SOAの導入を成功させるための10のステップ――SOA導入プロジェクトの経験者から聞き出した秘訣を一挙公開
エリック・クノール、オリバー・リスト
InfoWorld米国版
経験者だから知りえる
導入・構築の勘どころ
InfoWorld米国版では、過去2年間にわたり、SOAの導入に携わった多数のアーキテクトやシステム開発者、会社役員などにインタビューを行ってきた。彼らはその導入過程において数々の難題に直面し、試行錯誤を経て、サービスの統合が容易にできるようになったり、プログラム・コードの再利用性が高まったりといったSOAの基本的なメリットを得ることに成功している。本稿では、こうした人々の経験談と業界の技術者やアナリストの助言を集め、SOAを計画、構築、導入、管理するために必要な10のステップとしてまとめた(図1)。以下、順番に紹介していこう。
STEP 1
初期導入時の規模をできるだけ小さくする
SOAを導入しようとする大抵の企業は、ミッション・クリティカルなレガシー・アプリケーションの重要な機能やデータに対して、他のアプリケーションからアクセスできるようにしたり、複数のアプリケーションにおいて重複している機能を共通のサービスに置き換えたりすることを最初に考えるだろう。むろん、これらの作業によって、さまざまなメリットを得ることができるのだが、最も効果的なのは、合理化する必要のあるビジネス・プロセスを探す作業から始めることである。
税務処理ソフトウェア・ベンダーである米国H&Rブロックのシニア・アーキテクト、スコット・トンプソン氏は、この点について次のように語る。「われわれは最初に、自分たちが解決しようとしているビジネス上の問題が、社内に存在する他のプロセスによって解決できるかどうかを考えるべきである」(トンプソン氏)
ベルギーに本社を構えるコンサルティング会社アクセリア・コンサルティングのビジネス・アーキテクト、ジャン・ミシェル・ヴァン・リッペヴェルデ氏もトンプソン氏と同様に、「SOA導入時に一番大事なことは、トップダウンの視点でビジネス・プロセスを見直すことである」と指摘する。同氏は、そうした観点からSOAの導入に取り組んだあるリース会社の成果について次のように語った。「見積り依頼のプロセスに、契約書の自動生成プロセスを組み合わせた結果、以前は数日かかっていた処理が、分単位で終了するようになった」
トップダウンの視点からビジネス・プロセスを見直した場合、企業幹部とIT部門が思い描くSOAのプロジェクトは、スケールの大きなものになりがちである。しかし、SOAの導入は小規模な取り組みから始めるべきである。Webサービス・ベンダーである米国AmberPointのマーケティング担当バイスプレジデント、エド・ホルスト氏は、ITシステムの大規模な改革プロジェクトがいくつも頓挫するのを見ており、「SOAの導入を一気に進めようとすれば、成功率が低くなる」とアドバイスする。
STEP 2
関連部門とのミーティングを設ける
ビジネス・プロセスを再構築するという作業は、決してITスタッフだけで済まそうとしてはならない。ビジネス上の利害関係者を全員集め、既存のプロセスを見直し、これを整理するべきである。多くの場合、どのようにプロセスを再構築するのかを考える作業は、ビジネス・マネジャーやそのスタッフに任せることができるはずだ。そうすれば、ITマネジャー/スタッフは、周囲の意見を参考にしながら、プロセスをどのように自動化すれば大きな効果が得られるかを考えることに専念できるだろう。
航空機メーカーである米国ロッキード・マーティンのシニア・システム・エンジニア、ティモシー・ヴィバート氏は、政府機関向けサービスを提供するシステムの構築過程で、ホワイトボードを活用したミーティングにかなりの時間を費やしたという。「われわれは、すべてのビジネス・プロセスの分解作業が終了してから、サービスの構成について考え始めることにしている。それと同時に、再利用できそうなプロセスも探しておく。次に、作業範囲を定義し、ミーティングへの参加者を決定する。ミーティングでは、サービスのユースケースの作成、各種ITリソースやデータのマッピング、データ・フローの取り決めなどを行う。適切な計画を立てるためには、これらの手順を繰り返し行わなければならない」(ヴィバート氏)
SOAの導入前に検討しなければならない内容は、条件により異なるため、ミーティングにどの程度の時間が必要であるか、一概に言うことはできない。しかし、ヴィバート氏は、「SOAの導入経験が多少なりともあれば比較的短期間で済むが、初めての取り組みの場合は、数カ月とは言わないまでも、数週間要する場合もあるだろう」と語る。