Geubuntu:UbuntuにEnlightenmentを組み合わせて誕生したディストリビューション
Geubuntu 7.10“Luna Nuova”は同ディストリビューションにおける2番目のリリースであるが、そのリリースサイクルは基本的にUbuntuに同調させているようである。このバージョン番号からも分かるようにGeubuntu 7.10のベースとなっているのはUbuntu 7.10であり、同ディストリビューションからはカーネルを始めrestricted-driver管理ユーティリティなどの有用性の高いツールがそのまま流用されている。
Geubuntuはインストール対応型のライブCDで提供されているが、Geubuntuミラーに用意されている専用パッケージを利用することで、既存Ubuntuディストリビューションに対する上書き形式でのインストールをすることもできる。なお現在提供されているISOは32ビット版だけである。そのため64ビットハードウェアでGeubuntuを使用するには、最初に64ビット版Ubuntuをインストールしてから改めて64ビットプラットフォーム用にコンパイルしたGeubuntuパッケージを追加するという、かなりの回り道をしなければならない。
ライブCDからインストールする場合は約1.5GBのディスクスペースを必要とする。今回私は同ディストリビューションを、1.3GHz Celeron搭載マシンおよび2.0GHz Core 2 Duo E4400と1.8GHz Core 2 Duo E6300という2種類のデュアルコア搭載デスクトップにて試してみたが、いずれの環境においても問題なく起動することができた。Geubuntuには、WebブラウザのFirefox、インスタントメッセンジャのPidgin、マルチメディアプレーヤのEclairおよびVLC、画像エディタのGIMPなど、一般的に利用されている多数のアプリケーションが同梱されている。特にGeubuntuではリソース負荷の大きいオフィススイート系アプリケーションの代わりに、ワードプロセッサはAbiWord、スプレッドシートはGnumeric、カレンダはOrage、ファイルマネージャはThunarがバンドルされているが、これは必要な要件を低く抑えるための措置である。その他のアプリケーションが必要であれば、Synapticパッケージマネージャを介したインストールを行えばいい。
操作性が格段に優れたデスクトップ環境
Geubuntuを使ってみておそらく最初に気づくのは、その軽快な動作速度であろう。その軽快さは、Ubuntu 7.10をベースにしているにもかかわらず、Pentium Celeron 1.3GHz搭載ラップトップのような数世代前のハードウェアでも充分に使い物になるくらいだ。これはUbuntuのデフォルトデスクトップ環境がリソース要件の高いGNOMEであるのに対して、Geubuntuではより負荷の小さいEnlightenmentが採用されているためである。
Geubuntuが起動し終わると、同チームのアート担当開発者の手によるSunshineテーマの美しさに圧倒されるはずだ。このデスクトップではパネル群を画面の上部と下部の両側に配置するデザインになっているが、表示スペースを有効活用するため、未使用時の上部パネルはデスクトップ上端に収納させることができる。一方の下部パネルも専有面積は小さいながらも、各種のメニューおよびアプリケーションランチャ、仮想デスクトップスイッチャ、時計などのアプレット類といった多数のコンポーネントが配置されている。私が特に気に入ったのは、パネルの専有面積を抑制するために採用された、アイテムがマーキー形式で自動スクロールするアプリケーションランチャである。
Geubuntuで採用されているSunshineおよびMoonlightというテーマは、デザイン的な完成度が高いだけにとどまらず、アニメーション効果も取り入れられている。前者のテーマでは画面下方にある太陽からの光が差し込み、後者のテーマでは巨大な月に覆い被さるようにEnlightenmentのロゴが表示される様子が波打つ水面に反射するというアニメーションで定期的に表示されるようになっているのだ。これら2つのテーマは、クリック1つで簡単に切り替えることができる(切り替えそのものも、ほぼ瞬間的に終わる)。
