Adobe、RIA関連の次世代技術を本邦初公開

 Adobe Systemsは11月1日、東京・台場で開催されたクリエイターおよびディベロッパー向けのイベント「Adobe MAX Japan 2007」(11月1日-2日)の基調講演で、現在開発を進めているリッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)関連の次世代技術を一斉に紹介した。

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米国Adobe Systems プラットフォーム事業部担当シニア・バイスプレジデント兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクト ケビン・リンチ氏

 同イベントの基調講演に登壇した米国Adobeのプラットフォーム事業部担当シニア・バイスプレジデント兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクト、ケビン・リンチ氏は、冒頭で、「Adobeは過去25年間にわたって、“人とアイデア”および“人と情報”のかかわりを変革し、“豊かなエクスペリエンス”をもたらすことのできるプラットフォーム作りに力を注いできた」と述べたうえで、「RIA時代を迎えた今日、インターネット・アプリケーションは、華やかなユーザー・インタフェース(UI)を実装するよりも、だれもが自分に適した形で簡単に使えることが重要となりつつある」と指摘した。

 そうした“豊かなエクスペリエンス”を提供する技術の1つとしてリンチ氏はFlashを挙げ、高精細(High Definition)ビデオ技術を搭載した「Flash Player 9 Update」(開発コード名:Moviestar)のデモを行い、広く普及しているFlash Playerが新たなフェーズに入ったことをアピールした。

 「今日、インターネット上の動画の70%がFlashで配信されており、インターネットにアクセスしている98%のコンピュータにFlash Playerがインストールされている。MoviestarによってFlashがH.264をサポートすることで、今後さらに高精細な動画をインターネット上で楽しめるようになる」(リンチ氏)

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AIRベースで開発されたオンライン・ワープロ「Buzzword」

 Moviestarは、現在、Blu-rayシステムやHD-DVDプレイヤ、TVセットトップ・ボックスなどに使われているH.264コーデック動画圧縮標準をサポートする。Moviestarのベータ版はすでに提供開始されており、同社のWebサイト「Adobe Labs」からダウンロード可能となっている。正式版は年内にリリースされる予定だ。

 なお、デスクトップ上でリッチ・インターネット・アプリケーションを稼働させる技術としてAdobeが開発を進めているアプリケーション実行環境「AIR (Adobe Integrated Runtime)」でも、H.264がサポートされることになっている。また、Moviestarを使うことで、ディベロッパーがビデオ編集ツール「Adobe Premiere」を搭載したツールセット「Adobe Creative Suite 3」で開発したメディア資産を、Flashアプリケーションの開発環境「Flex」やAjax(Asynchronous JavaScript + XML)を介して配信することも可能になるという。

 続いてリンチ氏は、Adobeが提供する最新のリッチ・インターネット・アプリケーションの1つとして、AIRベースで開発されたオンライン・ワープロ「Buzzword」を紹介した。Buzzword は、Adobeが今年10月に買収した米国バーチャル・ユビキティが開発したもので、デモでは、Webブラウザ内のオンライン環境でもデスクトップ上で稼働するスタンドアロン環境でも同様に動作し、単一のドキュメントを両環境間でシームレスに連携させる模様が披露された。

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基調講演ではBuzzwordのほか、AIRベースの顧客管理システム(写真)など、開発中のAIRアプリケーションが多数紹介された

 ちなみに、AIRは今年10月にベータ2がリリースされ、Adobe Labsサイトからダウンロード可能となっている。リンチ氏によると、AIRのベータ1のダウンロード件数はすでに50万を超えており、ベータ2も今日までに15万件のダウンロードがあったという。

 現在、開発が進められているFlexの次期バージョン「Flex 3」について説明にあたった同社Adobe Flex担当テクニカル・エバンジェリスト、テッド・パトリック氏は、Flex 3の主な特徴として、(1)ブラウザ内またはAIR上で実行されるアプリケーションの内部動作やメモリ状況を検証するプロファイラの搭載、(2)CSSの言語インテリジェンスに対する完全なサポート、(3)視覚的なスキニングとスタイリングのサポート、(4)Flashムービーの容量を抑えるキャッシング機能、の4つを挙げ、それらが実際にどのように機能するかをデモを行いながら説明した。

 基調講演ではほかにも、After EffectsやPhotoshopのフィルター技術を活用してダイナミックにテキストを描画する機能を備えた次期Flash Player「Astro(開発コード名)」の紹介や、デザイナー向けのリッチ・インターネット・アプリケーション開発ツール「Thermo(開発コード名)」のデモが行われた。

 リンチ氏は、会場に詰めかけた来場者に対し、「われわれは今、これまでになく多くのディベロッパーから期待を寄せられている。ユーザー・エクスペリエンスの変革を加速するためにも、ベータ版として公開中の新技術をぜひ試していただき、フィードバックをお寄せいただきたい」と呼びかけた。

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Thermoのデモでは、psdファイル(Photoshopで作成したデザイン)を読み込み、MXMLファイル(FlexアプリケーションのUI定義ファイル)として出力する模様が披露された

(大川 亮/Computerworld)

Adobe Systems
http://www.adobe.com/jp/

提供:Computerworld.jp