初心者がつまずくUbuntu 10の問題点

 CanonicalのUbuntuはほかのプラットフォームの利用者が乗り換えてくるほどの大成功を収めているが、それでも初心者を困惑させるような問題点もいくつか残っている。実際、Canonicalのフォーラムを覗いてみたところ、新たな利用者の大半がつまずいている問題点、つまり長期的にUbuntuの採用を妨げている問題点が10件ほど見つかった。それらはUbuntuを利用する際のあらゆる面に及ぶが、そのいずれもが2つの特徴を共通して持っている。すなわち、いずれも「Linuxを試してみたけど使えない」と言いたくなるほどの大きな問題であり、その一方でいずれもが解決可能な問題なのだ。

ディスプレイの設定

 Ubuntuのディスプレイ検出・設定はいまだに適切に機能しない。ここでしくじってしまうとディスプレイ設定がいい加減だったりディスプレイ・モードが不適切だったりで、GUI設定ツールもあまり役に立たない。19型CRTで640×480、52Hzなどということがありうるだろうか。

 これは初心者向けフォーラムで最もよく見られるトラブルだと思われる。Ubuntu以外のオペレーティング・システムでは適切に設定されるというのに、なぜLinuxではできないのだろうか。

 設定が不適切な場合、利用者はいくつかデータを調べて構成ファイルxorg.confを変更することになるが、こういうことを利用者にさせてはならない。十分な知識や情報があったとしても一つ間違えればたちまちUbuntuの設定全体が使用不能になるからだ。

 この問題はUbuntuの弱点として広く存在し、驚いたことにUbuntu 8.04でさえ不完全だった。Ubuntuはその指導力を発揮して堅牢で信頼性の高い解決策を自ら作るか、さもなければ既存のプロジェクトを支援すべきだ。

ブート・マネージャ

 不必要に飾り立てるのは私の趣味ではない。しかし、現行のGRUBはあまりにも機能が貧弱で設定作業も複雑すぎる。

 それに引き替え、Smart BootManagerは実行時の設定機能が適度に揃っている。GUIが魅力的なGAGもある。しかも、どちらもGPLプロジェクトだ。

 Windowsアップグレードでブート・マネージャが書き換えられてしまったというのもよくあるトラブルだ。そんなとき、インストール・ディスクのメニューにブート・マネージャを修復する機能があれば助かるだろう。

マウント

 Ubuntuにはなぜ、新しいパーティションの起動時マウントを設定するGUIツールがないのだろうか。マウント関連のトラブル対策では、大概、/etc/fstabの編集が中心になる。よくあるのはパーティションは見えるが、アクセス権が違っているというもの。そのほか、システムに新しいパーティションを認識させる際に発生するトラブルもある。

 一般利用者にはコマンドラインからパーティションをマウントするのは難しいのだから、ライブCDにそうしたユーティリティを用意してはどうだろうか。

インストール

 Ubuntuのインストーラで私がよく悩まされるのは、このインストーラがネットワーク・エラーに対してあまり寛容ではないことだ。進捗率92%で止まってしまうことが多い。おそらくUbuntuはテスト・サーバにピングしリプライがあればインターネットに接続していると判断しているのだと思う。しかし、DNSでの解決に問題があるというだけのケースもあるのだ。

 回避は簡単。インストールの前にネットワークを切断しておけばよい。

 とは言うものの、サーバと接続できない場合も警告を表示するだけにしインストールを続行してほしいところだ。回避策付きエラー・ボックスを表示するだけでもいい。たとえば、「インストーラが92%で停止した場合は、ネットワークを切断した上でインストールしなおせ」と表示するのだ。これだけでもインストーラが黙り込んでしまうよりはましだ。

サウンドの構成

 Linuxのサウンドは少々込み入っている。いくつものシステムがあり、機能の重複も多い。それでもシステムが適切に自動設定してくれれば問題はないが、Linuxのサウンド設定は堅牢と言うにはほど遠い。かくして、サウンドのトラブルではフォーラムに尋ねつつ、構成ファイルに取り組むはめになる。

