Linux用インスタントメッセージングの3つの代替ソフト
Jabber向けのGajim
Gajim はPyGTKとGTK+で書かれたライトウェイトなインスタントメッセージングアプリケーションで、メッセージングプロトコルJabberを用いている。このソフトの強みは、シンプルで動きの軽いユーザインタフェースに豊富なオプションが埋め込まれている点にある。
GajimのメインインタフェースはPidginのものに似ており、バディ(友人)リストがグループに分かれている。Jabber上ではGoogle Talkが動作するので、Gajimを使ってGoogle Talkにサインオンできる。そのためには新しいアカウントを作り、Gmailのユーザ名とパスワードを入力して、「Server」欄に“gmail.com”と入力するだけでよい。個人情報の編集やアバターの追加は、「Edit」→「Profile/Avatar」メニューから行える。そのほか、アプリケーションを閉じる際のシステムトレイへの最小化アイコンの追加、ステータスによる連絡先の並べ替え、名簿上での各連絡先のアバター表示、アイコンセットおよびテーマの変更、といった設定項目が用意されている。テーマの色やフォントの編集、11種類ある顔文字の選択も可能だ。メッセージ受信などのイベント発生時には、音を鳴らしたりポップアップ通知を出すことができる。ファイル転送や、新たなGmailメッセージ受信時の通知にも対応している。これらの機能に満足できなければ、高度な設定エディタを使ってさらに調整を加えることもできる。さらに、プライバシーが気になるなら、名簿上を右クリックするだけで連絡先に対するOpenPGPキーの割り当てが可能だ。
Yahoo!向けのGyach
Yahoo!のあらゆる要素を盛り込むことを設計思想とした Gyach Enhanced は、Linux用インスタントメッセージングソフトのなかで最も機能が豊富である。だが残念なことに、2006年以降は同プロジェクトの活動が行われていない。こうしたいくらかの不便さはあるものの、Gyach EnhancedはYahoo!との接続性がPidginよりも優れており、Webカメラ、音声機能、各種環境にアクセスすることもできる。アプリケーション全体の外観は少し荒削りな感じで“ごちゃごちゃしている”との第一印象を持つかもしれないが、フォントをカスタマイズして慣れてくるとなかなか使えるソフトだ。
メインウィンドウはいくつかのタブで構成されている。「Chat」タブは、Yahoo!メールのアカウントに届いた新規メッセージの通知と、各連絡先の簡単なステータス表示をログイン時に行ってくれる。「Buddies」タブは連絡先リストを表示するものでYahoo!アバターの表示も可能だが、カスタムのアバターは表示されない。画面右下に現われるポップアップメッセージ表示は、バディのログインや新規メッセージのようなアクションを通知してくれる。このタブの下にあるボタンバーを使うと、現在選択中の連絡先についての情報、その相手のWebカメラ画面や詳細情報の表示、相手側に対するファイル送信やチャットルームへの招待といったことが行える。「My Yahoo!」タブにはさまざまなタイプの情報が表示される。受信箱のプレビュー表示、天気の情報、ニュースの見出しやRSSフィード、Yahoo!テレビ、Yahoo!フォト、カレンダー、ノートパッド、ヒント集、ガイドなど、あらゆる情報がメインウィンドウ上部のドロップダウンリストから選べる。また、4番目のタブである「Contacts」タブはアドレス帳のような働きをする。
メインチャットウィンドウでは、連絡先の相手とのインスタントメッセージング、相手の詳細情報の表示、現在の通信相手のブロック、相手のWebカメラの表示といった機能が使える。さらに、Gyach EnhancedはYahoo! MessengerのAudibleにも対応している。サポートされているのは古いものだが、確かにAudibleのリストが存在する。顔文字アイコンを表示するボタンの隣にあるボタンを使って、64種類の中からAudibleが選べる。また、“TUXVironment”(あらかじめ用意されている背景とスタイルで、いずれもほかのソフトのものほどよい出来ではない)を約20種類の中から選ぶこともできる。チャットウィンドウ上部にはテキスト設定バーがあり、テキストエフェクトを設定できる。
設定面に目を向けると、Gyach Enhancedの「Setup」ウィンドウでは、ユーザインタフェースおよびアプリケーションのオプションの入念な調整が行える。クイックアクセスツールバーの表示/非表示、メインウィンドウタブの再配置、Webカメラの設定が可能だ。チャットルームでは、年齢や性別といった基準でユーザのフィルタリングができる。
Gyach Enhancedの最もすばらしい特徴の1つが、優れたスパム回避機能を備えていることだ。オプションの設定により、知り合いの人からの連絡しか受け付けないようにすることができる。さらに、一定間隔で立て続けに届くメッセージ、内容の重複するチャットメッセージ、URLで始まるメッセージなどを無視する設定が行える。
「Options」タブでは、Webブラウザ、Flashプレーヤ、MP3プレーヤ等についてデフォルトのアプリケーションを選択できる。また、XMMSプラグインや暗号化プラグインも用意されている。
MSN向けのKMess
Windows Live Messenger(以前のMSN Messenger)を使っている友人とチャットする必要がある場合は、 KMess をインストールすることになるだろう。KMessはQtツールキットを使って書かれており、完全にKDE内に統合されている。Gajim同様、KMessもメール通知、ユーザ間のファイル転送、顔文字テーマといった機能を備えている。また、誰かから連絡が来たときにポップアップメッセージを表示することもできる。メインウィンドウ内のアバター画像をクリックすると、メイン設定ダイアログが開き、デフォルトのログインステータスへの画像表示、フォントサイズの変更、顔文字テーマの選択、カスタムテーマのインストール、チャットスタイルの選択など、さまざまな設定が行える。また、GajimにはなくてKMessにある機能が1つある。ユーザが現在聴いている曲のタイトルを表示できるというものだ。その反面、KMessにはプラグインがない。
まとめ
多くのLinuxユーザがPidginやKopeteを好むのは、一度に複数のプロトコルに接続できるからだけではなく、開発が意欲的に行われているからでもある。しかし、Gajim、Gyach Enhanced、KMessはいずれも、これらの定番を置き換えるに値するソフトである。ほかにもLinux用の興味深いIMアプリケーションとして、 Gabber 、 Psi 、 Jabbin 、 Fama IM (以上4件はJabberプロトコル向け)、 Mercury Messenger 、 aMSN 、 emesene (以上3件はMSN向け)などがある。また、AOLを利用している人は naim を試すとよいだろう。
Razvan T. Colojaは通常の雑誌およびオンラインマガジンに150本を超えるLinuxおよびIT関連の記事を寄稿している。ルーマニアの雑誌のエディタを務め、ルーマニア語のLinux/OSSポータルおよびコミュニティサイトwww.mylro.orgの管理者兼エディタでもある。