もっともこうした凝った演出も、肝心の操作性を損なうようでは本末転倒である。ところが私を魅了させてしまったこのGeubuntuの場合、コンポーネント選定の妙が功を奏して、操作性の点においても秀でたディストリビューションに仕上がっているのだ。その中でも特に大きく寄与しているのは、XfceパネルおよびThunarファイルマネージャという2つのXfceコンポーネントである。これらで賄いきれない部分は、GNOMEバーを始めネットワークマネージャや検索アプレットなどのGNOMEコンポーネントを流用することで補完されている。
注意すべき各種のバグ
高い操作性を確保するために取り入れられたコンポーネント群であるが、そもそもが同時使用の想定されていない組み合わせであるため、若干のバグを生じさせる原因ともなっている。特にEnlightenmentについては、開発途上のコンポーネントであるが故に単独的ないくつかのバグが残されている点への注意が必要だ。例えばThunarファイルマネージャがバンドルされているにもかかわらず、Geubuntuでのデスクトップアイコンの表示にはEnlightenmentのファイルマネージャのfmが使用されている。ところが実は、リムーバブルデバイスのマウント/アンマウントおよびその中のファイルに対するブラウジングがこうしたデスクトップアイコンからは行えないため、その種の操作にはThunarを使う必要があるのだ。
またライブCD形式でGeubuntuを使用している場合にログアウトしようとすると、特定タスクの終了までにある程度の時間が必要だという旨の警告が出され、そのまま作業終了まで待機するか強制的にログアウトするかのオプションが提示されるのである。同ディストリビューションのフォーラムに寄せられた投稿によると、これはXfceパネルに起因する問題のようであり、開発陣が現在対策に取り組んでいるとのことだ。ただし不思議なことに、ハードドライブ上にGeubuntuをインストールした場合は、こうした警告が出されることなくログアウトできてしまうのだ。
ライブ版とインストール版での食い違いは、これだけではない。例えば私がインストールした際には、デスクトップに上部パネルが表示されないという現象に遭遇した。対策として、ログアウト、コンピュータ自体の再起動、パネルの強制終了(kill)とリスタートを試してみたが、いずれも徒労に終わった。ところがディストリビューション全体を再インストールしたら、このパネルは表示されるようになったのである。
同じくPCMCIAワイヤレスカードもライブCD版では使えたのにインストール版では動作しなかった。このディストリビューションをデュアルコア搭載デスクトップで試した場合、ワイドスクリーン画面については正常に検出して1440×900ピクセルの解像度で立ち上げることができたのに、NDISwrapper経由で必要なドライバをインストールしてあるにも関わらず、ワイヤレスカードは有効化できなかったのである。逆にブート時に出現するはずのスプラッシュ画面は、インストールしたハードディスクから起動する場合にしか表示されなかった。よってライブCD版ユーザはブートステップ中にブランク画面をにらみ続けることになるのだが、こうした不備は初心者ユーザを戸惑わせることになるだろう。
またMoonlightテーマにおける一部のコンポーネント表示において、ターミナルウィンドウの半透明化など、Sunshineテーマのデザインがいくつかそのまま残されるようである。その他のエラーに遭遇した場合はオンラインドキュメントを参照し、それが既知のバグであって対策が確立されていないかをチェックして頂きたい。
まとめ
Geubuntuは過去に2度のリリースを経ただけという浅い歴史しか有していないにもかかわらず、機能性を損なうことなく華麗な仕上がりのデスクトップを構築するという試みに成功した希有なディストリビューションの1つである。また軽快な動作を妨げないためのコンポーネント群を選択したことの副次的なメリットとして必要なハードウェア要件も中程度に抑えられているため、本ディストリビューションは旧式化したコンピュータでの使用に最適な選択肢ともなっている。
Geubuntuの場合、Ubuntuという実証済みの堅牢なディストリビューションをベースにしたことがその安定性を高めていると見ていいだろう。ただし開発途上のEnlightenment環境に、まったく別系統のデスクトップ環境コンポーネントであるXfceおよびGNOMEを組み合わせたことで生じたバグもいくつか存在しているが、その一部は2度のリリースの間に開発陣による対策が講じられているようだ。ハードウェア的に旧式化したデスクトップマシンの所有者および、これから初めてEnlightenmentを試してみるというユーザがおられたら、本ディストリビューションの使用を検討してみたらどうだろうか。