 トラブルの中にはサウンドは機能するが複数のプログラムで同時使用ができないというケースがあり、アプリケーションの音を鳴らすにはシステムのアラートを止めなければならないという極端な状況にもなりかねない。FirefoxのWebビデオの音が聞こえないというトラブルもある。この問題に対する一般的な解決策では、Firefoxでしかサウンドが使えなくなる。

 Canonicalは、ALSAとPulse Audioで標準化することによりLinuxのサウンド問題を解決しようとしている。これは長期的には決定打になるかもしれないが、今現在、サウンドの設定・利用ができないケースが多発しているのだ。

ネットワーク IPv6サポート

 インターネット・プロトコル(ソフトウェアとインターネットを接続するレイヤー)は現在バージョン4(IPv4)からバージョン6(IPv6)に移行中だ。UbuntuはIPv6対応だが、多くのインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)はまだ移行していない。ISPやブロードバンド・ルーターが正しくIPv6をサポートしていないと、インターネットへのアクセスが遅かったりまったく使えなかったりする。

 フォーラムを見る限り、UbuntuがIPv6対応を標準にしたのは時期尚早だったようだ。IPv4だけを有効にすることはできるが、それには構成ファイルの変更が必要だ。時代を先駆けるのは結構だが、IPv4に簡単に戻せるようにすべきだ。

 Webの閲覧が遅く見えたために多くの初心利用者がUbuntuを去ったことだろうし、使用しているネットワーク・ハードウェアがサポートされていないのだと思い込んでいる人もいるのではなかろうか。本当は、IPv6と互換性がなかったためなのだが。

 IPv4とIPv6を切り替えるチェックボックスを1つ付けるだけで、多くの利用者の悩みが解消されるだろう。

電源管理とハイバネーション

 電源管理はノートパソコンの利用者にとってきわめて重要な問題であり、デスクトップ・コンピューターの場合もスマートな起動・停止法として使える。

 Canonicalは電源管理に関する取り組みを強化すべきだ。ほとんどの利用者にとって、ノートパソコンが適切にスリープしないと壊れることになるからだ。Ubuntuはハードウェアのテストと報告を受け付けているが電源管理に関する私の経験について詳細を促すことさえしなかった。

電子メールの移行

 Windows版電子メール・クライアントから電子メールを取り込みたいという新規利用者も多い。もしWindows版がThunderbirdであれば、慣れない作業にはなるだろうが、調査と幾分か複雑なファイル・コピーで取り込むことができる。しかし、最も普及しているOutlook Expressを使っていた場合は、事ははるかに複雑だ。

 わかりやすい解説書か電子メール移行ツールがあれば、移行作業はもっと取っつきやすいものになるだろう。電子メールの移行はよくあることであり必須の作業だ。したがって、電子メール移行ツールがないのは機能が弱いというより欠陥というべきだろう。

解説書

 初心利用者向けに解説書を用意してはどうだろうか。「インターネットとネットワークのトラブル」「ディスプレイの設定方法」といったものだ。この記事のような、利用者が遭遇しがちなよくあるトラブルと簡単なヒント集を作ってもよい。

ソースからのビルド

 Ubuntuのパッケージ管理は品揃えが豊富で、それだけでも乗り換えを促す大きな誘因だ。しかし、リポジトリに目当てのパッケージがない場合や古いバージョンしかない場合はソースからパッケージをビルドしなければならない。

 ソース・パッケージのビルド手順では、多くの場合、パッケージ・マネージャが持つインストール済みパッケージとの同期機能が働かない。なぜCanonicalはCheckinstallと連動するGUIビルド・ツールのいずれかを標準化しないのだろうか。Checkinstallはコンパイル済みのアプリケーションをインストールするだけでなく、パッケージ・マネージャと連携してシステムの状態を同期させることもできる。

 以上の10の問題点はいずれも比較的簡単に改修できるが、それに嫌気して離れてしまった初心利用者もいることだろう。これを解消すれば、Ubuntuを試用した人は今まで以上に好ましい印象を受け、使い続けてくれるのではないだろうか。

Michael Reed ライター。テクノロジー、レトロなコンピューティング、オタク文化、ジェンダーなどをテーマに執筆。ミュージシャン、サイクリスト、コメディー作家でもある。

Linux.com 原文