IBM、Cellプロセッサ搭載ブレードの新モデルを投入――標準42Uラック構成で25.8TFLOPSを発揮
QS21はサイズも小型化されており、1シャーシに最大14枚を格納できる。既存のQS20は最大7枚だった。また、QS21はさまざまなブレード環境に対応しており、ワークロードを最も効率的に処理するプラットフォームに割り当てることができると、IBMのCellシステム製品ライン担当マネジャー、ポーラ・リチャーズ氏はアピールした。
「例えば、Intelのクアッドコア・プロセッサやAMD製プロセッサを搭載したブレードと、Cellブレードを組み合わせて使いたいといったケースはよくある。基本的なワークロードのために標準的なブレードを使い、ミッション・クリティカル性が高い特殊なアプリケーションをCellプラットフォームで運用するためだ。QS21は、こうした場合に対応できる」(リチャーズ氏)
QS21の販売開始は10月の予定だ。3Dレンダリングのようなビジュアル・コンピューティング・タスクや、圧縮/暗号化といったスピード重視のジョブをこなす業界がターゲットとなる。
QS21に搭載されるCell Broadband Engineプロセッサは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のゲーム機「PlayStation 3」向けとして、IBM、ソニー、SCE、東芝の4社が共同で開発した。
QS21は2個の3.2GHz Cellプロセッサを搭載し、デュアルギガビットEthernetポートを備え、OSに「Red Hat Enterprise Linux 5.1」を採用する。1つのBladeCenter Hシャーシに最も高密度に格納した場合は、6.4TFLOPSの浮動小数点演算性能を実現し、標準的な42Uラックでは25.8TFLOPS以上の性能を発揮する。
リチャーズ氏は、QS21は汎用プラットフォームを目指していないと強調する。「この製品は、金融アプリケーションやデジタル・ビデオ監視、医療画像処理、さらにはデジタル・メディアやエンターテインメントといったスピードが重視される高負荷のワークロードに最適だ」(同氏)
IBMは、性能を高めたCellプロセッサ搭載BladeCenterにより、いわゆるハイパフォーマンス・コンピューティングと呼ばれる非常に専門的な分野での市場開拓をねらっている。インサイト64のアナリスト、ネイサン・ブルックウッド氏も、汎用プラットフォームとQS21との“棲み分け”をこう説明する。
「Xeon(Intel)やOpteron(AMD)を搭載するBladeCenterは汎用コンピューティング、PowerPC搭載BladeCenterはUNIX環境向けだ。これに対し、Cell搭載BladeCenterは、信号処理や画像解析などの計算集約型アプリケーションでの利用を想定している。これらはそれぞれ守備範囲が異なっており、QS21もQS20からポジショニングを大きく変えていない」
IBMはQS21とともに、「IBM SDK for Multicore Acceleration Version 3.0」も発表した。この開発キットは、Cell搭載マシンに対応したアプリケーション開発プロセスの効率化を目的としている。同SDKの発売は10月19日、QS21の発売は10月26日に予定されている。
(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)
米国IBM
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提供:Computerworld.jp