レビュー:Linux版Google Desktop──旧来の簡素なデスクトップ検索
ようやくLinux版を出してきたGoogleだが、それでもまだLinuxユーザの扱いは十分とはいえない。WindowsやMac OS XのGoogle Desktopにはあるのに、Linux版にはない機能がいくつか存在する。例えば、Windows版Google Desktopには、ガジェットやプラグインのついたサイドバーがあったり、企業向けエディションが用意されていたりするのだが、Linux版は旧来の簡素なデスクトップのままである。
Google Desktopのインストール
Google Desktopは、とても簡単にインストールできる。Ubuntuの「サポート対象」バージョンになっているのは6.10だけだが、入手したDebianパッケージを私がインストールした先はUbuntu 7.04システムだった。インストール終了後、Google Desktopにより、直ちにファイルの処理と、ローカルファイルやWeb閲覧の履歴などに含まれるインデックス情報の構築が開始された。
AMD Athlon XP 2600+と1GBのRAMを備えたシステムでのインデックス作成は、いつ終わるとも知れないものだった。私の場合、Google Desktopですべてのデフォルトディレクトリを検索するように設定を行った。この検索対象には、約1.2GB分のファイルがあるhomeディレクトリ、 /usr/share/info、 /usr/man、 /usr/share/man、 /usr/local/share/man/、 /usr/local/man、 /usr/X11R6/man のほか、約75GBものデータの入った外付けUSBディスクが含まれる。
インデックス作成を開始すると、「アイドル」時間で5.5時間かかるとの見積もりがプログラムから提示された。Google DesktopのFAQには、コンピュータがアイドル状態のときにインデックス作成が行われると記されているが、作業中でもわずかなパフォーマンスヒット(パフォーマンスの低下)であれば ― Vimから数秒かけてファイルを保存しているときであっても ― インデックス作成が行われることがわかった。最近のコンピュータでは、パフォーマンスヒットがあまり目立たないためだろう。なお、インデックスの作成は、パフォーマンス上の問題やその他の理由でいつでも一時停止できる。
開始から2時間以上もたっても、「Index Status」ページには、インデックス作成の完了まであと約5時間と表示されていた。この時点で私はベッドに入った。寝ている間にGoogle Desktopが私のデータのインデックス作成を進めてくれることを期待したのだ。目が覚めてベッドから出ると、確かに作業は進んでいたがまだ終わってはいなかった。結局、インデックス作成には15時間以上もかかった。
「Index Status」ページはよくできている。データのスキャンにかかる時間の推定値や、コンテンツの種類ごとにインデックス作成済みのファイル数が表示される。具体的には、電子メールメッセージ、ファイル、メディアファイル、Web閲覧履歴に分けて、スキャンされた件数が表示される。また、直近のアイテムがスキャンされた時刻も表示される。
Google Desktopを使ってみる
Google Desktopの動作中は、ブラウザのGoogle Desktopページを使って検索を行ったり、Ctrlキーを2回続けて押すことで検索ボックスを表示させたりできる。私は、後者のショートカットキーが気に入っている。覚えやすいし、既存のデスクトップのショートカットキーと競合することもない。
検索語を入力すると、オンラインのGoogle検索の実行結果とよく似た形で、検索結果がFirefoxのGoogle Desktopページに表示される。Google Desktopにはブラウザリンクが組み込まれているため、検索語が例えばディスク上のファイルにマッチすると、「open file(ファイルを開く)」リンクだけでなく、フォルダを開くリンクも表示される。これにより、GNOMEのNautilusやKDEのKonquerorでそのフォルダが開かれる。
新しいファイルやWebページなどのドキュメントは、すぐさまインデックスに追加される。ファイルに変更を加えた場合も、ほとんどすぐに新しいバージョンが検索に現れるようになっている。
Google Desktopでは、情報がすばやくインデックスに追加されるだけでなく、データの捕捉も行われる。ということは、Google Desktopを使って削除済みのファイルを元に戻すこともできるはずだ。これを確かめるために、いくつかのキーワードを含んだHTMLファイルを削除し、そのキーワードを使って検索を行った。思ったとおり、ファイルシステム上からは消えてしまっているのに、削除したHTMLファイルが表示され、このファイルをGoogle Desktop経由で開くことができた。
この動作には、良い面もあれば悪い面もある。誤ってファイルを削除した場合には、Google Desktopを使ってそのファイルを回復させることができる。こちらのケースは文句なしにすばらしい。だが反対に、自分が意図的に削除したファイルを、他の誰かがGoogle Desktopを使って復活させてしまう可能性もある。
「高度な機能」
Google Desktopには、いわゆる高度な機能を有効にするオプションが用意されている。この名前は、ちょっと誤解を生みやすい。というのも、「高度な(advanced)」機能というのは、ユーザのレベルに関係したものだと期待してしまうからだ。だがGoogle Desktopでは、「実行する検索件数、結果の確認にかかる時間、このプログラムの改善に使用するアプリケーションレポートのようなサマリ情報」など、むしろ「非個人的な」情報がコンピュータから収集されることを意味している。
このオプションはGoogle Desktopの開始時に表示されるため、「そうか、高度な機能なら使えるものもあるだろう」と思って有効にした多くのユーザは、これらの機能が開発元のGoogleにデータを送ることを許可するものに過ぎないなどとは思いもしないだろう。私としては、Google Desktopにデータ収集のオプションが含まれることには何の問題も感じないが、こうした呼び方によって、実際の機能の内容を理解させないままユーザに利用させる姑息な手段にも思える。
Google DesktopとBeagleの比較
Google開発陣はGoogle DesktopのLinux版に力を入れてはいるものの、すでにLinuxユーザの手元には、Beagleの実用的なデスクトップ検索プログラムが存在する。
BeagleもGoogle Desktopもブラウザ履歴(Beagleの場合は拡張機能使用時)や何種類ものローカルファイルからインデックス作成を行う。どちらも、データからインデックスを作成してファイルを探しやすくする優れた方法であるという点に違いはない。だが、両者とも一部のファイルが検索対象に入っていないようだ。例えば、BeagleもGoogle Desktopも、Pidgin(旧Gaim)やXChatによるチャットログに対するインデックス作成は行われていないように見える。チャットログに含まれた語を検索しても、何もヒットしなかったからだ。全体としては、BeagleとGoogle Desktopの検索結果の間にそれほど大きな食い違いは見られなかった。
システムにかかる負荷は、Google Desktopのほうが少し大きいように感じる。一方、ここ1年、Beagle実行中にシステムの速度低下を感じたことはなかった。
ただGmailとの連携となると、Google Desktopのほうが優れているのは明らかである。Gmailアカウントを持っていれば、デスクトップ検索対象にGmailメッセージを含めることができる。これは、Gmail画面を開いたりGmailからメールをダウンロードしたりしなくても、メールが検索できることを意味する。
Linux版Google Desktopはまだベータ版なので、正式リリース前にはパフォーマンスがおそらく改善されるだろう。デスクトップ検索を探しているなら、ダウンロードして試すとよい。