数々の新機能を提供するFirefox 3ベータ4

 現在テスト段階にあるFirefox 3の最新ビルド「ベータ4」が先週月曜日にリリースされた。Mozillaは現在、そのフラグシップソフトウェアFirefox 3の最終版を2008年第1四半期中にリリースすることを目指している。ここでFirefox 3での変更点を見てみよう。

 Firefox 3の最新ベータ版はmozilla.comから入手することができる。Firefox 3ベータ4ではLinux版、Windows版、Mac OS X版(Universal Binary)が40言語以上で提供されている。Linux版はbzip2で圧縮されたtarアーカイブになっていて、システム上の任意の場所で展開すればよい。

 ベータ版の実行の前にそれ以前の版のFirefoxを実行中の場合には、まずはすべてのインスタンスを終了させる必要がある。また既知の問題点がいくつかあるので、リリースノートも実行前に確認しておこう。Firefox 3ベータ4はプレリリース段階のソフトウェアなので、Firefoxのプロファイルをバックアップするために~/.mozillaを ~/.mozilla-backupにでもコピーしておくと良いだろう。こうしておけばブックマークやパスワードなどの個人的な設定や、ローカルにインストールした拡張やプラグインなどをすべて保存しておくことができる。

 「./firefox」を実行してFirefox 3ベータ4を起動すると、拡張とプラグインの互換性の確認が自動的に行われて、Firefox 3と非互換のものはすべて無効になる。このときFirefox 3ベータ4を試した後に再びFirefox 2に戻るつもりなのであれば、非互換の拡張のアップグレードはしないようにしよう。

目に見えるセキュリティ

 Firefox 3でもっと改良されたのはセキュリティ関連の機能だ。暗号化されていない接続経由での拡張のアップデートを無効にするなど気付きにくい修正点もあるものの、改良点の多くは潜在的に起こり得る問題をユーザに気付かせようとするものだ。

firefox1_thumb.jpg
サーバ証明書の検証機能

 例えば、Firefox 2を使ってHTTPSサイトを訪問すると接続の暗号化の強度がロケーションバーの色で示されるようになっているが、Firefox 3ではこのアイデアをさらに一歩進めてウィンドウの最下部の隅にあった証明書についての表示もロケーションバー自体の中に移動した。またEV SSLのサイトのファビコンが緑色で表示されるようになって、そのファビコンの隣りにサイトの証明書の所有者についての情報が示されるようになった(これによってサイトの証明書とURLとが一致しているかどうかを確認しやすくなった)。証明書についての詳細情報もドロップダウンメニュー経由で確認することができるようになった。

 さらに、証明書の詳細な内容を人間にとって分かりやいものにすることについてもかなりの作業が行われている。例えば証明書の検証についての情報は、国際空港でよく見かける「パスポート係員」マークのLarryが報告するようになったので、証明書によって検証されるアイデンティティと、「南京錠」マークで示される暗号化についての状態とが視覚的に区別されるようになった。また言葉遣いについても、以前のリリースでの分かりにくいポップアップ警告に比べて大幅に改善された。

 さらにFirefox 3では、少なくともあと2つのポップアップ警告(SSLのエラー警告と「パスワードを保存する」プロンプト)がお払い箱になった。SSLエラーは(404エラーと同じように)エラーページとして表示されるようになり、「パスワードを保存する」プロンプトは(Firefox 2のポップアップブロッカー情報バーのように)ページのいちばん上にあるドロップダウン情報バーの中に表示されるようになった。

 またFirefox 3では、セキュリティを強化するために外部サービスも活用している。例えば実行ファイルをダウンロードする際には、アンチウィルスソフトウェアと連携するようになっている。またGoogleのマルウェアサイト情報を利用して、フィッシングサイトやマルウェアサイトとして既知のURLをユーザが訪問しようとした場合に警告が表示されるようにもなっている。またWindowsシステム上では、例えば実行ファイルのダウンロードをできなくすることなどができる「保護者による制限」設定も考慮するようになった。

インタフェースの合理化

 Firefox 3での変更点として最初に目を引くのはおそらくGUIだろう。基本のブラウザウィンドウのナビゲーションツールが変更されたほかにも、ダウンロードマネージャとアドオンマネージャが強化されている。またインターフェースのすべての要素について、利用しているOS固有の環境との統合が向上した。

 基本的なナビゲーションについて言えば、ほとんどの場合は余分な存在だった「Go」ボタンがなくなった。ただし適切な場合には、URLを入力したときにロケーションバーに「Go」ボタンが表示される。「次へ」ボタンと「戻る」ボタンとそれらのドロップダウン履歴は、通称「キーホール」と呼ばれている一つのものにまとめられた。キーホールにはドロップダウン履歴リストが一つだけあって、閲覧中のURLが現在位置としてハイライトされる。

 ロケーションバー自体についても、Mozillaの開発者たちに「Awesomebar」と呼ばれるほどの大幅な模様替えが行われている。まず始めにロケーションバー(検索バーも)のサイズを変更することが可能になった――グラブして引っ張るだけで変更することができる。より重要なこととして、URLの自動補完機能が強化された。ロケーションバーで入力を始めると、その下に候補が表示される――ただし、訪問したことのあるURL/ページのタイトル/ブックマークから一致するものを探すとき、当該テキストの最初の部分に限らずどこかで一致するエントリを見つけることができるようになった。各候補についてページタイトルとURLの両方が表示されて、一致する部分がハイライトされるので、一致する部分が異なる場合に視覚的に区別が付きやすくなっている。

firefox2_thumb.jpg
新しいアドオンマネージャ

 新しいアドオンマネージャは、プラグインに加えて拡張/テーマ/言語/検索エンジンも管理することができるので、Firefoxの全アドオンのための単一のマネージャとなっている。またMozillaの公式サイト経由で提供されているアドオンについてはアドオンマネージャ自体の中からインストールすることができるので、これまでのようにブラウザのウィンドウでサイトを開く必要がなくて便利だ。サードパーティのアドオンのインストールについても、承認サイトのホワイトリストが廃止されたことで、より簡単にできるようになった。

