切ることはできる。

 PowerPointには背景の選択から始めるという初期の頃から続く習わしがあったが、2007ではこれもなくなり、白紙のスライドが開くようになった。背景は「デザイン」タブで選択する。用意されている背景が極めて落ち着いた雰囲気のものである点も合わせて、この変更により見栄えよりも内容に関心が向くようになるかも知れない。一方、Impressはといえば、この点についても前版を踏襲している。

 こうしたPowerPointの変更が余計なものだとすれば、Impressに分があると考えるのが普通だろう。しかし、最新版になっても、Impressに用意されている背景は素人っぽいものが2種なのに対して、PowerPointには20種の背景が用意されているだけでなく、そのほかの背景をオンラインで入手するためのリンクも付いている。この利便性だけでもPowerPointの方が優れている。

判定:PowerPoint。Impressでもテンプレートをオンラインで入手することはできるが、そのためのリンクをOOoに組み込むことぐらいはできるはずだ。

編集ウィンドウの構成

 PowerPointは、Microsoft Office 2007のほかのアプリケーション同様、メニューとツールバーの機能を兼ね備えたリボンを採用している。一方、Impressは最新版でも従来型のメニューだ。構成がわかりにくいWordのリボンと違い、PowerPointのリボンはよくできている。しかし、5分もすれば、Impressのメニューと大差なく感じられてくる。単に違うというだけだ。

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MS PowerPoint

 PowerPointではメニューの下に編集ウィンドウがあり、全スライドのサムネールを表示するペインと編集中のスライドを表示するペインから構成されている。Impressのデフォルト・ビューでは、これに加えて右側に「作業」ペインがあり、マスター・ページまたはスライド・レイアウトのいずれかを切り替えて表示することができる。この2つの機能は、PowerPointでは「デザイン」リボンまたはスライドの右クリック・メニューに配置されている。

 Impressの3ペイン・ビューに対する評価は、使っているモニターと作業習慣によるところが大きいだろう。全画面表示または19インチ以上の広いモニターを使っているのであれば便利だが、そうでない場合は中央のスライドが小さくなりすぎて編集しにくい。しかし、PowerPointとは異なり、左右のペインを切り離してフローティング・ウィンドウにし任意の場所に移動させることができる。また、中央のペインに表示するビューをタブで変更することができ、PowerPointよりも使いやすい。

判定:Impress

スライドのレイアウトと切り替え

 スライドのレイアウトと切り替えは、プレゼンテーションの基本だ。用意されているスライド・レイアウトはImpressの20種に対して、PowerPointは9種。数字の違いにはImpressのレイアウトがPowerPointよりも細分化されているという事情もある。しかし、選ぶには便利だ。

 スライドの切り替え効果は、PowerPointの58種に対してImpressは55種。PowerPointの方が若干多い。しかし、PowerPointが真に優れているのは、それが視覚的に分類されている点だ。Impressでは文字で示されているだけだ。編集中のスライドで切り替え効果の確認ができるのは、どちらも同じ。

判定:引き分け

描画ツール、図、グラフ

 以前のバージョンでは、図解や組織図を描くためのツールについては、OOo Drawのエンジンを使っていたImpressの方がPowerPointより優れていた。しかし、最新版では、前版の機能をほぼ踏襲しているImpressに対して、PowerPointは「挿入」リボンに「Illustration」ペインと「Text」ペインを搭載しほぼ同様の機能を実現している。

 スプレッドシートの情報からのグラフ作成については、逆に、新しい作図サブシステムを導入したOOo 2.3がPowerPointに追いついた。どちらも、プロ級の外観を持ち編集も容易。違いはグラフに適用される配色だけだ。

判定:引き分け

 PowerPointは10年以上前から作表ツールを備えていた。一方、Impressは最新版にもない。PowerPointと同様、スプレッドシートやテキスト・ファイルを読み込んで表を作ることはできるし、矩形を並べて表にすることもできるが、いずれにしても、なぜそんなことをしなければならないかという疑問は残る。

判定:PowerPoint

動画とスライド

 2年前にスライドショーを比較したとき、Impressがサポートしていたサウンドと動画の形式はWAVE、AIF、AUだけだった。その後、リリースを重ねるたびにサポート範囲を広げ、現在はQuickTime、MIDI、MPEG、WAVEをサポートしている。MP3オーディオ・フォーマットはまだ使えないものの、PowerPointとほぼ互角にまでなっている。

 しかし、Impressは、いまだに一連のスライドを通してサウンドを再生したりナレーションを直接録音したりすることができず、この点では依然として遅れている。

判定:PowerPoint

スライドショーの準備

 ImpressもPowerPointも、完成したスライドショーのタイミングを確認したり、一部のスライドを抜き出してカスタムショーを複数作ったりすることができる。しかし、どちらにも他方にはない機能を持っている。たとえば、PowerPointではショーを再生する際の解像度を選択でき、Impressではマウスをポインターとして使ったりOOo Navigatorを利用して離れたスライドに移動したりすることができる。

 こうした独自機能の中で最も重要なのは、おそらく、プレゼンテーションに必要なファイルをすべてコピーするPowerPointの「Package for CD」機能だろう。もちろん、Impressでも、ほかのユーティリティーを使えばプレゼンテーションに必要なすべてのファイルを簡単にコピーすることはできる。しかし、PowerPointではそれ自身の中でコピーすることができるのだ。この方が利便性は高く、僅差で軍配はPowerPointに上がる。ちなみに、この機能を実装するには明らかにプロプライエタリー・フォントの配布問題が伴うが、Impressで同じ機能を搭載する場合はフリー・フォントだけを使うことでこうした問題を容易に回避することができる。

判定:PowerPoint

対戦結果

 ImpressもPowerPointも、スライドショーの作成に十分な機能を持っている。特定の機能について、一方が勝ったとしても、ほとんどの場合、その差はわずかだ。

 しかし、Impressは、改善の内容も速度も期待に応えていない。中でも問題なのは、一部改善は見られるものの、サウンドの使用で常に後塵を拝している点だ。

 比較を通じて明らかになったのは、PowerPointはほぼ完全な機能を備えており、グラフィックスなど、散発的に見られたImpressに劣る機能も、その多くが最新版Impressに追いついているということだ。

 もちろん、機能以外にも目を向ければ、ImpressがPowerPointを超える点もある。PowerPointとは異なり、Impressのデザインはオフィススイートのほかのプログラムに近い。さらに重要なのは、フリー・ソフトウェアの中では明らかに最先端のスライドショー・プログラムだという点だろう。とはいえ、OOo Writerとは異なり、ImpressがMicrosoft Office PowerPointに肩を並べるのは、まだ先のことになりそうだ。

Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト、Linux.com and IT Manager’s Journalに多く寄稿している。

Linux.com 原文