オープンソースVoIPコンファレンス「AstriCon」が開催
来場者の1人は、「企業の通信担当者やオープンソース開発者、ベンダー、起業家といった幅広い層の関係者がAstriConに足を運んだ。これは、ニッチ市場やオープンソース・プログラミングの趣味的な領域にとどまっていたオープンソースIP電話が、ITの主流として広く普及しつつあることを示している」と指摘した。
「私は3年前の第1回AstriConにも参加したが、そのときはかなり狭いテーマを扱ったオープンソース開発者のコンファレンスだった」と、大手電力会社サザン・カンパニーのITアーキテクト、アーノルド・ソロモン氏は述べた。同氏は、今回のAstriConでは、オープンソースIP電話についての情報収集を目的とした企業のIT担当者が来場者の約3分の1を占めたと見ている。
ソロモン氏はAstriConで、サザン・カンパニーが実運用やテストを行っているAsteriskベースのシステムの一部を紹介した。例えば、同社は古いシーメンス製PBXとBlackBerryサーバを統合し、電話システムがユーザーに、重要なボイスメール・メッセージがシステム上に残っていることを電子メールで通知できるようにしたという。またソロモン氏は、SIPサーバとAsteriskを使って、多数の直通社内通話(DID)番号を別の施設内で使えるようにするというシナリオについて述べた。
「われわれは、膨大な番号を数秒で移行する一方、社内音声ネットワークでこれらの番号による通話が引き続きできるようにする方法を実証した」とソロモン氏。サザン・カンパニーは、内線PBX番号への通話をAsterisk SIPサーバ経由で転送するSIP番号変換を利用して、この方法を実現した。ソロモン氏は、この技術をハリケーン・カトリーナのような災害時に利用すれば、多数の従業員の勤務場所を臨時の施設に変更し、そこで通常の番号をそのまま使えるようにすることができると説明した。
「多数の電話をPBXベースのシステムからAsteriskベースのシステムに移行した企業が、多いかどうかはわからない」とソロモン氏。「だが、われわれのようにAsteriskのテストや実装を行っている企業にとっては、これらのシステム開発を行えることがSIPの価値だと考えている。われわれがアバイアやノーテル、シスコなどのメーカーに、各社の製品間での相互運用性の確保を要望しているのはそのためだ」
AstriConでは、ベンダーによる製品/サービスの発表も行われた。フォナリティは、Asteriskベースの小規模オフィス向け電話システム・アプリケーションの新版「Trixbox 2.0」を発表した。Trixboxは、Asteriskに加えてLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP/PERL)をベースとした完全なオープンソース製品。Trixbox 2.0ではセットアップと構成のための新しいGUIインタフェースが導入されている。またTrixbox 2.0は、MySQLとPHPを使って業務システムやWebアプリケーションと統合できるほか、併用するソフトウェアを最小限にして基本的なAsterisk電話サーバとして構成することもできる。
また、英国ミューザー・コミュニケーションズは、ユーザーがクリックして通話できる機能をWebサイトに追加できる企業向けのVoIPサービス「Corraleta」を発表した。ミューザーはAsterisk IP-PBXサーバ用のCorraletaソフトウェア開発キット(SDK)も用意しており、企業はこれを使って、クリック通話機能を自社で運用するWebサイトやローカル・イントラネット・アプリケーションに統合できる。Corraletaサービスは、ユーザー企業のWebサイトとミューザーのクリック通話サービスを連携させるもので、企業はWebサイトに、営業やサポートの電話番号、あるいは代表番号などへのVoIP通話ができるボタンを掲載できる。
VoIPサービス・プロバイダーのボックスボーンもAsterisk関連サービスを発表した。発表されたのは、Asteriskサーバ間の通信に使われるAsterisk固有のIAX(Inter-Asterisk eXchange)プロトコルに対応したVoIPトランキング・サービス。Asteriskユーザーはこのサービスにより、IP回線とIP-PBXとを直接接続し、低コストのVoIPネットワーク経由でPSTN(公衆交換電話網)や他のAsteriskユーザーにアクセスできるようになると、同社は説明している。
(フィル・ホッホムート/Network World オンライン米国版)
提供:Computerworld.jp