Impressスライドでの直接録音を可能にするeVoice
eVoiceを使用するには、事前にJavaをインストールしておく必要がある。なおFedoraに同梱されているIcedTeaバージョンはそのまま使えるが、Debianに付属するGCJバージョンは利用できない。また基本的な装備として、各自のマシンにマイクロフォンを接続しておく。これらの準備が完了したらOpenOffice.orgの機能拡張サイトからeVoiceをダウンロードし、Tools -> Extension Managerを用いてインストールする。この処理が正常に終了するとeVoiceメニューが追加されると同時に、アイコンが1つだけ表示されたフローティングツールバーが利用可能となるはずである。
eVoiceを使用開始するには、まずサウンドカードへのマイクロフォンの接続を確認してから、eVoice -> Insertメニューを選択する。これにより操作ダイアログが表示されるが、その構成は画面上部に、Record、Play、Stop、Pauseの操作ボタン、中央部に録音時間のインジケータ、下部に録音終了時に使用するOKおよびCancelボタンという配置になっている。
Insert -> Movie and Soundメニューで追加するサウンドクリップと同様に、eVoiceで録音したデータもカレントスライドの右端にグレーアイコンで表示される。これをクリックするとオブジェクトハンドルが現れるので、スライドのデザイン時に邪魔になるようであれば、任意の場所にドラッグで移動しておけばいい。なおスライド上映時にこのアイコンは非表示化される。
eVoiceでは1つのスライドにつき1つの録音データしか保持できず、2回目以降の録音では既存データの上書きが行われる。録音結果を確認するには、ダイアログのPlayボタンをクリックするか、Slide Show -> Slide Showを選択すればいい。
eVoiceにおける最も一般的な用途は、スライドにナレーションを付けるというものだろう。その場合はサウンドクリップの再生時間に合わせてスライドの表示時間を調整する必要があるが、この処理はSlide Show -> Slide Transition -> Advance Slide – > Automatically Afterを選択して、該当する時間を秒単位で指定すればいい。また展示会などのデモンストレーションでは無人状態でのエンドレス再生をさせたいこともあるだろうが、そうした操作はSlide Show -> Slide Show Settings -> Autoにより実行可能であり、このケースではリピートのインターバルを指定しておく。
こうした用途はeVoiceの利用法のごく一部に過ぎない。これはユーザにその気があればの話だが、複雑な操作を伴うAudacityなどの専用ソフトの代わりに、eVoiceを簡易的な録音ツールとして利用することも可能なのだ。例えばよりクリエーティブなスライド作成に挑戦したいなら、マイクロフォンの接続部に二股ジャックを取り付けて、効果音やBGMとするサウンドをMP3プレーヤなどから同時録音するということが考えられる。サウンドクリップとして使う内容やその再生時間を慎重に吟味する手間はかかるだろうが、こうした手法を駆使することにより、プレゼンテーションの背景で印象的なBGMを奏でさせ続けるという演出を施すのも不可能ではない。
BGMをより効果的に利用するにあたってのヒントは、できるだけ処理能力の高いコンピュータを用意した上でSlide Show -> Slide Transition – > Modify Transition – > SpeedをFast
に設定して、スライドの切り替え時間を短くしておくことである。またスライド間のサウンドのつなぎ具合によっては、Modify Transition -> SoundをNo Sound
にしておくべきかもしれない。特にバックグラウンドでミュージックを鳴らす場合は、曲の継ぎ目に合わせる形でスライドの表示時間を区切った方が自然な流れとなるはずだ。スライドにBGMを付けるのはかなり時間のかかる作業であるし、タイミングの取り方も大変だが、それだけの手間をかける価値のあるプレゼンテーションに挑むような場合は、検討してみる価値のある演出になるはずだ。
事前に録音されたサウンドクリップに話を限れば、その取り込み機能をImpressが装備したのは数世代前のバージョンに遡ることができる。とは言うものの標準状態のImpressにサウンドの直接録音やCDトラックとのシンクロ機能は実装されていないため、この種の操作においては依然としてMicrosoft PowerPointに水を空けられ続けている感は否めない。しかしながら今日ではImpressにeVoiceをインストールすることで、PowerPointとの距離を大きく縮めることが可能となったのだ。エンドユーザに過大な負担をかけることなくImpressでの録音機能をシームレスに追加実装するeVoiceの存在は、プレゼンテーション作成者にとって必須の機能拡張という立場を確立したと評していいだろう。
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Bruce Byfieldは、コンピュータジャーナリストとして活躍しており、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿している。