新米ITマネージャが知っておくべきこと

 新米ITマネージャとしてあなたは、「卓越した専門家」というほどの期待は受けないにしても、チームを統率してプロジェクトを効率良くこなすということは期待されるようになる。仕事に詳しくなるまでしばらくは大目にみてもらうことのできる猶予期間が与えられるかもしれないが、新米(あるいは新任)のITマネージャになるということは、積極的にリーダーシップを取らなければならないということを意味する。これは裏方としての作業に慣れている人にはプレッシャーに感じることかもしれない。しかし責任者になってしまったのなら、仕事をうまく始めるために以下に挙げるようなことをすると良いだろう。

計画を立てる

 他の人々があなたに期待しているだろうと思われることの他にも、自分自身が個人的に目指す目標を明確に持ち、その両方を実現するよう励むようにしよう。これまでに内部者としてすでに関わってきたのではない場合には、初期の「偵察活動」を行なって、新しい環境の良い点、悪い点、そして「厄介な点」について把握しよう。すべての情報を手に入れたら、その情報を基にして自分に期待されていること(プロジェクトの目標や、最初の時点で他の人々が期待していること、職務内容など)に応えるための方法についてのシンプルで現実的な計画をまとめる。また早いうちから順調に進めるためには、上司やチーム内の人々と親しくなる方法についてのアイデアも重要だ。

 計画には、停電が起こった場合や、重要なシステムが機能しなくなった場合や、チームのメンバーが突然辞めた(あるいは単に仕事をやり抜くことができない)場合や、プロジェクトの予定が狂った場合などにどうすべきかを書いた「もしもの場合」リストも必須だ。多くの場合、IT関連の問題が起きても早急に効率良く解決されているのは、それらが前もって検討されてとことんまで考え抜かれているためなのだ。

チームをよく知る

 マネージャや監督を務めるということは、つまるところは、他の人々と一緒にプロジェクトに取り組んで完了させるということだ。あなたが内部的に昇格した場合であってもなお、今度はあなたが上司になることで、知っておくべきことはさらに増えたことになる。そのためチームのメンバーの性質を簡単に確認しておこう。例えば、チームに新鮮なアイデアや便利なアイデアをもたらすことのできる創造力のある人は誰かや、割り当てられた課題を時間通りに完全に仕上げることを任せることができる人は誰かなどを把握しておくと良いだろう。

 逆に、惰性だけで仕事をしている人や、さらに悪いことに能力のない人については、早期に明確にしておくようにしよう。同時に、チームのメンバーの経歴を確認して、必要に応じて指導や追加のトレーニングを与えるようにすると良いだろう。またコミュニケーションを取って、仕事に関連のある情報を与えるようにしよう。なおこのことは、チームのメンバー全員にもあなたに対して行なってもらうようにする。あなたがチームに情報を与えなければ、チームもあなたに情報を与えてくれない可能性は高いだろう。また、内部的なユーザや外部的なクライアントなどチーム外部の人々に、あなたの新しいチームについての評判を忘れずに確認するようにしよう。そうして得た情報を利用すれば、チームが改善すべき点を把握することができる。

同僚をよく知る

 好むと好まざるとにかかわらず、組織における政治的な駆け引きはマネージャにとっては避けることはできないというのが現実だ。そのため同僚たちとの密なコミュニケーションや関係を確立しておくことはきわめて重要だ。とは言え、予算や上司に認められる度合いや昇進などにおいて張り合う、ある意味ライバルでもある同僚もいるかもしれない。このことは組織にとっては健全なことであり、必ずしもゼロサムゲームではないのだが、同僚と十分に親しくなっておいて、組織にはつきものである政治的な駆け引きに対してアンテナを張っておく必要がある。同僚間での対等な信頼関係をこつこつと築き上げて同盟を結びつつも、同時に、同じくマネージャである同僚に影響されて早まった決断をしてしまうなどといった深刻な間違いをおかすことがないように気を付けよう。また、同僚をけなすような発言や噂は絶対にしてはいけない。そのようなことをすると通常は、自分に返ってきて自分が苦しむことになる。

