Linuxカーネル3.18リリース、OverlayFSのサポートやDisplayPort経由でのオーディオ出力サポートなどが行われる
Linus Torvalds氏は12月7日、最新のLinuxカーネル「Linuxカーネル3.18」のリリースを発表した。overlayFSのマージなどの強化を含むが、3.17で発見されたロックアップ問題は未解決のままだ。
10月初めに公開されたLinuxカーネル3.17に続くもので、「Diseased Newt」という開発コードを持つ。7回のリリース候補(RC)を経ての正式版となった。
Linuxカーネル3.18の大きな特徴としては、OverlayFSがマージされた点がある。OverlayFSはファイルシステムに別のファイルシステムを透過的にマージする機構で、たとえば読み出し専用のファイルシステムに書き込み可能なファイルシステムを重ねることで、読み出し専用ファイルシステム上のディレクトリやファイルへの書き込みや更新が可能になる。これにより、コンテナの管理が軽減されるなどのメリットがあるという。
また、BtrfsではRAID復旧サポートの強化やfsyncの修正などが加わり、Samsungが開発したF2FS(Flash-Friendly File-System)のサポートも強化した。XFSやExt4でもバグ修正などが行われ、プロセス間通信(Inter-Processor-Communication、IPC)制御ドライバとクライアント/プロトコルドライバのためのフレームワーク(Mailbox framework)の導入も始まった。
ネットワーク関連では、パケット転送など性能の強化が図られたほか、アプリケーション向けにネットワークパケットの高速フィルタリングを行うBerkeley Packet Filter(BPF)の拡張版eBPFでは、64ビットビルド上でeBPFプログラムのJITコンパイルが可能となった。
XenではSCSI向けの準仮想化ドライバ(PVSISI)を利用できるようになったほか、大規模なサーバーでのサスペンドとリジュームの高速化も図られている。ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)や電源管理機構も改善され、ARM64/AArch64ではPCIをサポートした。
NVIDIA製GPU向けドライバ「Nouveau」ではDisplayPort経由でのオーディオ出力がサポートされた。また、R600など、古いATI製グラフィックカードにおいて、ビデオデコード時にGPUベースのハードウェアアクセラレーションが可能になった。なお、新しいAMDのGPUではすでにこれらはサポートされている。RadeonでのリクロッキングやUserptrのサポートも改善された。ゲームコントローラ「Razer Sabertooth」のサポートやWacomタブレットのサポート強化も行われている。
そのほか、ClangでLinuxカーネルをコンパイル可能にする試みも進められており、GCC固有の拡張であるVLAIS(Variable Length Arrays in Structs)を利用している個所を減らす作業などが行われているという。これらの作業により、x86およびARMアーキテクチャにおいてはもう少しでClangでのコンパイルが可能になるという。
なお、Torvalds氏は3.17で報告された、Xenが関係していると見られるシステムロックアップ問題が本バージョンでも解決していないことも述べている。開発者らは活発にこの問題の解決を図っているが、年末の休暇シーズンもあって3.18のリリースを遅らせることはできなかったと記している。
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