クラウド基盤ソフトウェア「OpenStack 2013.1(Grizzly)」リリース、多くの改良点を含む

 オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」の7回目のリリースとなる「OpenStack 2013.1」(開発コード「Grizzly」)が公開された。SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)やエンタープライズ技術への対応強化など、230以上の新機能を盛り込んでいるという。

 OpenStackは、米Rackspace Hostingと米航空宇宙局(NASA)が創設したオープンソースのソフトウェア開発プロジェクト。現在は独立した非営利団体であるThe OpenStack Foundationの下で開発が進められており、米Red Hat、米IBM、米Hewlett-Packard(HP)、英Canonicalなど多くのベンダーの支持を集めている。ライセンスはApache License 2.0。

 OpenStackは演算ノードを構築するための「OpenStack Compute(Nova)」やクラウドストレージ「OpenStack Storage(Swift)」、ブロックストレージ「OpenStack Block Storage(Cinder)」、仮想ネットワーク「OpenStack Networking(Quantum)」、認証管理機構「OpenStack Identity(Keystone)」、管理UI「OpenStack Dashboard(Horizon)」といったコンポーネントで構成されており、これらを利用してクラウド環境を構築できる。特定の組織内だけで利用されるプライベートクラウドだけでなく、パブリッククラウドやパブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド環境の構築も可能。

 最新版は2012年9月末に公開された「OpenStack 2012.2(開発コード「Folsom」)に続く7回目の正式版リリースとなる。各コンポーネントで新機能が導入され、合計で230以上の機能が加わった。約520人の貢献者が約7620件のアップデートを行ったという。

 Novaでは、分散クラスタ管理のための「Cells」や中央データベースへの負荷を軽減するホストアーキテクチャ「NoDB」などが加わったほか、ESX、KVM、Xen、Hyper-Vなどさまざまなハイパーバイザーのサポートや仮想化管理を改善した。ベアメタルプロビジョニング、シェアドストレージプロトコルなどの機能も新たに加わった。

 Swiftでは、クォータ機能が実装され、オブジェクトストレージ環境の成長に合わせた自動制御が可能となった。Webブラウザから直接ストレージ環境にアクセスするためのCross-Origin Resource Sharing(CORS)もサポートした。

 Folsomから追加されたコンポーネントであるCinderでは高度なスケジューラが導入され、エンドユーザーがワークロードや性能に応じてストレージを割当られるようになった。ドライバも拡充し、Ceph/RBD、Coraid、EMC、HP、IBM、Red Hat/Glusterなどのバックエンドストレージ向けドライバが利用できるという。

 Quantumでは従来提供されていたOpen vSwitchやCisco UCS/Nexus、Linux Bridge、Nicira、Ryu OpenFlow、NEC OpenFlowプラグインに加えて、Big SwitchやBrocade、Hyper-V、Plum Grid、Midonetなどのプラグインが追加された。また、複数台のサーバーにL3、L4、DHCPサービスを分散して配置できるようになるなど、可用性や拡張性が強化されている。新たにロードバランシング・アズ・ア・サービス(LBaaS)フレームワークとAPIの導入も行われ、ネットワーク企業による統合をさらに加速させるという。

 Keystoneでは、標準のPKI機能ベースのトークンフォーマットにより性能を大きく改善し、またオフラインでのトークン認証が可能になるなどの強化が加わった。

 OpenStackでは6か月のリリースサイクルを導入しており、次バージョン(開発コード「Havana」)は2013年10月に公開予定となっている。

The OpenStack Foundation
http://www.openstack.org/