Business Objects幹部が語る――買収後の戦略とBIの未来像

大手ベンダーによるビジネス・インテリジェンス(BI)ベンダーの買収が続くなか、日本Business Objectsはプライベート・イベント「Business Objects Insight Japan 07 Fall」を11月7日に開催した。編集部では、同イベントのために来日したBusiness Objectsのシニア・バイスプレジデントでアジア・太平洋・日本地域ジェネラルマネージャー、キース・バッジ氏にインタビューを行い、SAPによる買収の影響や、それ以降の取り組みなどについて話を聞いた。
大川 泰
Computerworld編集部

――SAPによる買収の完了後、Business Objectsはどのような形で存続するのだろうか。

バッジ氏:買収後は、SAPのビジネス・ユニットとなるわけだが、組織の体制はこれまでと変わらない。CEOのジョン・シュワルツは買収後もCEOであり続けるし、R&D、セールス、マーケティングといった活動も、これまでと同様だ。もちろん、プロジェクトによってはSAPと共同で取り組むこともあるだろうが、今後も両社は別々の独立した組織として機能し続ける。

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Business Objects Insight Japan 07 Fallで講演するキース・バッジ氏。同氏は、SAPによる買収が友好的なものであり、Business Objects、さらには同社の顧客やパートナーに多大なメリットをもたらすと訴えた

 これはすでに公表されていることだが、SAP以外の企業からもBusiness Objectsに対して買収のオファーがあった。そうしたオファーについては、Business Objectsの役員会で精査したが、その際にSAPが提示してきた内容がBusiness Objectsの戦略にマッチしていることがわかった。そこで話し合いに弾みがつき、10月7日の正式発表に至ったのだ。

――どのような点がBusiness Objectsの戦略とマッチしていたのだろうか。

バッジ氏:SAPが注力する領域の1つにビジネス・ユーザーがある。ここで言うビジネス・ユーザーとは、企業/組織の中で、単に担当のプロセスに携わるだけではなく、意思決定を行う立場にある人々のことだ。

 意思決定のためには、さまざまな情報が必要になる。その情報の入手先は、SAPのアプリケーションかもしれないし、Oracle、Microsoft、あるいはIBMの製品の場合もある。そこで重要になるのは、そうした多種多様なデータソースに対応できる技術であり、それを有しているのは、まさにBusiness Objectsなのだ。この点を考えれば、当社が買収後も独立性を保つことがSAPにとっても価値のあることだと理解していただけるだろう。

 一方、Business Objectsとしても、製品/サービスを提供できる範囲を広げていきたいというビジョンがあり、そのためにはSAPグループの一員となるのが有効だと判断した。この業界では敵対的買収の例は多いが、両社の利害が一致した今回は違う。当社の従業員は、買収完了後にどのようなチャンスが待ち受けているのだろうと、今から楽しみにしている。

――今回の買収に先立ち、OracleがHyperionを買収するという発表があった。これついては、どのように見ているのだろうか。

バッジ氏:OracleによるHyperionの買収は、アプリケーションとBIというそれぞれの領域でのナンバー2とナンバー3が手を組んだものだ。一方、SAPとBusiness Objectsは、それぞれの領域におけるナンバー1である。この両社が手を組むことで、非常に強靭でパワフルなチームとなるはずだ。

――OracleによるHyperionの買収は、SAPおよびBusiness Objectsの決定に何らかの影響を及ぼしたのだろうか。

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同イベントには、SAPのCEO、へニング・カガーマン氏のビデオ・メッセージが上映された。カガーマン氏も同様に、Business Objectsとの友好的な関係をアピールした

バッジ氏:その点についてはコメントを控えたい。私が言えるのは、買収劇の表層を見るのではなく、SAPがBusiness Objectsの買収に至ったロジックを考えてほしいということだ。先ほど説明したようにSAPは、この買収後もBusiness Objectsが独立性を保つことを望んでいるし、Business Objectsの戦略から見てもそれが理に適っている。両社にとって今回の買収は、まさにベスト・シナリオなのだ。

――それでは、SAPによる買収が完了した暁には、Business Objectsはどのような取り組みを進めるつもりなのだろうか。

バッジ氏:さまざまな戦略を打ち出していくことになるだろうが、そのうちの1つが、業界固有のニーズにフォーカスした分析アプリケーションだ。これについては、 SAPによる買収が大きなアドバンテージとなるだろう。SAPはさまざまな業界を熟知しており、その専門知識とわれわれの分析能力を組み合わせることにで、すばらしい製品/サービスを提供できるようになるはずだ。

 R&Dの面では、従来からBI 2.0という戦略に基づいて進めてきており、これからも同様に取り組んでいく。このBI 2.0によって、BIのリアルタイム性が高まるだろうし、さまざまなアプリケーションに分析機能を組み込めるようになる。さらには、BIがユビキタスなものへと変貌を遂げていくだろう。このユビキタスBIとは、人々が日常的に取るさまざまな行動の中で、気づかないうちにBIが存在しているというものだ。

 そのほかの詳細なアクティビティや次の製品のロードマップについては、実際に今回の買収が完了するまで、お話することはできない。おそらく、来年の第1四半期には何らかの形でお伝えできると思う。

――ユビキタスBIが実現したときには、どのようなことが可能になるのだろうか。

バッジ氏:ここから先は、あくまでも私個人のアイデアとして聞いていただきたいが、多様な用途があると思う。ユビキタスBIによって、テレコム業界や金融業界をはじめ、さまざまな企業が製品/サービスを提供する際にBIを活用できるようになる。これは、企業ユーザーのビジネスに貢献するのはもちろんだが、一般のコンシューマーの生活にも恩恵をもたらすものになるだろう。

 例えば、ある銀行の顧客がショッピング・モールを歩いているとしよう。銀行は、顧客がどこで何を購入したのかといったことを分析して、その顧客のためにカスタマイズしたオファーを用意し、さらには地理データを参照して近くの支店に案内するメッセージをその顧客の携帯電話に送る。メッセージには、「あなたのために特別なオファーを用意しました。すぐ近くの支店でお待ちしています」といった内容が記載されているわけだ。

 こうしたことがいずれは本当に実現すると思うが、今のところは、企業に対して、パフォーマンス・マネジメントやリポーティングといった機能を提供することが先決だ。だが、将来的にBIは、今述べた例のようにエキサイティングなものになるはずだ。

Business Objects
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日本Business Objects
http://japan.businessobjects.com/

提供:Computerworld.jp