Amarokの機能を拡張する有用なスクリプト群

 AmarokはLinuxで利用可能な人気のオーディオプレーヤの1つであり、外付け記憶デバイスの管理、iPodへの音楽ファイル転送、歌詞の表示、各種音楽フォーマットの対応などをその特長としている。その他にもAmarokにはスクリプトの追加による機能拡張もサポートされているのだが、これらの強力なプラグイン群については、その存在そのものを知らないユーザが大半を占めているのが実状ではないだろうか。

オーディオコンバージョン

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Amarok Format Converter

  Audio Format Converter は、オーディオファイルのフォーマットを、FLAC、Ogg、MP3、MPC、M4A、WAV間で変換するためのスクリプトである。これはPythonにて記述されたスクリプトであるが、具体的な操作手順としては「Tools」→「Scripts Manager」での選択後にRunボタンをクリックすればいい。その際にユーザは、変換したファイルの保存先およびファイル名の形式を指定することができる(トラック番号に楽曲タイトルを加えたもの、サブフォルダにアーティスト名を付けたもの、アルバム名とファイル名を楽曲タイトルとしたもの、あるいはこれら3つをベース名とした単純なファイル名)。最後にAudio Format Converterから出力させるファイルフォーマットおよび品質の設定をするが、実際に何を選択できるかは、各自のシステムにインストール済みのオーディオ変換ツールに応じて変わってくる。変換処理は、各プロセスの開始を告げるポップアップメッセージ以外はすべてバックグラウンドで実行されるため、コンバージョン中も好みの音楽ファイルを再生させておくことができる。

 同様の作業に関しては、より簡単に扱える transKode を試してみてもいいだろう。処理する内容自体はAudio Format Converterと変わらないが、こちらの操作方式はプレイリストのコンテクストメニューでアクセスできるようになっている。

Webアクセス

 デフォルトのAmarokパッケージにはPlaylistServerがプレインストールされているが、その用途はhttp://localhost:4773にてHTML形式のプレイリストを提供することだけでしかない。だがよくよく考えてみると、このファイルを自由に取り出せれば、各自が選曲した好みのプレイリストを友人達との間で交換するという用途にも供せるはずだ。実際Playlist2HTMLというプラグインを利用すれば、こうしたプレイリストを送信用ファイルとして抽出できるのである。ただしこの場合、保存先が手元のハードドライブとなる以外、作成されるファイルそのものに変化はない。

 Web Controlは、ローカルホストのポート4774経由で現在のプレイリストにアクセスすることでWebインタフェースを介した制御を行うためのプラグインである。実際にアプリケーション制御を行うには、Script Managerウィンドウにて本スクリプトを選択してConfigureボタンをクリックし、Allow Controlを有効化しておいてからPublishボタンをクリックする必要がある。曲目をクリックすれば再生が開始されるが、ページ上部にはAmarokでのボリューム変更その他操作用のボタン群も配置されている。

  XUL Remote を利用すると、こうしたAmarokへのアクセスがセキュリティをより強化した状態で実行できるようになる。特にこのプラグインの場合、Amarok制御のアクセスに必要なIPアドレス、ポート、ユーザ名/パスワードの指定はFirefox機能拡張を介して行うようになっている。

インターネットおよびネットワーキング

  Email スクリプトをAmarokにインストールすると、プレイリストのコンテクストメニューにて“email”という新規エントリが追加される。これは選択された複数の楽曲を添付ファイル形式にて任意の宛先にメール送信するための機能である。同スクリプトのデフォルトで使用されるメールクライアントはKMailとされているが、引数指定のCLI制御に対応したThunderbirdその他メーラへの変更も簡単に行える。

 Icesサーバを運用しているユーザであれば、Amarok上で Ices スクリプトを有効化することで、サウンドカードの出力をストリーミング放送させることができる。そのための設定としては、Configureボタンをクリックし、ストリーミングの名前、ホームページ、説明を指定しておく必要があるが、このウィンドウでは、ホスト名、ポート、パスワード、マウントポイントなどのサーバ設定も行うようになっている。

 ストリーミング放送のセットアップに関しては、 Amarok Shouter を使った方が簡単かもしれない。これを実行させると再生中の楽曲がポート8000を介してストリーミング放送されるようになるので、後は友人達にインターネット経由で聴いてもらうだけである。

