BusyBoxをめぐるライセンス違反で新たに2件の提訴

 Software Freedom Law Center(SFLC)はBusyBoxの開発者Erik Andersen氏とRob Landley氏に代わり、High Gain Antennas, LLC(カリフォルニア州パーカー)とXterasys Corp.(同州シティオブインダストリー)を相手取って新たに2件の訴訟を起こした。これは、最近和解が成立したMonsoon Multimediaに対する類似の提訴に続くものだ。

 BusyBoxは、標準UNIXユーティリティ群の縮小版を開発するフリーソフトウェアプロジェクトである。組み込みシステムで広く利用されているが、GNU GPLv2(General Public License version2、一般公衆利用許諾契約書バージョン2)違反が跡を絶たない。実際、同プロジェクトの「Hall of Shame(恥の殿堂)」リストには、18を超える製品や企業が、このライセンスに明らかに違反するとして名を連ねたことがあった。

 最近になってこの恥の殿堂のページには、不名誉な違反者の更生をただ望むのではなく、「近頃、この手の問題はSoftware Freedom Law Centerに報告するようにしている」との記述が加えられた。しかし、同プロジェクトは法人組織ではないため、Andrew、Landleyの両氏は同組織を代表する個人として今回の件を含む最近の申し立てを行っている。

 11月20日にニューヨーク南地区連邦地方裁判所に提出された、High Gain Antennasに対する訴状には、次のように記されていた。2006年4月以降、同社はBusyBoxのコードを含む無線ルータHGA-8186HP-1用ファームウェアを配布しているが、GPLv2の第3項で要求されるような、顧客に対するソースコードの提供が一切行われていない。訴状によれば、この配布が開始されて間もなく匿名の第三者がHigh Gain AntennasにGPL違反を通知したこと、またSFLCの法務ディレクタDaniel B. Ravicher氏から違反通告を受けた際に同社が「原告との前向きな問題解決を即座に拒絶し、違反製品およびファームウェアの提供を続けた」という。AndersonとLangleyの両氏は損害額(未公表)の賠償および訴訟費用の負担に加え、High Gain Antennasによるこの問題に係る製品およびファームウェアの供給の差し止めを求めている。

 時と場所を同じくして起こされたのがXterasysに対する提訴で、これもHigh Gain Antennasに似た内容のものだった。被告であるXterasysによれば、同社はBM-200、WAP257、XA-2611B、MH350、XR-2408GU、XR-3106、XR-4106、WR-254の各製品のファームウェアにソースコードを提供しなかったという。やはり匿名の第三者がXterasysに宛てて明白な違反を通知する電子メールを送ったのは5月23日だった。XterasysのSteve Yang氏はその日のうちに詳しい情報を要求し、翌日その詳細を受け取った。それ以降、XterasysはSFLCからの連絡に応えずに問題の製品の供給を続けているため、原告はHigh Gain Antennasと場合と同様の賠償を求めている。

 Linux.com編集部がHigh Gain Antennasの関係者に一切の取材ができなかったのは、感謝祭ということで同社が今週休業していたからだ。XterasysのSteve Yang氏(同社での立場は不明)とは連絡が取れたものの、彼は「この件については社内で調査中のため、今のところは何もコメントできない」としか言わなかった。

 どちらかの問題が法廷に持ち込まれれば、GPL遵守の強制を試みる米国初の裁判事件となる。Ravicher氏はLinux.comの取材に応じ、「(それ以外の点では)今回の2件で特に変わった点はない。どちらも、GPLを守らずにBusyBoxを再頒布したという単純な事例だ。両社とも、我々(SFLC)やほかのところからそうした問題について知らされていたにもかかわらず、自ら問題を解決しようとはしなかった。だから、我々が最後に行き着いたのは法的手段に訴えることだった」

 今回の2つの事例に関し、できるだけ多くの違反者に警告する意図が伺えるとのコメントを返してくれたRavicher氏は、こうした措置について次のように力説する。「(提訴は)我々のクライアントの利権を守るための1つの策だが、まさしく最後の手段でもある。効果があるのはもちろんだが、違反者が、時間稼ぎをしたりそのうちあきらめるだろうと我々の通告を無視したりするのではなく、最初の訴状を受け取った時点でとにかく我々に働きかけ、速やかにライセンスに従うとともに過去の違反について賠償に応じてくれるのであれば、クライアントにとってこれほど望ましいものはない」

 「この問題でGPLやその他のあらゆるオープンソースライセンスの遵守強制ができなければ、ライセンスの意味と効力が損なわれる恐れが生じ、コミュニティ全体に悪影響が及ぶことになるだろう」(Ravicher氏)

Bruce Byfieldは、Linux.comとIT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文