Ubuntu Developer Summitレポート:X.orgの強化、ドライバ論議、装飾効果

X.orgは、UDS(Ubuntu Developer Summit)で非常に注目され議論された。不思議ではない。Ubuntuはデスクトップに焦点を合わせたディストリビューションなのだから。バイナリ・ドライバは、このサミットのホットな話題となった。また、Ubuntu開発者は、もっと堅牢なX.org用設定システムをどう提供するか、Xに問題が起きた場合にどう対処するかについても、意見を交わした。

現在、Ubuntuは多数のハードウェアで”一応動いて”いる。しかし、X.orgに不具合が起きると、回復不能なエラーに陥る可能性がある。開発者は、すべてのハードウェアで高い確率で動作するモードに縮退する方法について議論し、GRUBブート・オプションを提供して”セーフ”モード(VESA 800×600/256色など)を起動できるようにすることで、X.orgの設定を安定したモードで試せるようにするという案を話し合った。

設定ツールの有力候補の1つは、SUSEのSaX2である。SaX2は、X設定を扱う包括的なツールとして ─ 特にデュアルヘッド(2系統ディスプレイ)構成において ─ 定評がある。

X.orgの強化予定

もっとも、これは暫定的な解決策でしかないようだ。X.orgのKeith Packard氏はX.orgのディスカッションに数回顔を出し、このような問題点はX.org 7.3までに多くが解決されると発言した。彼によると、X.org 7.3ではxorg.confさえ不要になる。実行時に完全な自動検出が実行されるのだ。X.orgは、新しいデバイスに関する情報をD-Busから動的に受け取るようになる。また、フォントをこれまでより動的に作成するため、fontconfigへの移行も予定されている。

Keith Packard talks about upcoming X.org releases
今後のX.orgリリースについて語るKeith Packard氏 ─ クリックでビデオ再生

計画が順調に運ぶなら、Feisty+1がリリースされる頃にはX.orgは設定をオンザフライで変更する機能を持つようになる。X.orgの開発サイクルは、Ubuntuのサイクルと同期していない。通常Ubuntuのリリースは4月と10月だが、X.orgの年2回のリリースはUbuntuリリースの狭間に巡ってくる。

つまり、X.org 7.3のリリースはFeistyとFeisty+1の間に巡ってくると予想されるので、Ubuntu開発者が暫定的な解決策を実装する必要があるのはFeistyについてだけである。1年もたたずに不要になるツールにUbuntu開発者が多大な労力を傾けるのは、合理的と言えない。

Packard氏によると、7.2はドライバの修正と移植性の向上を中心とする”おとなしい”リリースである。7.2のリリースが迫っていることから、開発者の関心は7.3リリースに移っているという。

入力デバイスの動的構成機能を強化するだけでなく、X.org X11R7.3では出力サポートの機能も強化するとPackard氏は語った。X.orgは、モニタなどの追加をオンザフライで実行するホットプラグ・サポートを強化するため、カード・ベンダと協議しているという。プレゼンテーションにLinuxを利用し、X.orgの動作しているラップトップをプロジェクタに接続して”動かす”必要があるユーザには朗報である。

バイナリ・ドライバ

UbuntuがFeistyでバイナリ・ドライバをデフォルトで使用すると発表されたが、これにはユーザから多くの反対のコメントが寄せられUbuntuメンバーの反応も似たようなものだった。もちろん、一方ではNvidiaなどのバイナリ・ドライバが使用されないという理由で、Ubuntuやその他のディストリビューションは一般のユーザに向かないと批判する意見もある。ドライバに関しては、すべてのユーザを満足させる落としどころはない。

いずれにしても、Shuttleworth氏はこれは目新しいポリシーではないと指摘する。Ubuntuはこれまでワイヤレス・デバイスにはバイナリ・ドライバを使用し、デフォルトで有効にしていた。Wi-Fi接続経由でのオンライン利用を設定されたユーザにとって、これはオンラインを利用し、インストール時にアップデートを取得できる唯一の手段である。

ただし、Shuttleworth氏はこうも言う。「実際には、Feistyでは、プロプライエタリのドライバを使用していることを警告し、代替ハードウェアの存在を教えることを予定してます…そういうわけで、次のハードウェアを決定するため、調査しておくのがよいでしょう。NvidiaやATI、あるいはプロプライエタリ専用Wi-Fiカードのベンダがこのやり方を大歓迎するとは期待してませんが、当然こういったベンダにとって一番簡単な解決策は自社ドライバをオープンソース化することです」

