Firefoxのブックマーク機能に代わるJeteyeエクステンション

 Firefoxのデフォルトのブックマーク機能にはかなりの制限がある。対象はURLのみで、その整理にはタグとフォルダしか使えない。一方、「ブックマークを超強力化する」という触れ込みで登場したJetArkのエクステンション(拡張機能) Jeteye は、最先端のWebブラウジングにふさわしい機能を備えているという。実際に使ってみたところ、メモ帳アプリケーション Basket のコンテナに似た「jetpak」のおかげで、Jeteyeはおおよそ触れ込みどおりのものになっていた。大きな欠点はさまざまな要素を保存できる割にはデータ編集の機能が貧弱なことで、競合エクステンションの ScrapBook と比較すると特にその不便さが目につく。

 Jeteyeを利用するには、Jeteyeのサイトで登録を済ませる必要がある。このサイトがjetpakの保存先になっているからだ。登録時にはニックネームを使うか匿名にするかを選択できる。もちろん、メールアドレスには身元がわかるような情報が含まれていないことが前提だ。登録が終わると、ネットワーク接続が可能などんなコンピュータや携帯型デバイスからでもjetpakを利用できるようになる。

 このサイトでは、ほかの人が作成した公開jetpakも閲覧できる。こうしたjetpakの多くはURLで構成されており、デフォルトのブックマーク集としてすぐ利用できる。また、特定の分野に関連した要素だけを集めて、購入先の比較検討、旅行の計画、一般的な調査といったタスクを効率よく行えるようにしたjetpakも存在する。

 登録の確認メールを受け取ったら、FirefoxにJeteyeアドオンをインストールする。Firefoxの再起動後、画面右下に表示されるJeteyeアイコンをクリックするか、「ツール」->「Jeteye」を選択してJeteyeのサイドバーを開く。このサイドバーはブラウザ画面の4割も占めているので、ただちにサイズを調整する必要があるだろう。また、先ほどのサイトが利用できるようにログインも行うことになる。

 Jeteyeサイドバーは、検索が可能なjetpakのリストと、マウス操作でjetpakを作成するためのドロップゾーンで構成されている。Jeteyeの使い方は簡単で、保存したいオブジェクトをサイドバー上のドロップゾーンか既存のjetpakにドラッグ&ドロップするだけだ。テキストの場合は、選択状態にしたうえでドラッグを行う。動画の場合は、動画そのものではなくembedコードをドラッグする。画像やURL、タブについては直接ドラッグ&ドロップができる。

 オブジェクトをドロップゾーンにドロップすると、新規jetpakに対する名前の入力が求められる。また、jetpakごとに公開するか非公開にするかも指定できる。ただし、開発元のJeteyeには、何らかの問題がある公開jetpakを所有者に断りなく非公開にする権利が留保されている。また、リスト上のjetpakへのタグやサマリの追加も可能だ。

 ただし、Jeteyeには機能上の制限がいくつかある。以前は他者の公開jetpakにコメントを付けることができたのだが、悪用が目立ったためか、現在この機能は使えなくなっている。とはいえ、この機能の復活を求める声を、開発者たちは前向きに受け止めているようだ。また、オブジェクトの順序や配置の調整もできない。Jeteyeのサイトによると、こうした機能は開発中だという。

 確かにScrapBookと比較すると、全体的にJeteyeには収集したコンテンツを操作する手段が欠如している。たとえばScrapBookには、4種類のテキスト強調表示、簡単な編集、別のURLやファイルへのリンクなど、さまざまなデータの保存だけではなく、それらを編集したりリンクさせたりしてより便利なものにする機能が用意されている。これに対し、Jeteyeにはデータを保存する以上の機能はない。

 ビジネスユーザのように情報の機密性を気にするユーザは、JetArkがプライバシーポリシーを公表しているとはいえ、自らのjetpakを公開Webサイトに置くことにためらいを感じるかもしれない。Jeteyeのしていることは写真を専門に扱うFlickrやブックマークを扱うdel.icio.usとそれほど違いはなく、どんなマシンからでも利用できる便利さは否定できない。しかし、選択の処理はもちろん限られたデータ操作によってもjetpakには写真やブックマークにはない別の情報が付与されるため、プライバシーの必要性はいっそう増すだろう。公開の要素と非公開の要素を誤って同じjetpakに混在させてしまうだけでなく、複数の要素をグループ化することでブックマークの羅列だけではわからない情報が浮き彫りになってしまう可能性もあるのだ。こうした理由から、jetpakをローカルに保存できるオプションの追加が望まれる。

 Jeteyeのもう1つの問題は、Epiphanyのような他のMozilla系ブラウザや、Firefoxの商標を外したDebian用のブラウザIceWeaselで正しく動作しないことである。これらのブラウザでは、ログインもできるし、オブジェクトをドロップゾーンにドラッグすれば新規jetpakの作成画面も開く。ところが、作成したjetpakはサイドバーに表示されない。Jeteyeのダウンロードサイトに掲載されている何件かのレビューから判断すると、その他のブラウザでも同様の問題が生じる可能性がある。

 こうした問題は時間が経てば解決される。しかし、ニーズが単純で、マシンを問わずアクセスできることを重視するのなら、ScrapBookを利用した方が良さそうだ。Jeteyeの今後には期待が持てるが、次回かさらにその次のメジャーリリースを待たなければ理想的なものにはならないだろう。

Bruce Byfieldは、Linux.comに定期的に寄稿しているコンピュータ分野のジャーナリスト。

Linux.com 原文