ソフトウェア企業への転身を目指すCisco――ウェブエックス買収を機に新ビジネス・モデルに注力へ

 米国Cisco Systemsがソフトウェア企業への転身を目指している。カリフォルニア州アナハイムで今週開催された年次コンファレンス「Networkers at Cisco Live 2007」で、同社CEOのジョン・チェンバース氏は、ソフトウェア事業に注力する企業を目指すことを明らかにした。

cisco_ceo_thumb.jpg
「Networkers at Cisco Live 2007」で基調講演を行った米国Cisco SystemsのCEO、ジョン・チェンバース氏

 昨年の年次コンファレンス「Networkers」でも話題に上ったが、Ciscoは一事業としてソフトウェア開発を手がける考えを以前から示している。ただし、うわさになっていた「Cisco IOS(Internetwork Operating System)」ソフトウェアの細分化および個別パッケージ化については、チェンバース氏は今回のNetworkersコンファレンスで明確に否定した。

 Ciscoによると、今年3月に32億ドルで買収したビデオ会議アプリケーション・ベンダーのウェブエックス・コミュニケーションズから獲得した、ユニファイド・コミュニケーションやコラボレーション、Web 2.0関連の製品ポートフォリオを活用し、ソフトウェア戦略を推し進めるという。

 チェンバース氏は、今年のNetworkersコンファレンスでさまざまなセッションに出席し、記者たちの前で次のように語った。「われわれには、ソフトウェア企業へ転身するという明確な目標がある。だが、IOSを細分化しようとは思っていない」

 同氏は昨年、ソフトウェアの販売がハードウェアに大きく左右されることを避けるため、ソフトウェア戦略を進化させる必要があると語ったが、この発言が憶測を呼び、CiscoはIOSをハードウェアから切り離して個別にパッケージ販売する気ではないかとの声が、一部の顧客から上がっていた。

 チェンバース氏は今回のNetworkersコンファレンスで、そうした計画はないと明言するとともに、「ウェブエックスの買収により、得意分野以外の市場もターゲットにできる新しいビジネス・モデルをCiscoは手に入れた」と語った。

 詳しい内容は明かさなかったものの、チェンバース氏は「買収の結果、これまでは考えもしなかった分野に手を伸ばせるようになった」と述べている。

 このほかにも同氏は、米国はブロードバンドの定義を改めなければならないと語っている。米国の場合、最低でもキロビット単位の速度が出ればブロードバンドに含まれると見なされるが、チェンバース氏はこの下限基準を100M~1Gbps程度へ引き上げるべきとの考えを示した。

 「米国でブロードバンドとして提供されているネットワークの通信速度は、アジア諸国のダイヤルアップ速度と同等だ」と同氏は語り、今後5年から10年の間に、米国でも100M~1Gbpsのサービスが広く行き渡るようにする必要があると主張した。

 さらに同氏は、過去数四半期にわたりCiscoが苦戦を強いられてきた米国エンタープライズ市場の支出傾向が落ち着き、「ソフトランディング」の兆候が見られる地点に到達したと話した。同社は、第4四半期および2007会計年度の収支報告を数週間以内に行う予定だ。

 チェンバース氏は、顧客との関係を変える取り組みがCisco社内で進行中であることも明らかにした。同社の顧客からは、コンサルティングやプロフェッショナル向けサービスを拡充してほしいなどの要望が寄せられているという。

 「“次世代の顧客関係”を確立する取り組みには、社内用の開発コード名も付けられている。われわれは、顧客とのかかわり方を刷新しようと努めている」(チェンバース氏)

 自身の将来に関しては、向こう3年から5年はCiscoにとどまり、任期中はCiscoの野望をアグレッシブに追い求めていきたいとした。ちなみに、政府要職への就任を示唆されたのは名誉なことだが、そうした道を選ぶ可能性は当面はないという。

 「成功を収めた人間には、それを社会に還元する義務がある。だが今は、ほんとうに会社の仕事で手いっぱいだし、そもそもこれが楽しくてしかたがないのだ」(チェンバース氏)

(ジム・ダフィー/Network World オンライン米国版)

米国Cisco Systems
http://www.cisco.com/

提供:Computerworld.jp