 Firefox 2の必要最低限の機能しかなかったダウンロードダイアログはダウンロードマネージャへと進化して、すべてのダウンロードの進捗をステータスバーで確認したり、ダウンロードの一時停止後、セッションを終了/再開後にダウンロードを再開したり、ダウンロードしたファイルを検索したりすることができるようになった。

 また様々なタイプのファイルについての「ダウンロード動作」の設定(すなわち、あるタイプのファイルについてFirefox内で開くのか外部アプリケーションを選択するのか)の指定がより簡単にできるようになった。そして今回初めてこの設定にポッドキャストやビデオポッドキャストのサポートが追加された。さらに、特定のファイルのタイプについてデフォルトで起動するアプリケーションとして、デスクトップアプリケーションを指定するのとまったく同じようにウェブアプリケーションを指定することも可能になった。

 最後になったが非常に嬉しいこととして、Firefox 3ではOSとの統合に関してかなりの向上が見られる。Linux上での大きなニュースは、ボタン/メニュー/タブ/フォームのすべてについてネイティブのGTK+ ウィジェットを使用するようになったことだ。これにより特別なテーマを使用するという方法をとらなくてもFirefoxがネイティブのアプリケーションのように見えるようになった。また印刷/ファイルのオープン/保存ダイアログについても、独自のダイアログに代わってネイティブのものになった。WindowsとMacについてもOSとの統合が向上しているが、Linuxと比較すると変更点の数は少ない。

新機能

 Firefox 3ではインターフェースの改良に加えて、まったく新しい機能もいくつか登場している。

 前リリースでもウェブページのフォントのサイズを大きくしたり小さくしたりすることができたのだが、この機能がさらにパワフルなフルページズームに置き換えられた。フルページズームでは、描画されたページ全体――画像やレイアウトも含めて――の大きさを変更することができるので、テキストだけを拡大した時のように読みやすさが失われることなく、読みやすい形でページを拡大することができる。

 また細かいが非常に便利な新機能として、複数テキスト選択機能がある。クリップボードにテキストをコピーする際に、コントロールキーを押し放しにすることで、連続していない複数の領域を選択することができるようになった。

firefox3_thumb.jpg
新しいブックマーク管理インタフェース

 さらにFirefox 3では、ブックマークの操作に関してもいくつか新しい点がある。Firefox 2でもブックマークツールバーにページをドラッグしたり、適切なキーを入力したりすることでページをブックマークすることができたのだが、それらに加えてロケーションバーの中の新しい星形アイコンをクリックすることでもブックマークを追加することができるようになった。またFirefox 3のブックマークは、タグをサポートしている。タグを使用するかどうかは任意のため、これまで通りの方法でブックマークを使い続けることも可能だが、ブックマークのタグを検索したり、Awesomebarの候補としてタグとの一致も表示されたりするようになった。最後に、ユーザのブックマーク作業を自動的に記録する「最近追加されたブックマーク」と「最近タグを付けたブックマーク」という便利なフォルダが利用できるようになった。

内部的な新機能

 Awesomebarとブックマークマネージャの検索機能をもたらしたのは、ブックマークや履歴などのセッション情報をユーザプロファイルの中の小さなSQLiteデータベースに保存するPlacesという新しいモジュールだ。Placesは、Firefox 3の内部的な新機能(直接的にはユーザの目に留まることはないかもしれない新機能)のうちの一つだ。

 Firefox 3のレンダリングエンジンは、Firefox 1.5以降使われていたGecko 1.8ブランチから大きく進歩したGecko1.9だ。Gecko 1.9ではJavaScript 1.8改良されたDocument Object Modelとがサポートされている。またマイクロフォーマットオフラインウェブアプリケーションユーザ編集可能なコンテンツ領域、クロスサイトXMLHttpRequestsのような、ウェブ開発者にとって関心の高い新技術もいくつか導入されている。なおGecko 1.9はAcid2レンダリングテストに合格したGeckoの最初のバージョンだ。

 Firefox 3では、Linux/Mac OS X/WindowsのすべてのビルドでグラフィックスのレンダリングにCairoライブラリが使用されている。最新のビルドでは、SVGフィルタ、アニメーションPNG、ICCプロファイルを埋め込んだ画像のカラーマネジメントなどの便利なサポートが追加されている。

 より重要な点として、Firefox 3はCairoのおかげでより高速になっている。またキャッシュ機構と新しいガベージコレクタの改良により、RAMの使用もかなり削減されている。

 その他の内部的な変更点としては、新しいスペルチェッカーのHunspellや、プロプライエタリのクラッシュ報告システムTalkbackのオープンソースの代替物であるBreakpadなどがある。

今後

 Firefox 3の最終リリースまでには、さらなるベータ版がリリースされる予定だ。リリース計画も公開されているが、最新の進捗についてはMozillaの週単位の状況会議の報告書を読んで追い掛けることもできる。

 MozillaのChristopher Blizzard氏によれば、Firefox 3ではすでにFirefox 2以来12,000個のバグ修正および改良が施されていて、最終版リリースまでにはさらに多くの修正/改良が確実に行われるとのことだ。Firefox 3はかなり充実したリリースになりそうだ。

Linux.com 原文