エンタープライズ市場でトップの座を狙うXWiki

 ヨーロッパのJavaプログラマたちが12月半ばにベルギーで開催予定のJavaPolisコンファレンスに大挙して押し掛けようとしているが、XWikiの開発者たちはこの機会にGoogle Docsのスプレッドシートと試験的ながら統合を果たした「第2世代」のwikiソフトウェアであるXWikiに注目してもらいたいと考えている。

 とは言ってもXWikiには手ごわいライバルたちがいる。例えば、他ならぬJavaPolisコンファレンスのサイトは、ライバルであるConfluenceプラットフォームで運営されている。XWikiのユーザ数が数百単位であるのに対して、Confluenceの開発者によるとConfluenceはすでに4,000の会社や組織などで利用されているという。しかしConfluenceのスプレッドシート機能がEditGridを利用した独自のプラグインであるのに対して、XWikiの連携するGoogle Docsはすでに広く普及している。そのためXWikiでは、Googleとの統合が、XWikiのエンタープライズwikiとしての特性を高めるキラープラグインになることを期待している。

 XWikiの開発元XPertNet社でCTOを務めるVincent Massol氏は、XWikiがオープンソースである点とXWikiのオープンなAPIに加えて、エンタープライズ内のアプリケーション間での「マッシュアップ」(連携)を作成/公開する機能を強調している。しかしマッシュアップ機能の提供という観点からは、KapowやJackBeといった新興企業からBEAやIBMといったお馴染の大企業まで、 幅広いライバルがいる。なおIBMはMashup Starter Kitをテクノロジープレビューとして無料で提供している。

 調査会社Gartnerの最近の報告によると、マッシュアップは今後数年間におけるトレンドのトップ10に入るという。またGartnerは、マッシュアップ技術には近いうちに大規模な変化が起こるという予測もしている。GartnerのAnthony Bradley氏は、大手ベンダはマッシュアップとwiki機能を一緒にではなくむしろ別々に実装してスイートとしてリリースするようにしているので、一体化したツールは珍しいとした。

 Bradley氏によると「マッシュアップとwiki機能は、2種類の異なる問題を解決しようとする2つの別々の種類のツールだが、相互に支え合っている」という。そして、wikiとマッシュアップの両方をサポートするオールインワン型のツールは、オーストリアのウィーンを拠点とするSystemOneなど、ごく一部の小規模なニッチベンダから提供されているだけだとした。

 XWikiはこの、マッシュアップとwikiの両方を一つのソフトウェアだけでホストすることを可能にするというニッチ空間で勝負しようとしている。なおXWikiでは、コードもプレーンなコンテンツもEclipse開発環境の中で扱うことができる。またXWiki用のプラグインは、Groovy、Velocity、Javaを使って書くことができる。

 Google Docsプラグインは、ルーマニア出身の大学生によって試験的に作成された。デモでの性能はかなり不十分だったが、XPertNet社長兼CEOのLudovic Dubost氏によると、 性能の問題はGoogle APIの限界によるものとのことだ。それでもGoogle Docsプラグインは、現在開発中のXWikiの1.2リリースに含められる公算が大きい。

 XWikiを支えるXPertNetは、2004年の設立で現在は社員18名のフランスを拠点とする企業だ。Massol氏によると米国での最大の顧客は3万人のユーザを抱える教育サイトのCurrikiだという。それ以外の顧客はほとんどがフランス国内の企業で、大手石油企業のTotal S.A.などがあるとのことだ。

 サンフランシスコを拠点とするオープンソース企業のTerracottaはXWikiに少なからぬ関心を寄せていて、同社のイントラネットの一部で使用している。ただしこれまでのところは、業務用の多くのシステムにはConfluenceを採用してきたという。

 Terracotta共同設立者のOrion Letizi氏は次のように述べた。「われわれがConfluenceを選んだ当時は、オープンソースのサイト向けにはConfluenceが最適のプラットフォームだった。しかし今では多くの理由――そのうちの決して小さくはない理由の一つに、Confluenceがオープンソースではないということがある――から、今ではXWikiが魅力的な選択肢になっている」。

 さらにLetizi氏は「XWikiの昨年からの数多くの進展には非常に感心させられた。XWiki 0.9とXWiki 1.xの違いは非常に大きい」と付け加えた。とは言えLetizi氏によると、TerracottaはすでにConfluenceに「かなりの投資」をしているため、ベンダを実際に変更するかどうかはまだ分からないという。

 ノルウェーのオスロ大学InterMedia研究所長のOle Smørdal氏によると、同研究所では調査プロジェクトのいくつかでXWiki 1.0も使用しているが、基本的に実稼動プロジェクトでは別のシステムを使用しているという。その理由は単に「MediawikiとConfluenceは(高負荷時にも)信頼性が高かったのに対し、XWikiはそうではなかったため」とのことだ。

 Massol氏は、XWiki開発では今後、性能と安定性に焦点を当てていくとしている。また、JavaPolisコンファレンスではXWikiバージョン1.2の安定版ビルドをリリースしたいとのことだ。

ITManagersJournal.com 原文