2つの世界の良いとこ取りを目指すaTunes
aTunesはJavaで書かれたクロスプラットフォームの音楽プレイヤだ。バックエンドにMPlayerオーディオエンジンを使用しているので、(オープンソースとプロプライエタリのどちらのコーデックも含まれていて)一般的に普及しているオーディオ形式を幅広くサポートしている。多くの急成長中のプログラムと同様にいくつかの問題点もあるものの、それを補って余りある利点を持っている。
iTunesなのかAmarokなのか?
aTunesは、iTunesとAmarokのどちらからもインスピレーションを受けているようだ。Amarokと同様に、音楽管理はプレイリスト指向になっている。また音楽/タグ/ポッドキャスト/インターネットラジオ/MP3デバイスの操作を切り替えるインターフェースがタブ形式になっている。さらにLast.fmやAudioscrobblerと統合されていて、「スマート」なプレイリスト(例えば評価点数や再生回数がもっとも多い楽曲を選択することができるなど)をサポートしている。その一方で、iTunesとの類似点もいくつかある。全体的なユーザインターフェースはiTunesのレイアウトを反映しているように感じられるし、ウィンドウの各要素(ナビゲータ、プレイリスト、コンテクスト情報)を別ウィンドウで表示することができるようになっている。
3月にリリースされたaTunes 1.8.3にはいくつかの大規模なアップデートと新機能が含まれていて、これまでのaTunesの中で最高の出来になっている。Linux版でも利用可能な特に顕著な変更点としては、カラオケ機能の追加と、ラジオ/ポッドキャストのフィードエントリに関してプレイヤのパネルに表示される再生時間情報がより詳しくなったという点がある。その他の便利な機能としては、ナビゲータテーブル内のPlay Now(今すぐ再生)オプション(選択した楽曲を現在使用中のプレイリストに自動的に追加してすぐに再生する)や、アーティストについてのWikipediaの情報が(英語以外に選択肢がなかったのに対して)ユーザが指定した言語で表示されるようになったことや、イコライザなどがある。内部的なことについて言えば、新バージョンには複数のプレイリストのサポートや、RealAudioのサポートや、(今後のバージョンとの互換性を高めるための)XMLレポジトリや、ID3タグの歌詞/作者/アルバムアーティストフィールドへの対応、などの新機能が含まれている。これらの新機能によってaTunesは、ヘビーな音楽管理ユーザにとっても魅力あるものになっている。
利点といくつかの注意点
全体的に、aTunesの見掛けは魅力的だ。デフォルトのテーマはCompiz Fusionのような感じで、KDE 4のコンポジティングを有効にしたときにはAmarok 1.4.8やiTunesの最新版よりも見栄えが良いと思う。AmarokにもiTunesにもない、小さいが便利なaTunesの機能の一つとして、楽曲単位ではなくアルバム全体やアーティスト自身にお気に入りマークを付けることができるということがある。5つ星形式で評価を付けることはできないが、aTunesのStats(統計情報)ウィンドウでは、トラック/アーティスト/アルバムごとの再生回数に基づく情報を示す見掛けの良いグラフや円グラフを見ることができる。
aTunesでは、外部ハードディスクや大容量ストレージデバイスのように機能する数多くの一般的なMP3プレイヤへの書き込みを行うことができる。ただしiTunesのデータベースを更新することができないため、iPodはサポートしていない。とは言えRockboxを使用している私のiPodはまったく問題なく使用することができた。
Amarokと同じようにaTunesにも、トラック/アルバム/アーティストについての未記入のID3タグを埋める機能がある。MusicBrainzは使用しないものの、空のID3タグがある楽曲を見つけて、トラックのファイル名を元にそれらを埋めようと試みる。この機能は、トラック名とトラック番号をディスク上のファイル名の一部として使用するCDリッパーと併用すると都合が良い。ただし必ずしもうまくいく訳ではない。
難点
aTunesにも難点がないわけではない。例えば音楽レポジトリを作成しようとしたとき、レポジトリの選択方法がわからずに何分もかかってしまった。チェックボックス上で左クリックしても何も起こらなかった。最終的にはマウスの右ボタンを押すと、レポジトリを選択することができた。その後OKをクリックすると音楽ライブラリの作成を開始することができた。