インスタントメッセージ

 自分が現在再生中の楽曲を友人達に知らせたいという場合、 AmarokPidgin スクリプトを使用すれば、Amarokが演奏している曲目がPidginのステータスメッセージとして表示されるようになる。同じくaMSNユーザの場合は、 amsn-now-listen スクリプトによって同様の機能が利用できる。XChat用の相当するスクリプトは XChat Now Playing for Amarok であるが、このプラグインの場合はXChatウィンドウに表示させる楽曲情報のカスタマイズが可能となっているだけでなく、XChat側からAmarokを制御する機能も追加される。またSkypeに関しても、再生中の楽曲に従ってムードメッセージを変更させる Amarok Skype mood poster スクリプトが利用できる。あるいはインスタントメッセージングにKopeteを使用しているユーザの場合であれば amaroKopete スクリプトを使用することで、Kopeteのニックネームおよびアバターが再生中の曲目とアルバムジャケットの情報に合わせてそれぞれ変更されるようになる。

ビデオのサポート

 特に気に入った楽曲については、YouTubeにてそのビデオクリップを探してみたくなることもあるだろうが、 AmarokTube スクリプトを使えば、わざわざWebブラウザに切り替える手間を省くことができる。このプラグインを使用するには、Runボタンにて有効化させた後、目的の音楽ファイルを再生させてからコンテクストメニューにて「AmarokTube」→「Search」を選択すればよく、これにより各自のデフォルトブラウザ上にて、該当する楽曲タイトルを名前に含んだビデオのリストが一覧されるはずである。

 ビデオファイルについては、Amarok上で直接再生したいという要望が多数のユーザから出されているようである。開発者サイドの見解としてAmarokはオーディオ専用プレーヤであるとされてはいるものの、ビデオファイルを再生開始させるだけであれば Autoplay Videos というプラグインを追加させればいい。このプラグインを有効化した上でAmarokのプレイリストにビデオファイルを登録しておくと、MPlayerにて当該ファイルが自動再生されるようになってくれる。デフォルトプレーヤの変更は、同スクリプト中の「video_player = "mplayer"」を変更すればいい。

その他のスクリプト

 Amarok用の有用なスクリプトの中には、前述したどのカテゴリにも分類不可能なものも存在している。例えば nightIMPgale は、指定したトラック数の再生後ないし特定時間(時または分単位)の経過後にPC本体をシャットダウンさせるというスクリプトである。こうした機能は、就寝時には子守歌代わりの癒し系ミュージックをコンピュータにて再生させながら眠ってしまいたいというユーザにとって役立つはずだ。

  CoverPrint は、オーディオCDのジャケット用テンプレートとしてInkscapeのSVGファイルを使用するためのスクリプトである。例えばK3bを用いて独自に編集したアルバム用にジャケットを自作するとしよう。そうした場合にこのスクリプトを有効化した上で、Amarokプレイリスト上にある音楽ファイル群を選択して右クリックすると、使用可能なテンプレートが一覧されるのである。こうしたテンプレートについては各自の美的センスに応じた編集を施すこともできるが、その手の調整が面倒であれば、CD TitleとArtistのフィールドに必要事項を入力してOKをクリックするだけでも、そのまま使用可能なCD用ジャケットが印刷される。

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Amarok Desktop

 デスクトップには目の保養が必要だというユーザであれば、 amarok Desktop Script を試すのもいいだろう。これはPyQTおよびPyKDEを利用することで、現在再生中のアルバムジャケットをデスクトップに表示させるためのスクリプトだが、表示されるグラフィックにはCDケースに入れられた状態を模したエフェクトがかけられるようになっている。

 Amarok標準の歌詞表示機能に不満を感じているユーザであれば、各種のWebサイトから歌詞データを取得する独自スクリプトを利用することもできる。この分野での代表的な存在は、 Terra Letras Wiki-Lyrics GoogLyrics Jamendo Lyrics といったところだ。また Lyrics Manager の場合はAmarokでの歌詞表示だけでなく、テキストファイルへの書き出し、ローカルソースからの読み込み、直接編集などの機能も装備されている。

 インターネットラジオを楽しみつつ放送された楽曲の1つを手元に残しておきたいという場合は、 RecordRadio を利用することでストリーミングデータを録音することが可能となるし、またポッドキャストを保存させることも行える(リモートファイルがMP3かOggファイルの場合)。

 こうしたスクリプトは本稿で紹介した以外にも Amarok wiki に多数登録されているので、興味のあるユーザは各自で試して頂きたい。

Razvan T. Colojaは、ルーマニアの雑誌エディタを務める傍ら、ルーマニア語のLinux/OSSポータルコミュニティサイトであるwww.mylro.orgにも管理者兼エディタの1人として参加している。同氏の執筆するLinuxおよびIT関連の記事は、これまでに150本以上がオンラインおよび通常形態の雑誌に掲載されている。

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