Linuxカーネル3.16リリース、XFS/btrfsやARMサポートが強化される

 Linus Torvalds氏は8月3日、Linuxカーネル3.16をリリースした。ARMアーキテクチャサポートの改善やXFSおよびBrtfsの強化、新規ハードウェアのサポート追加などが特徴となっている。

 6月にリリースされたバージョン3.15からほぼ2か月での新版リリースとなる。正式リリースまでには7回のRC(リリース候補)版がリリースされており、また今回のリリースではバージョン3.15のRC7リリースと合わせてバージョン3.16のマージウインドウを開くという試みを行っている。

 今回のリリースでの大きな変更点としては、まず近年活発に開発が進んでいるARMアーキテクチャのサポート強化がある。単一のカーネルイメージで複数のARM SoCをサポートするマルチプラットフォームサポートでは、新たにSamsungのExynos SoCなどのプラットフォームがサポート対象に加わった。また、NVIDIAのTegra K1ベースの開発ボード「Jetson TK1」のサポートなども追加されている。64ビット版ARM向けにはEFIのスタブサポートも加わっている。

 NVIDIA GPU向けのオープンソースドライバであるNouveauでは、Tegra K1 Socに組み込まれているKeplerベースのGPU「GK20A」のサポートがNVIDIAの協力によって追加されたほか、Kepler GPUの再クロック設定が実験的にサポートされた。AMDのRadeon GPU向けドライバも改善され、高速化が計られている。IntelのAtomベースSoC「Cherryview」のサポートも追加された。DellのノートPC「Latitude」シリーズの落下検知センササポートも加わっている。

 ファイルシステム関連では、XFSやBrtfsにおいて大きな変更が加えられている。XFSでは使われていないinodeを追跡するための新しいon-disk btreeやinodeアロケータの最適化といった改善に加え、コードのクリーンアップや既存機能の強化・改善も行われた。Btrfsではエクステントに対する遅延処理のインメモリトラッキングを改善するquota計算処理が改良されたほか、スタック利用の改善やデータ破損問題の修正、そのほか多くのクリーンアップや最適化が行われている。フラッシュメモリ向けのファイルシステムF2FS(Flash-Friendly File System)でも、2テラバイト以上のボリュームのサポートや性能強化などが行われている。

 また、SSDの性能を改善するマルチキューブロックレイヤーの実装「blk-mq」がほぼ完成しマージされた。これにより、レイテンシの削減や複数のCPUコアを使ったI/0負荷分散、複数のハードウェアキューのサポートなどを実現できるという。

 仮想化関連では、S390やPowerPC、MIPSプラットフォームにおいてKVMの性能強化などの改善が行われたほか、ARMプラットフォーム向けではXenハイパーバイザにおいてサスペンドやレジュームがサポートされた。

 Linuxカーネル3.16はkernel.orgなどのミラーサイトよりソースコードを入手できる。なお、来年にリリースされると見込まれているDebian 8.0(開発コード「Jessie」はこのLinuxカーネル3.16を採用する予定となっている。

kernel.org
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