また、ランダム再生をするためのボタンを探していたときにクラッシュしたこともあった。その際Javaのプロセスは終了していたが、バックエンドのMPlayerは停止していなかった。そのためコマンドラインからMPlayerを終了させたのだが、楽曲の再生はそのときまで続いていた。さらに、その後再起動してみると、ライブラリが保存されていなかったので再び構築する必要があった。
またプログラムの起動時に、レポジトリの読み込みが終わるまでユーザインターフェースが何も表示されなかったので途方にくれてしまった。中身の何もないウィンドウがしばらく表示され続けたので、プログラムを強制終了させるべきか待ち続けるべきか悩んでしまった。私が見たところ、aTunesは音楽ライブラリ情報をXMLファイルに保存するため、レポジトリを読み込むのに非常に時間がかかっているようだった。端末の出力によればライブラリは1秒程度で読み込まれたことになっているのだが、実際には18秒近くもかかった。そこでXMLレポジトリを無効にしてみると、終了して起動する時間が半分で済んだ。ただし起動/終了にかかる時間は、音楽ライブラリの大きさによって異なることがある。
aTunesでは音楽ライブラリの様々な楽曲に入っている埋め込み画像を読み取ることができて嬉しかったのだが、画像が表示されるまでに6秒近くもかかることが多かったのが残念だった。さらに言えば、AmarokやiTunesでは問題なくはっきりと見える画像であっても、たいてい荒い画像になってしまっていた。またAmarokやiTunesと同様に、Amazon.comのようなサイトからアルバムの画像をダウンロードすることができるはずなのだが、試してみたところアルバムを選択してGet Covers(カバー画像の取得)をクリックしても何も起こらなかった。
サウンドの音質を向上させることができるはずのイコライザは、ほとんど機能しなかった。変更した設定は新しい楽曲の読み込み後にしか適用されないのでイコライザの設定を変更してから新しい楽曲を再生したところ、大きな音が出る箇所で必ずスピーカから電波雑音のような音が聞こえた。この問題については、イコライザの設定をすべてゼロに戻す以外には解決方法を見つけることができなかった。
aTunesもAmarokと同じようにOSD(On-Screen Display)をサポートしているのだが、AIGLX上のKDE 4で試してみたところ、OSDを画面に表示させようとすると必ずaTunesがクラッシュした。そこでPreferences(設定)ウィンドウで透過とアニメーションを無効にして再び試してみたのだが、やはりクラッシュした。ただし仮想マシン上でaTunesを試してみたときにはOSDについての問題はまったくなかったので、コンポジティングウィンドウマネージャを使用していないLinuxユーザの場合にはもっとうまく行くだろう。また、aTunesのメニューやボタンに使われているフォントが非常に小さくて読みにくかったのだが、これについてはKubuntuのJava 6フォントパッケージをインストールしてaTunesのデフォルトのフォントオプションを有効にすることで簡単に解決することができた。
サウンドについては、(イコライザの設定をすべてゼロにした状態でも)iTunesやAmarokと比較するとやや雑音が多くて不自然に聞こえることが時折あった。私のシステム上では、まったく良く聞こえない楽曲もあった。
その他にも既知のバグがいくつかあって、aTunes開発チームによってプロジェクトのwikiにそのリストがまとめられている。このリストは時間とともに短くなっていて、最新版で修正されたバグが分かるようにもなっている。
まとめ
aTunesはAmarokとiTunesの良いとこ取りを目指しているが、その野望の実現にはまだ少し届いていないようだ。ただし視覚的な効果という点については十分で、iTunes開発者でさえも羨ましく感じるであろうほどの派手な効果があって、視覚的にも楽しみながら音楽を聞くことができるだろう。とは言え(少なくともLinux上では)サウンドの再生の品質については、まだ向上の余地があるというのも事実だ。
次期リリースでaTunesに移行したくなるほど多くの点が改良されることを願っているが、それまではAmarokを使い続けようと思う。