フランス政府、コンテンツ違法コピー者への制裁措置を導入へ――違反者はISPとの契約が解除され“ブラックリスト”に名前が追加

 フランス政府は、インターネット上におけるコンテンツの違法コピー対策として、違法コピーを行った者がインターネットにアクセスできないようにする措置を導入する計画だ。

 この制裁措置は、フランス文化省が11月23日に提案した、オンライン上における音楽、ビデオの違法コピー撲滅に向けたさまざまな対策のうちの1つ。そのほかの対策には、コンテンツへの電子透かしの埋め込み、インターネット・ユーザーの行動追跡、著作権者から違法コピー者と認定されたユーザーを登録するデータベースの構築などがある。

 文化相のクリスティーヌ・アルバネル(Christine Albanel)氏は、デジタル違法コピーの問題について、「切迫している」と語っている。「アーティストが仕事の成果を奪われることがこれ以上続いてはならない」(同氏)

 フランス政府は今回提案した一連の対策について、フランスのメディア業界の合意を取り付けた。メディア業界は電子透かしを導入し、映画の合法的ダウンロードをより迅速に、より広く利用できるようにする。Albanel氏は23日、TVの放送局、ISP、および映画製作者、作家、ミュージシャンの権利団体との合意書に署名した。

 フランス政府は、これらの組織の協力を得る見返りとして、インターネット・トラフィックを監視し、電子透かしが埋め込まれたファイルの流通をチェックするとともに、権利保有者の苦情処理を行う機関を新設するとしている。今後、インターネット経由でこうしたファイルをダウンロードしたユーザーは、契約しているISPから正式な警告を受ける可能性がある。さらに、警告を受けた後もこうしたダウンロードを行うと、ISPとの契約が解除され、違法コピー者のデータベースに名前が追加される可能性が高い。

 フランス政府は国民サービスのオンライン化を進めているが、この措置の導入により、ISPと契約できない層が新たに生まれる可能性もある。

 消費者団体のUFC(Union of French Consumers)は、今回の新しい違法コピー対策について、公正な裁判を経ずにインターネット接続を不可能にすることは、「疑わしきは罰せず」という憲法の原則をないがしろにするものだと反発した。

 また、オープンソース・コンピューティングの普及促進と調査研究を行っているAPRILの広報担当者フレデリック・クーシェ(Frederic Couchet)氏は、新しい対策は「抑圧的」であり、民間のインターネット警察の誕生につながると語っている。

 文化省は、ダウンロードされた音楽を再生できるデバイスを制限するDRM(デジタル権利管理)システムを利用するのをやめるよう、レコード会社に対して勧告を行っている。UFCはこの勧告に対して、「具体策が欠けており、DRMによって著作権コンテンツの使い勝手が損なわれるといった問題に対処しようとするものではない」と批判した。

(Peter Sayer/IDG News Service パリ支局)

Union Federale des Consommateurs – Que Choisir(UFC)
http://www.quechoisir.org/

提供:Computerworld.jp