Linuxカーネル3.15リリース、サスペンド/レジュームの高速化など多くの新機能を追加

 Linus Torvalds氏は6月8日、Linuxカーネルの最新版「Linuxカーネル3.15」をリリースした。サスペンドとレジュームの高速化や各種パフォーマンスの強化など、多くの新機能が追加されている。

 Linuxカーネル3.15は3月末に公開されたバージョン3.14に続く新版で、8回のリリース候補(RC)を経ての公開となった。主要な変更点としては、電源管理の強化やメモリ管理の強化、グラフィックドライバの改良などが挙げられる。

 最近のCPUには、消費電力を削減することを目的として待機時にCPUを自動的にスリープさせる機構が搭載されているが、その際に周辺機器からの入力があった場合、それに対する反応が遅延する可能性がある。これを回避するため、遅延が許されないデバイスを利用している場合にスリープを回避させる「latency tolerance subsystem(対遅延サブシステム)」が導入された。また、ドライバの改良などによってサスペンドおよびレジュームが高速に行えるようになっているという。

 32ビットUEFIを搭載するマシン上で64ビットのLinuxカーネルを動作させる「EFI mixed mode」のサポートも行われた。CPUは64ビットに対応しているにも関わらずUEFIが32ビット専用になっているようなマシンでも、64ビット環境が利用できるようになる。

 メモリ管理を改善する機構も取り込まれた。多くのメモリを使用するような処理においてページングを削減でき、性能が改善するという。CPU周りでは、IntelのXeon Phiなどで利用できる「AVX-512」命令サポートや「RDSEED」拡張命令のサポートが行われた。

 ファイルシステム関連ではext4とext5で「FALLOC_FL_ZERO_RANGE」および「FALLOC_FL_COLLAPSE_RANGE」操作がサポートされ、XFSでは「O_TMPFILE」フラグのサポートが加わった。FUSEではライトバックキャッシングが可能になり、書き込みが多い環境での負荷が軽減されている。標準POSIXロックとの互換性を保ちながらファイルロックを改善する「File-private POSIX locks」もマージされた。アトミックに2つのファイルの名前を交換できる「renameat2()」システムコールも追加されている。

 NVIDIA製GPU向けのオープンソースドライバであるNouveauでは、同社の新世代GPUアーキテクチャ「Maxwell」のサポートが始まっている。GPU faultからの復帰をサポートする機構も導入された。また、AMD製GPU向けドライバやIntel i915 GPU向けドライバも改良されている。

 そのほか、ipsetパケットフィルタリングシステムの改良やBPFベースのパケットフィルタリングコードの改良、/proc/device-tree仮想ファイルの削除、SONYの「PlayStation 4」用ゲームパッドである「DualShock 4」のサポートなども加わっている。

 これ以外に、LLVMでのビルドをサポートするためのパッチもマージされつつあるとのこと。まだLLVMでのビルドは達成できていないものの、それを達成すべく開発が徐々に進んでいるという。

 Linuxカーネル3.15はkernel.orgなどのミラーサイトよりコードを入手できる。なお、Torvalds氏は6月1日のRC7のリリース時に次期版となる3.16のマージウインドウを開いている。これは自身のスケジュールが理由だが、リリース直前の1週間に次のバージョンのマージウインドウを開いても混乱することはないだろうと予想しての決断と説明している。

kernel.org
https://www.kernel.org/