Linuxカーネル2.6.35リリース、ネットワーク負荷軽減機構やH.264ハードウェアデコードなどをサポート
8月1日、Linuxカーネル2.6.35がリリースされた。RPS/RFSと呼ばれるネットワーク負荷軽減機構や新たなカーネルデバッグツールの追加、H.264およびVC-1のハードウェアデコードサポートといった新機能を含む、多くの改善が行われている。
Linuxカーネル2.6.35での新機能としては、まずマルチCPU環境でネットワークスループットを向上させる「Receive Packet Steering(RPS)」および「Receive Flow Steering(RFS)」という仕組みの導入が挙げられる。これはGoogleによって提供されたもので、送受信するパケットの処理を複数のCPUに割り当てることで負荷を分散させ、スループットの向上を図るというもの。8コアのCPUを搭載するサーバーで行ったベンチマークテストでは、2〜3倍ものスループット向上やレイテンシの軽減が確認できたという。
また、カーネルのデバッグに利用できるフロントエンドツール「KDB」も追加された。KDBはSGIによって開発されていたもので、Linuxカーネル2.6.26から提供されていたKgdbと異なり、ローカルマシン上で実行できるという特徴がある。いっぽうでソースレベルでのデバッグには対応していないため、状況に応じて利用するデバッガを選択するのが好ましいようだ。
「Memory compaction」と呼ばれる、メモリの断片化を軽減する仕組みも追加された。これは使用中のメモリページを連続した大きなページに移動することでメモリ使用効率の改善を図るというもの。ページ確保に失敗した際に実行されるほか、「/proc/sys/compact_memory」や「/sys/devices/system/node/nodeN/compact」に任意の値を書き込むことで任意のタイミングで実行させることもできる。
グラフィック関連の改良点としては、IntelのG45チップセットなどが備えるH.264およびVC1デコードのハードウェアアクセラレーション機能サポートや、2011年にリリースされると見られているIntelの新チップセット(Cougarpoint)サポート、Radeonドライバの各種改良などが挙げられる。
そのほかの主要な新機能としては下記が挙げられる。
- Btrfsでファイルシステムのキャッシュを通さずに直接I/Oを行う「Direct I/O」をサポート
- perfコマンドの改良
- multiple multicast route tablesのサポート
- L2TP Version 3(RFC 3931)のサポート
- CAIFプロトコルのサポート
- ACPI Platform Error Interfaceのサポート
Linuxカーネル2.6.35はThe Linux Kernel Archivesやミラーサーバーなどから入手できる。
Linus Torvaldsによるリリース告知メール
http://lkml.org/lkml/2010/8/1/188
kernelnewbies.orgによるChangeLog解説
http://kernelnewbies.org/Linux_2_6_35
The Linux Kernel Archives
https://www.kernel.org/