データセンターの管理に問題あり――5割近くがコンフィギュレーション情報を把握せず――ITIL適用の遅れが一因

 多くのデータセンターで物理インフラのコンフィギュレーション管理に問題があることが、米国アパーチャー・リサーチ・インスティチュート(ARI)の調査で明らかになった。調査対象データセンターの約半数は、コンフィギュレーション情報の管理プロセスを確立できていないという。

 ARIはアパーチャー・テクノロジーズから派生した企業で、データセンターの調査を業務としている。ARIは今回、銀行や自治体、保険、医療ケア、データ・サービス、小売り、通信など多岐にわたる業界から100の企業を選び、そのデータセンターを対象に調査を行った。

 データセンターでは、システムの設置スペースや電力供給方法、冷却装置などを物理的に変更することは珍しくないが、今回の調査において、そうしたコンフィギュレーションに関する情報の変更を把握しきれていないと答えた回答者は全体の49%に上っている。

 調査対象となったデータセンターの管理者らは、複数台にわたるシステムのコンフィギュレーション情報を一括して管理するのはほぼ不可能だと答えている。すべての情報を1台のシステム上でドキュメント化していると答えたデータセンター管理者は、わずか6%にすぎなかった。

 ARIでは、基本的な情報管理能力が欠如している理由の1つとして、IT管理・運用業務のベストプラクティス「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」の適用が遅れている実情を挙げている。

 「ITILはIT組織から大きな支持を得たが、サーバに適用されるレベルで止まってしまった」と、ARIの市場戦略担当バイスプレジデント、スティーブン・イエレン氏。データセンターにITILを運用している組織は29%にすぎないと同氏は説明する。

 ITILを適用しているデータセンターでも、その3分の1近くはコンフィギュレーション管理が不十分な状態に陥っているという。イエレン氏は、IT部門とデータセンター管理者の間にある組織的な溝が、こうした状況を招いているのではないかと指摘した。

 「IT部門とデータセンター施設間の不均衡が、ITILをもってしてもカバーできない状況を生み出したのではないか。確実なコンフィギュレーション情報が得られないと、データセンターの停電や容量計画の失敗につながるリスクが大きくなってしまう。こうした状況は早急に改善する必要がある」(イエレン氏)

グリーン化への取り組みがITIL適用を促す

 把握しているコンフィギュレーション情報の90%は正確だと考えているデータセンター管理者は、全体の38%にすぎない。一方、調査対象者の62%が、コンフィギュレーション情報の10%が不正確だと信じている。

 イエレン氏は、データセンターが環境に与える影響への関心が高まることが、データセンター管理者にITIL採用を促すきっかけになると考えている。

 「環境にやさしいデータセンターを目指す風潮が強まるなか、管理者も何らかの対策を考案せざるをえなくなっている。電力使用量は、今やストレージと同じくらい重要な関心事だ。古い機器の廃棄や電力消費の分析といったグリーン化への取り組みを経験することで、組織は変更管理プロセスの精度を引き上げ、 ITILを真剣に検討しようと思い始めるだろう」(イエレン氏)

(Computerworld オンライン英国版)

米国アパーチャー・リサーチ・インスティチュート(ARI)
http://www.aperture.com/about/aperture_research_institute.php

提供:Computerworld.jp