SPEC、サーバのエネルギー効率を評価するベンチマークのテスト・スイートを公開

 米国に本部を置く非営利企業で、サーバ・ベンダー各社が使用するベンチマークの開発を手がけるStandard Performance Evaluation Corporation(SPEC)が先ごろ、エネルギー効率を基準にシステムを評価するよう設計したベンチマークのテスト・スイートをリリースした。

 このベンチマークの開発には、主要サーバ・メーカーのほか、x86マイクロプロセッサの有力ベンダーであるIntelとAMDも参加している。開発に携わったベンダー各社が実際にこのベンチマークを採用することになれば、ユーザーはベンダーの異なる複数のサーバのエネルギー効率を比較することが可能になるという。

 12月11日にリリースされたこのテスト・スイートは、正式には「SPECpower_ssj2008」と呼ばれている。SPECの幹部は今年夏、同テスト・スイートを「年内にリリースする」と言明していた。

 SPECのベンチマーク開発者は、「常に最高のパフォーマンスを発揮するよりも、低いエネルギー・コストで満足できるパフォーマンスを発揮するほうがよいと考える企業が増えてきており、その結果としてこのベンチマークが生まれた」と説明している。

 なお、米国環境保護庁(EPA)は、データセンターにおける消費電力の上限を定めるプログラムの一環として、独自の格づけ基準「Energy Star」を策定しているが、SPECとEPAの構想は競合するものではなく、両者は昨年からデータセンターのエネルギー消費問題に共同で取り組んでいる。

 米国Hewlett-Packard(HP)のシニア・パフォーマンス・エンジニアで、SPEC小委員会の責任者としてベンチマーク開発に携わるクラウス・ディーター・ランゲ(Klaus-Dieter Lange)氏は、EPAのEnergy Starも、SPECのベンチマークと似通ったものになると見込んでいる。同氏は、「HPではすでに自社のサーバにおいてSPECのベンチマークを使用している。EPAもじきにわれわれの成果を取り入れるだろう」と語っている。

 SPECpower_ssj2008の開発には、HPのほか、Dell、Fujitsu Siemens Computers、IBM、Sun Microsystemsなども参加している。

 このベンチマークは、サーバのCPU、キャッシュ、メモリなどのシステム・コンポーネントを動かすためのJavaベースのアプリケーション作業負荷を作り出し、待機状態からシステム・リソース100%使用状態までの各利用段階で電力消費量を測定する。テスト・スイートの開発関係者によると、今後アプリケーション作業以外のタイプの作業負荷も追加される予定だという。

 ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)の研究員で、データセンターのエネルギー問題についてEPAに助言を行ってきたジョナサン・クーメイ(Jonathan Koomey)氏は、「これまで異なるシステムのエネルギー効率を比較する手段がなかったため、実際の測定データが得られるという点は、大きな前進だ」と語り、SPECのベンチマークを高く評価している。

 Koomey氏の研究によると、2005年に世界中のサーバが消費した電力はおよそ1,230億キロワットアワー(kWh)で、2010年には76%上昇して2,160億kWhになるという。また、消費電力量の上昇が最も顕著なのは、石炭火力発電が広く普及しているアジア太平洋地域の国々だと報告している。

(Patrick Thibodeau/Computerworld オンライン米国版)

Standard Performance Evaluation Corporation(SPEC)
http://www.spec.org/

提供:Computerworld.jp