上司をよく知る

 上司は、あなたがプロジェクトを成功させるために必要とする多くのこと、すなわちサポート、予算、情報、承認、昇格などの提供元だ。そしてあなたが上司から提供されたそのようなものをうまく活用することができれば、上司は良い印象を持つということも事実だ。上司とあなたの関係は重要であり互助的であるため、上司と早期に親しくなってうまく協力し合うことは両者にとってプラスになる。ただし、この関係がうまくいくかどうかはあなたにかかっているということに注意しよう。したがって上司に対して情報を提供し続けて、上司が問題の不意討ちをくらうことがないことを徹底し、誠実な態度でやり取りを行ない、締切を常に守るようにしよう。

 また上司が好むやり方――例えば報告は電子メールで十分なのか、どれくらいの頻度で対面で話し合うべきなのかなど――を確かめておいて、常に時宜を得たフォローアップをしよう。あなたとあなたのチームが堅実な作業を行ない、予算内でスケジュール通りに課題を完了することができ、全体的に「決められた通り」にうまくやることができれば、上司は良い印象を持つのだということを心に留めておこう。この点では、ずっとあなたをサポートして指導してくれた上司の功績も正当に認めるようにしよう。また当然のことながら、上司に対して批判的な意見を公に言うことはどんなことがあっても避けるようにしよう。同僚のことを悪く言うのと同じように、そのようなことをすると自分に返ってきて自分が苦しむことになる。

尊敬される

 プロフェッショナルなIT環境では通常は、技術的な能力が高いと明らかになったときや、チームをうまく統率したときや、プロジェクトがうまく完了したときに尊敬される。一般的に、最初の内は上司/同僚/チーム/顧客などからの尊敬を獲得しやすいものだが、そのような都合の良い期間はすぐに終わってしまう。この期間を賢明に利用しなければならない。というのも、良い第一印象を与えるためのチャンスは二度とはないためだ。とは言え、完璧な人などいるわけはない。そしてマネージャや監督者がそのことを認めて少しの手助けを求めることができたときに、非常に尊敬されるという場合もある。

体系化する

 知っておくべきことをチームが正確に把握できるように、明確なガイドラインを作成しよう。例えば、必須の労働時間や、遅刻したり休みを取る必要が生まれた場合にどうすれば良いのかを定義しておく。また追加の作業が必要となった場合のために、追加の作業に対する報酬についても明確にしておこう。さらに、プロジェクトの生産性を高めるように作業量の負担のバランスを考えよう。このことは新しいチームにあなたがフェアだとみなされるために重要なポイントだ。

 チームのメンバーに対しても顧客に対しても、通常の場合に仕事の受注や優先順位付けがどのように行なわれるのかについてと、作業完了の締切がどのように設定されるのかについて明確に説明しておこう。特に、顧客からの好意的な評価と不満との両方がどのように取り扱われるのかをチームのメンバーに徹底的に理解させておこう――積極的に顧客を尊重するための方法について、不明瞭な点がないように明確にチームのメンバーに対して示しておこう。またチームのメンバーには日常的に、会社や組織に義務付けられていること以上のフィードバックや必要なカウンセリングを提供するようにしよう。

目標とマイルストーンを設定する

 うまく行っているグループでは、進捗と成功度を測定するための基準が重要な役割を果たしている。そのような測定基準は、問題の早期発見にもつながり、問題の早期解決にもつながりやすい。技術的なプロジェクトでは、進捗を測るための明確な基準が最初からあるとは限らないが、それでも便利な測定基準を収集して進捗を把握することができるように、マイルストーンやベンチマークを確立することが重要だ。例えばシステム全体の完成はまだ先のことであったとしても、特定の「機能」についてはプロジェクトの開始後1ヶ月でテスト可能な状態になっているように命ずることなどができるだろう。進捗のレビュープロセスは、適切なチームメンバー(当然ながら上司も含む)と協力して、意味のあるものを確立するようにする。目標やマイルストーンを設定する際には、その実現の成否によってあなたの信頼性が問われることになるため、楽観的な見通しをして過剰な約束をしないように気を付けよう。繰り返すが、あなたの信頼性がかかっているのだ。

