むしろ後退した印象を受けるLinspire 6

 去る6月、Linspireの前CEOKevin Carmony氏は来るべきリリースについて非常に熱っぽく「現行リリースのいくつかの重要な穴を埋めるものになるだろう」と語っていた。だが残念ながら、先週リリースされたLinspire 6は、50ドル払ってダウンロードするディストリビューションにしては期待外れの内容だった。これまでの主要な差異化機能は姿を消し、代わりに追加されたものといえばほんのいくつかのMicrosoftテクノロジでしかない。LinspireがMicrosoftと結んだ特許協定に明記されていたとおりだ。今回のリリースでは、Microsoftの意見が尊重されているように思える。

 Linspire 6のCDは、これまでと同じように、インストールディスクとライブCDを兼ねている。ハードウェアサポートの面は申し分ない。デュアルコアのデスクトップマシン(E4400とE6300)でもそれほど高速ではないCeleron 1.3GHzのノートPCでも動作し、PCMCIAおよびPCIの各無線カードからUSBメモリ、USBハードディスク、USBカメラに至るまであらゆるハードウェアが検出された。

 Linspire 6のインストール手順は非常にシンプルで、時間もあまりかからない。デュアルコアマシンだと10分もしないうちに終わる。上級者向けのインストールオプションも用意されているが、単にインストール先のパーティションを選択できるだけのものだ。/homeや/rootなどのディレクトリ用にパーティションを分けておきたい人もいるだろうが、残念ながらそれはできない。Linspireは今なおReiserFSファイルシステムをデフォルトとしている数少ないディストリビューションの1つである。ただし、パーティションをフォーマットして、ext3など別のファイルシステムを入れることもできる。

 Linspire 6の粗雑さが目に付くのは、インストールが終わってからだ。1つ前のメジャーリリースLinspire 5.0は、秀逸と呼べるディストリビューションだった。ユーザインタフェースの華やかさにも目が向けられ、アプリケーション群も満足できるものだった。しかし、Linspire 6はそのどちらの面でも失望させられる。標準の壁紙はあるが、3Dデスクトップの機能はない。LTorrent(代わりにKTorrentが入っている)やNvuなど、独自のカスタムアプリケーションの一部も取り除かれている。

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Linspire 6.0

 CDで50ドルという価格の割には、Linspireの収録アプリケーションはあまり充実していない。オフィスおよびインターネット関連のアプリケーションについても、その他のKDEアプリケーションについても標準的なラインナップになっている。前者としてはオフィススイートのOpenOffice.org、インスタントメッセージングのPidgin、音楽再生用のRealPlayer、CDおよびDVDバーナーのK3b、トレントダウンロード用のKTorrentなどが、後者としてはKMPlayerや各種KDEゲームが含まれている。システムの設定は、KDEのControl Centerを使って行う。また、ファイアウォールの設定用にはFirestarter、パーティション管理用にはGPartedがそれぞれ用意されている。多くのディストリビューションと同様、カスタムアプリケーションも存在するにはするが、LsongsとLphotoの2つしかない。また、このディストリビューションのWebブラウザには、Linspireのよく知られた拡張機能Hot Wordsを備えた改良版のFirefoxが採用されている。

 Linspire 5.0には、非常にユーザ指向性の高かった特徴としてビデオによるガイドツアーとヘルプという機能が備わっていた。しかし、Linspire 6.0ではこうした機能が削られている。事実、今回のリリースにはLinspire特有のヘルプ機能は存在しない。用意されているのは、標準のKDEヘルプだけである。

 そのうえ、この最新リリースには苛立ちを強く感じる部分がいくつかある。たとえば、場面一番下のタスクバーにあるターミナルのクイック起動アイコンは、クリックしてもすぐにターミナル画面が開かず、シェル、Linuxコンソール、Pythonインタープリタ、rootターミナルの各起動オプションを提示するメニューが表示される。パワーユーザには意味のあるメニューかもしれないが、Linspireの主要ユーザであるデスクトップおよびオフィスユーザにとっては迷惑なものでしかない。

 また、Microsoft絡みのプレスリリースで強調されていたソフトウェアのリストも忘れてはならない。その内容は、MicrosoftのTrueTypeフォント、Windows Mediaファイルの再生機能、MicrosoftのOpenXMLフォーマットによる文書の閲覧/保存機能を実現するというものだった。確かに、これらはすべて含まれていて問題なく動作する。私のマシンでは、FAT32かNTFSかに関係なくWindowsパーティションは1つもマウントできなかった。

 ほかにも、今回のリリースには最新ソフトウェアとして、Linspireが開発し、今ではほかのディストリビューションでも利用できるCNR(Click-N-Run)サービスのベータ版が含まれている。CNRサービスを初めて実行すると、ローカルのインストール済みソフトウェアのリポジトリとCNR Webサイトのリポジトリとの同期がLinspireによって行われ、その結果がWebブラウザに表示される。なるほど、CNRはクリック・アンド・ランという名に違わぬ働きをしてくれる。CNRを利用して、Berylや3DラリーゲームのTriggerなどいくつかのアプリケーションのインストールを試してみたが、何の支障もなく済んだ。

 ただ、これらのアプリケーションを削除しようと思うまでは、Linspireにパッケージ管理ユーティリティがないことに気付かなかった。とはいえ、CNRを使えばKDEのパッケージマネージャを取得することができる。また、Linspire 6はUbuntuベースなので、apt-getを使ってSynapticをダウンロードしても良い。

 インストールに関するもう1つの問題は、実行されているLinspire 6のカーネル(2.6.20-16-lowlatency)のカーネルソースを取得できなかったことだ。Linspire 6はVMware 6の下でも動作するが、カーネルソースがなければvmware-toolsのインストールが行えない。CNRで入手できるカーネルソースは実行されているディストリビューションのものではなく、Synapticにもこのカーネルはまったく見当たらなかった。

 Linspireは、数少ない有償のディストリビューションの1つである。そのうえシングルCDときているので、商用のDVDディストリビューションに対しても苦戦を強いられている。Linspire 6.0に乗り換えようとするユーザは決して多くはないだろう。ただし、Linuxベンダによる特許侵害を主張する最近のMicrosoftの脅しに恐れをなし、Microsoftとの間に特許協定が結ばれたディストリビューションを優先して選ぼうとする企業は別である。

linux.com 原文