一番簡単? 多分、それは違う。多くのユーザが忘れていることだが、ATIのような企業が自社ドライバのすべての知的財産権を保有しているとは限らない。FeistyにおけるX.orgをテーマとするセッションでPackard氏が指摘したが、ATIがドライバをオープンソース化できる可能性は低いものの、デバイスのドキュメントをオープンソース化することでオープンソース・コミュニティがATIカード用ドライバを改良できるようにしようと同社は動いているらしい。

Quinn Storm talks about X.org
X.orgについて語るQuinn Storm氏 ─ クリックでビデオ再生

Nvidia製カードの持ち主は、3D対応オプションの機能強化を遠からず手にできる見込みだ。オープンソース版のnvドライバは2Dには対応しているが、3Dには未対応である。そして、プロプライエタリ版Nvidiaドライバは、ライセンスの点でもセキュリティの現実的な不安の点でも、ひどい代物(Bad Thing™)であると広く意見は一致している。NouveauプロジェクトがNvidiaカード対応のオープンソース版3Dドライバを開発している理由がそれだ。

Packard氏によると、このプロジェクトはまだ初期段階にあるが、X.org 7.3リリースには間に合う見込みである。その場合、大方の意見の一致するところでは、NouveauはバイナリNvidiaドライバと同等ではないにせよ、3Dデスクトップ効果には十分なパフォーマンスを発揮するという。

Shuttleworth氏は、Ubuntuでプロプライエタリのドライバを使用することが、残りのフリーソフトウェア・スタックを体験する機会をユーザに与えるには最もよい方法だと考えている。「3D機能は必需品なのか、それともあればうれしい程度のものなのか? 思うに、これは私たちがこれまで活用しなかった重要なハードウェア機能です…もうじきこれら[バイナリ・ドライバ]を使用できるようにして、フリーソフトウェアの開発者がそれを土台に新しいものを作れるようにします」

装飾効果がなければ始まらない

Shuttleworth氏が言う新しいものとは、もちろん、CompizプロジェクトとCompizが取り組んでいるものを指す。

Ubuntu Feistyでは、ほぼ確実にデスクトップ効果がデフォルトで使用されるが、問題はBerylとCompizのどちらが採用されるかだ。開発者はBerylに傾きつつあるようだが、英Canonicalの代表とUbuntu開発者が非公開の会議を今週開き、UDSでのディスカッションを詳細に検討し、どちらをFeistyに採用するか決める予定である。

BerylはCompizから派生したプロジェクトだが、主席開発者のQuinn Storm氏は、BerylプロジェクトのメンバーがCompizプロジェクトに敵対心を抱いていないこと、そしてCompizを”葬ろう”とはしていないことを確信している。とはいえ、Berylの開発者はCompizが閉鎖的で外部の開発者の協力を受け入れないと感じており、独自のペースで開発を進めるためにCompizから分かれる必要があったと思っている。

Storm氏によると、今のBerylとCompizの関係はUbuntuとDebianの関係に似ているという。「もう少し新鮮なことを、多分もう少しワクワクすることをしたかった、それが理由で袂を分かったんですよ。CompizにはCompizなりの目標があり進む道があります。それはこちらも同じです」

Storm氏によれば、Berylの最大の目標の1つは、ユーザの要望に耳を傾け、「開発に携わる者とそうではない者の線引きをあいまいに保ち、このプロジェクトに参加して協力したい人は誰でもそうできるようにする」ことだ。

Beryl開発者は、水曜日の午前にデスクトップ効果のデモを実施した。いつものブルブル揺れるウィンドウや回転する立方体の効果のほか、最小化するとウィンドウが焼け落ちる”燃え”機能(4月1日にデフォルトで有効にしたいとShuttleworth氏は冗談を飛ばした)、ウィンドウの全体または一部の拡大機能、カラー反転機能、その他の画面を読みやすくする機能のような補助ツールが披露された。ユーザ補助にも役立つことがデモで実証されれば、デスクトップ上で装飾効果を使用することを望む声はいきおい強くなる。

Storm氏によると、Beryl 0.2のリリースは来年2月を予定する。デフォルトの複合/ウィンドウ・マネージャにならなかったとしても、Ubuntuリポジトリからの入手は可能だ。

NewsForge.com 原文