チームを認めて育てる

 プロジェクトの作業のほとんどは、あなた一人の手によるのではなく、あなたの新たなチームによって行なわれる。チームが成し遂げる高品質の成果というものは、決して自動的に得られるものではなく、マネージャや監督者としてのあなたの賢明な努力を通してはじめて得られるものなのだ。したがって、褒めたり報酬を与えたりすることと、不十分な結果に対する心からの建設的な批評を与えたりすることを、機敏に行なうようにしよう。また、個人的な成果とチームによる成果を両方とも認めて評価するようにしよう。

 革新やチームのメンバーの個人的な成長を促進するために、高品質な指導やサポートを提供できるようになろう。あなたのチームのメンバーがプロフェッショナルとして成長するチャンスが制限されてしまうと、独創的な解決法が生まれるのが阻害されるだけでなく、個人のやる気もチーム全体のやる気も阻害されてしまう。そこでプロジェクトの期間中は、定期的に「ピザの昼食会」や同様のくだけたチームの集まりなどで、人間的な付き合いをすることを検討してみるのも良いかもしれない。

賢明に信用する

 あなたの新たな部下/同僚/上司を信用するということは、基本的にはそのようにすべきということであり、盲目的に良しとすべきことではない。あなたのチームのコミュニケーションは大切だが、何か違うと「感じた」場合には自分の直感を信じるようにしよう。信頼に影響を与える恐れがあるような、あいまいな状況を明確にするためには、適切な知識を持つと思われる複数の人物に補足の質問をするようにしよう。これにより、信憑性が高いと考えられる別の角度からの見識を得たうえで、必要な対処策を立てることができる。なお(おそらく専門用語だらけの)技術的に非常に高度な回答を得た場合には、普通の言葉で言い換えてもらうようにお願いして、答えを追求し続けることを躊躇しないようにしよう。

 信頼は、ベンダとの関係においても同じように重要だ。ベンダは通常、サービスや製品を売ろうとしているため、自分たちはあなたのニーズに最適なものを知っているという説得に主な焦点を当てている可能性がある。本当に最適なものを知っているかどうかは事実であることもあればそうでないこともあるため、ケースバイケースで検証する必要がある。というのも不適切なベンダを選んで不適切な選択をしてしまえば、予算的にもあなたのキャリア的にも高くつく可能性があるためだ。

歩きまわる

 マネージャや管理者は、活動的である必要のある仕事だ。人々やプロジェクトについての最新情報を常に把握ために、オフィスを出てチームメンバーと話し合ったりする一方で、自分自身の仕事もこなす必要がある。プロジェクトが期待通りに進んでいることを確認して、必要な場合には励ましを与えたりするために、進捗情報は十分に手に入れるようにしよう。ただしその目的が、細部まで管理しすぎる「マイクロマネージメント」だとみなされることがないように注意しよう。一方で、四六時中あなたの監視や意見を求めてくる人々に対しては、隠された意図があるのかもしれないので気を付けよう。そのような人々は、与えられた課題に対して自信がなく不安を感じていたり、会社での政治的な駆け引きに関わっていたりする可能性もあり、これらの度が過ぎるとプロジェクトに支障が出る可能性がある。

 いったんしっかりとした仕事の体系、十分なコミュニケーション、協力的な仕事環境を確立してしまえば、あなたのチームの有能なメンバーたちに仕事の合間に報告をしてもらうことによって、常に現況を把握することができるようになるものだ。

Ken Myers博士は米海軍を退役後、ノースウェスト航空常勤副社長を務め、応用組織科学を長年研究する科学者。現在はオンライン大学Touro University Internationalでビジネス運営/IT管理のCore Professorを務める。

Zev Feldbergerは米陸軍のプロジェクトに取り組む主任ソフトウェアエンジニア。現在、オンライン大学Touro University Internationalで情報技術管理の修士課程に在席している。

ITManagersJournal.com 原文