Red Hatが明かした今後のロードマップ

 昨日(11月7日)、オープンソースソフトウェアベンダRed Hatの上級管理職層がジャーナリストとアナリストの前で新たなアプライアンス・プラットフォームを披露し、仮想化技術が同社の長期計画にどう絡んでいくかを語った。結論は、万事計画どおりに行けばRed Hatがほぼ8年後に世界のサーバ市場のシェアの半分を手にするというものだった。

 Red Hatのエンジニアリング担当執行副社長Paul Cormier氏とエンタープライズLinux事業部長Scott Crenshaw氏の言によれば、企業のCIO(最高情報責任者)やITマネージャは板挟みに苦しんでいるという。彼らは、一方でコスト削減、顧客満足度の評価、事業での継続的な利益創出のための方法を探る役目を負いながら、他方では非現実的な見込みや永遠になくならないように見えるプロジェクトの不備に頻繁に直面しているため、計画立案にかけられる時間の不足を嘆いている。すべて予算削減のしわ寄せだ。果たして本来のCIOの役割とはどんなものなのだろうか。

 その答えはRed Hatの新たな自動化戦略 ― “いつでも、どこでも、どんなアプリケーションでも” ― にある、とCormier氏は語る。この戦略は、場所と手段を問わず、どんなソフトウェアアプリケーションまたはスタックでも顧客は望みのままに利用できるべきだという前提から生まれたものだ。Red Hatが計画しているのは、これを可能にするいくつかのツールの導入である。

必要とされる集約

 同社は2008年上半期にRed Hat Appliance Operating System(AOS)のリリースを予定している。このOSを利用することで、独立系ソフトウェアベンダはさまざまな種類のサーバで動作するアプライアンスベースのパッケージ群をまとめることが可能になる。Red Hat Enterprise Linux(RHEL)上に構築されるAOSには、RHELとの完全なABIおよびAPI互換性があり、Virtual Appliance Development Kitなるものが含まれている。これは、ISVが各顧客向けにミドルウェアやアプリケーションも含めてOS全体を設定できるものだ。

 AOSは完全にRHEL互換なので、RHELで動作確認済みのアプリケーションであれば、RHEL、VMware ESX、そして(いずれは)Microsoft Windows Viridianのような広く使用される大半のサーバでアプライアンスとしてすぐに導入できる。AOSを導入できるサーバは、x86-32ビット、x86-64ビット、IBMのSystem pおよびSystem z、IntelのItaniumなど1,500種類を超える。

 AOSはRed Hatと提携するISVを通じて顧客に配布される予定で、「我々はレベル3のサポートをISVに提供し、エンドカスタマに対するサポートはISVが行うことになる」とCrenshaw氏は話している。

クラウドコンピューティングへの進出

 大規模なインフラに全力を注ぐ準備が整っていない企業やそうしたインフラを常に必要とするわけではない企業のために、同社はAmazon Web Servicesと提携して従量課金制のクラウドコンピューティングサービスを提供することも発表した。

 企業はAmazonのElastic Compute Cloud(EC2)を介してRHELと3,400を超える動作確認済アプライアンスにアクセスすることができ、必要なサービスおよびその使用分だけの料金を支払うことになる。また、顧客が望めば1時間単位の課金にするともできる。月額基本料はユーザ1人あたり19ドルであり、1時間あたりの料金は0.21ドルから0.94ドルまでの幅があって顧客の選択する帯域幅とストレージの使用量、計算インスタンスのサイズに応じて変わる。

 現在EC2は非公開ベータの段階だが、年末までには一般に利用可能になる見込みだ。テクニカルサポートはRed Hat側からの提供が予定されている。ただし、同社はAmazonとの提携の具体的な条件についてはコメントを差し控えた。

仮想化の実現

 Cormier氏は、仮想化技術を備えたRed Hat Enterprise Linux 5.1のリリースについても発表した。ほとんどの顧客は仮想化コンピューティング環境を求めているが、現行の製品ではマルチコアCPUをサポートしていないという理由でこれに反対する声も多い、と彼は説明する。その結果、顧客は所有するインフラを十分に活用できなかったり、複数の仮想化ソリューションの採用をあきらめたりすることになる。

 Cormierによると、RHEL 5.1では、スタンドアロン、物理または仮想システム、クラウドコンピューティング環境など、大小さまざまな規模の環境にわたって高いレベルのスケーラビリティを実現することでこうした障害を克服しているという。

 RHEL 5.1はWindowsゲストをEnterprise Linuxゲストと遜色なく実行することができる。ライブ移行、可用性の高いクラスタリング、ストレージ仮想化、フェイルオーバソフトウェアのすべてが含まれるRHEL 5.1のダウンロードパッケージは、Red Hat Network経由で顧客向けに提供されている。

ITManagersJournal.com 原文