長期サポート(LTS)版となる「Qt 5.9」リリース

 The Qt Companyは5月31日、ユーザーインターフェイス(UI)及びアプリケーション開発フレームワークの最新版「Qt 5.9.0」を発表した。サポート期間が3年の長期サポート版となる。

 Qt 5.9は、2012年12月に公開したQt 5系の最新版。1月に公開されたバージョン5.8に続くものとなる。本バージョンはバージョン5.6以来の長期サポート(LTS)版との位置付けで、5.10公開後もサポートが継続されることになっている。バージョン5.6以降2000以上のバグが修正されたほか、C++11互換のコンパイラを用いることで、コードベースを新しくできたとしている。また、テストインフラに自動性能リグレッションテストを追加、Qtの性能を継続してモニタリングできるという。

 性能と安定性にフォーカスし、継続インテグレーションシステムも改善した。これにより、これまで以上の頻度でアップデートやパッチリリースを提供できるとしている。最初の1年は頻繁にアップデートを行い、その後はブランチでの変更に制約を加え、パッチリリースの間隔を少し空けるとしている。なお、Qt 5.6はサポート期間内だが、開発チームは5.9へのアップデートを推奨している。

 コアでは、qfloat16とQOperatingSystemVersionの2つのクラスを用意、GPUの活用やOSとアプリケーションのテストなどが強化されるという。Qt NetworkではHSTS(HTTP Strict Transport Security)をサポート、QNetworkAccessManagerでのHTTPS接続のセキュリティが改善するという。NFCサポートのQt NFCも、Android向けを強化し、Qt Web Socketsでは外部のTCPソケットを利用できるようになった。

 Qt GUIでは、OpenGLシェーダープログラムのバージョンにコンパイルできるというシェーダーキャッシュ、Compute ShadersがQOpenGLShaderとQOpenGLShaderProgramなどでサポートされるようになった。

 QMLでは、ガベージコレクタを書き直し、メモリの消費量などを改善した。JavaScriptコードの性能がこれまで以上に予測できるようになったという。QMLキャッシュインフラも新しくなった。

 アプリケーションフレームワークのQt Quickでも、Qt GUIで加わったOpenGLシェーダーキャッシュを利用できるようになった。Qt WebEngineではChromium 56ベースとなり最新のChromiumビルドシステムGNに切り替えた。Qt Liteで利用する設定システムが新しくなり、グラフィックアーキテクチャも更新した。

 Qt Locationは多数の機能が加わった。地図の回転や角度変更に対応し、タッチでも操作できる。複数のMapエレメントのスタックのサポートを強化し、OpenGLベースの地図レンダリングエンジンを用いる新しいプラグインMapboxGLをサポートするプラグインがプレビューとして加わった。

 新しいモジュールとして、ゲームパッドコントローラーのインプットをC++とQMLアプリケーションに提供するQt Gamepadが加わった。一方、Qt Scriptは非推奨となった。

The Qt Company
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